突然ですが、皆さんは毎日何回くらい手を洗っていますか?
そして、その手洗いは本当にウイルスや細菌を落とせていますか?
10月15日は、「世界手洗いの日(Global Handwashing Day)」です。
感染症予防の基本中の基本である「手洗い」の重要性を世界中で再確認する日として知られています。
「手洗いなんて子供の頃からやっているし、わざわざ大人が学ぶことではない」と思われるかもしれません。
しかし、感染症が流行しやすくなる秋冬を迎えるこの時期に、改めて見直してみましょう。
「水でサッと流すだけ」は逆効果?
私たちは普段、無意識のうちにさまざまな場所に触れています。
オフィスのドアノブ、エレベーターのボタン、パソコンのキーボード、そして買い物の際のお釣りやスマートフォンの画面など、手には目に見えないウイルスや細菌がたくさん付着しています。
では、手洗いをすることでどれくらい手上の菌を減らすことができるのでしょうか。
厚生労働省などの感染症対策資料でも用いられる「手洗いにともなう残存ウイルス量のデータ」を見ると、非常に興味深い結果がわかります。
何も手洗いをしない状態の手には、およそ10万個のウイルスがついていると仮定して、手洗いに伴う残存ウイルス量を見ていきましょう。
・水だけでサッと流す(15秒): ウイルス量は約1万個(1/10程度にしか減らない)
・ハンドソープで10秒揉み洗い+水で15秒すすぎ(1回): ウイルス量は約数百個(1/100〜1/1000程度に減少)
・ハンドソープで10秒揉み洗い+水で15秒すすぎ(2回繰り返し): ウイルス量は数個(1/100万程度まで激減)
「水で数秒濡らすだけ」の手洗いでは、ウイルスはほとんど落ちていないことがわかります。
一方で、ハンドソープを使ってしっかりと洗い、水で丁寧にすすぐ工程を繰り返すことで、ウイルスをほぼゼロに近い状態まで減らすことができるのです。
また、「毎回ちゃんとソープを使って洗っているから大丈夫」という方でも、手洗いの「癖」によって特定の場所だけ菌が残っているケースが多々あります。
一般的に、洗い残しやすいとされる部位は以下の通りです。
・指先および爪の間:キーボードの打鍵やスマホの操作で最も物に触れる場所ですが、意識しないと石けん液が届きません。
・親指の付け根・手の甲:手のひら同士を擦り合わせるだけの手洗いでは、ほとんど洗えていない部位です。
・指と指の間:指を交差させて洗わないと、汚れや菌がそのまま残ります。
・手首:腕時計や袖口の近くは手洗いの範囲から漏れがちです。
特に、爪の間や指先は、鼻や口、目に触れる機会が非常に多い部位です。
手を洗う際は「手のひらを合わせる」だけでなく、「指を組んで洗う」「手の甲を伸ばすように擦る」「掌の上で爪を立ててクルクル回す」「手首までしっかり握って洗う」という動作を取り入れることが重要です。
アルコール消毒だけで十分? ノロウイルスと手洗いの関係
コロナ禍を経て、オフィスの入り口や店舗に設置されたアルコール消毒液を使う機会が増えました。
「アルコール消毒をしているから手洗いは省いてもいいのでは?」と質問されることもよくあります。
結論から言うと、アルコール消毒が手洗いの代わりにはならない場面もあるので注意が必要です。
インフルエンザウイルスやコロナウイルスは、表面がエンベロープというアルコールで壊れやすい膜で包まれているため、手指消毒が非常に効果的です。
しかし、秋冬に流行するノロウイルスはこの膜を持たず、代わりにタンパク質でできた殻で覆われています。
この殻はアルコールでは壊れにくく、アルコール消毒液が効きにくいという特徴があります。
また、手に汚れや油脂、水分が残った状態でアルコールを使っても、消毒効果が十分に発揮されません。
つまり、基本は石けんと流水で物理的に菌や汚れを洗い流すことであり、アルコール消毒は、水道がすぐに使えない場面での補助手段として位置付けるのが正しい考え方です。
手荒れ予防も感染症対策の一部
秋から冬にかけて空気が乾燥すると、「手荒れ」を引き起こす人が増えます。
実は、手荒れを放置することは感染症リスクを高めます。
皮膚が荒れてひび割れやカサつきが生じると、肌のバリア機能が低下し、傷口や角質の隙間に細菌やウイルスが定着しやすくなります。
さらに、荒れた部分に石けんや消毒液がしみるため、無意識に手洗いが雑になってしまうという悪循環に陥ります。
手洗いとセットで実践したいポイントは以下の2点です。
水分をしっかり拭き取る
洗った後に手が濡れたままだと、水分が蒸発する際に肌の潤いまで奪ってしまいます。
清潔なペーパータオルや個人用のハンカチで、摩擦を起こさないよう優しく押さえるように水分を拭き取りましょう。
ハンドクリームで保湿する
手洗い後や勤務終了時など、こまめに保湿クリームを塗り、皮膚のバリア機能を保護してください。
10月15日の「世界手洗いの日」は、私たちが毎日何気なく行っている感染対策を見直す絶好のチャンスです。
正しい手洗いを習慣化することで、自分自身の健康を守り、大切な同僚や家族へウイルスを持ち帰るリスクを大幅に減らすことができます。
今日オフィスで手を洗うとき、あるいは帰宅して洗面台に立つとき、ぜひ今回のステップを思い出してみてください。
一人ひとりの「正しい1回の手洗い」が、健康で快適な職場環境をつくる第一歩になります。
<参考>
・日本ユニセフ協会「世界手洗いの日ってなあに?『世界手洗いの日』プロジェクト」
・森功次ら「Norovirus の代替指標として Feline Calicivirus を用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討」感染症学雑誌 第80巻第5号、2006年、496-500頁