働く意味を見つめ直す~「社会的意義」とメンタルヘルスの関係~

給与や待遇、働きやすさは、仕事を続けるうえで大切な要素です。
一方、「自分の仕事は誰の役に立っているのだろう」「この仕事をする意味は何だろう」と考えたことがある人もいるのではないでしょうか。

商品やサービスを提供する、顧客の困りごとを解決する、社会インフラを支える、同僚が働きやすい環境を整えるなど、仕事の形はさまざまです。
それらに共通して、その先には誰かの生活や社会があります。
こうした自分の仕事と他者・社会とのつながりを意識することは、「仕事の社会的意義」を考える一つのきっかけになります。

近年、働く人のメンタルヘルスをめぐる状況が課題となるなか、企業には不調が起きてから対応するだけでなく、働く人が健康に仕事を続けられる職場環境をつくることが求められています。
今回は、仕事の「社会的意義」とメンタルヘルスについて、産業保健の視点から考えてみましょう。

働く人の約7割が「強いストレス」を感じている

2026年8月7日に厚生労働省が公表した「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活について、強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある労働者は67.5%でした。
その内容を見ると、「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに39.5%と最も多く、次いで「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が32.9%となっています。

さらに、2026年7月15日に厚生労働省が公表した「令和7年度 過労死等の労災補償状況」では、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害に関する労災請求は4,958件で、前年度から1,178件増加しました。
支給決定件数も1,082件と、前年度から26件増加しています。
これらの数字からも、働く人のメンタルヘルスは個人だけの問題ではなく、職場全体で向き合う必要がある課題だといえるでしょう。

「自分の仕事には意味がある」と感じますか?

メンタルヘルス対策というと、相談窓口の設置やストレスチェックなどを思い浮かべるかもしれません。
しかし、働く人が日々どのように仕事と向き合っているかという視点も重要です。

厚生労働省「こころの耳」の職場環境改善に関する情報では、職場のストレス対策のポイントとして、適切な仕事量や良好な人間関係、意思決定に参加できる機会などとともに、「仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること」が挙げられています。
「自分の仕事が誰の役に立っているのか」「自分の業務が組織のなかでどのような役割を担っているのか」を知ることは、日々の業務を違った角度から捉えるきっかけになります。

ただし、仕事の社会的意義や「やりがい」があれば、メンタルヘルス不調を防げるというわけではありません。
仕事量が過大であったり、人間関係に問題があったりする職場で、働く人に使命感ややりがいだけを求めれば、かえって負担を増やす可能性があります。
社会的意義を考える前提として、安心して働ける職場環境が整っていることが重要です。

産業保健の視点から「働く意味」を支える職場づくりを

では企業は何ができるのでしょうか。
厚生労働省「こころの耳」では、職場環境改善について、仕事の量や責任といった「仕事の要求度」と、裁量権などの「仕事のコントロール」のバランスが重要だと紹介しています。
また、ストレスチェックの集団分析では、仕事の量的・質的負担や周囲からの支援などを確認し、職場環境改善につなげることが重要です。

企業としては、ストレスチェックを実施して終わりにするのではなく、産業医や保健師などの産業保健スタッフ、人事労務担当者、管理監督者が連携し、結果から職場の課題を把握して改善につなげていくことが求められます。
たとえば、業務の目的や役割を改めて共有する、顧客から寄せられた感謝の声を従業員にも伝える、一人ひとりの仕事が組織や社会にどうつながっているのかを話し合うことも、「働く意味」を考えるきっかけになるでしょう。

なお、ストレスチェック制度をめぐっては、2025年の労働安全衛生法改正により、これまで努力義務だった労働者50人未満の事業場にも実施が義務化され、2028年4月1日から施行されることが決まっています。
メンタルヘルス対策は、企業規模にかかわらず、より重要なテーマになっていくでしょう。

働く人の心の健康を守るためには、不調を早期に発見する仕組みだけでなく、仕事量や人間関係、周囲からの支援など、日々の職場環境を整えることが欠かせません。
仕事の社会的意義を個人だけに求めるのではなく、安心して働ける環境を組織全体で育んでいくことが重要となることでしょう。

<参考>
・厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」
・厚生労働省「令和7年度 過労死等の労災補償状況を公表します」
・厚生労働省こころの耳「職場環境改善ツール」
・厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」

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株式会社ドクタートラスト 精神保健福祉士

大学で臨床心理、福祉を専攻し、福祉介護業界に勤めていました。自立支援や就労支援も経験し、生活での悩みや環境について強い興味関心があります。 日常の健康や不安に向き合える機会や、きっかけになれる情報を発信していきます。 【保有資格】精神保健福祉士 【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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