無意識の加害者にならないためにハラスメントを理解しよう
- 2024/11/6
- ハラスメント
私たちの社会で「ハラスメント」という言葉を耳にすることは増えています。職場や学校、さらにはオンライン空間でさえもハラスメントは広がっているともいわれています。
言葉や行動がだれかを傷つけてしまうことがあるということに改めて向き合う必要があります。また多くのハラスメントの加害者となる方は、「そんなつもりはなかった」「良かれと思って言った」などと言うことが多く、自覚がない、逆に誤解されたという姿勢である場合が非常に多いです。
今回はハラスメントについて、また加害者や被害者にならないように気を付けるための意識について解説します。
ハラスメントとは
ハラスメントとは、相手(特定・不特定多数問わない)に望まない行為や言動で、精神的・身体的に苦痛を与える行動全般を指します。ハラスメント行為は、いじめや人権侵害に関与する恐れもあり、軽視できない問題です。代表的なハラスメントは以下になります。
パワーハラスメント(パワハラ)
職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性が背景にあり、業務の適正範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、職場環境を悪化させる行為のことをいいます。
上司や部下、先輩後輩関係が多いですが、部下から上司に対して行われる逆パワハラも近年話題になることもあり、さまざまな関係性で発生します。
・ 身体的な攻撃:殴打、足蹴り、相手に物を投げるなど
・ 精神的な攻撃:人格否定する、長時間にわたり業務に関する厳しい叱責を繰り返し行うなど
・ 人間関係からの切り離し:集団で無視し職場で孤立させる、特定の社員だけミーティングに呼ばないなど
・ 過大な要求:業務とは関係ない私的な雑用の処理を強制的に行わせるなど
・ 過少な要求:管理職であるが、新人と同じレベルの仕事しか与えないなど
・ 個の侵害:職場外で継続的に監視したり、私物の写真を撮影したりするなど
セクシャルハラスメント(セクハラ)
相手の意に反する性的な言動で労働者個人としての尊厳を不当に傷つけ、就業環境を悪化させ、能力の発揮を阻害する行動のことを指します。異性間だけでなく同性間も対象となります。
<セクハラとなる言動例>
・ 不必要に髪や肩、胸、腰など身体に触る
・ 交際関係や性的な関係を尋ねる
・ 昇進、昇給等の対価に性的関係を強要する
・ 「女性は子どもを産むべき」などの固定的な性役割を押し付ける
・ パソコンの壁紙などに性的な写真を使う
<性的言動により就業環境を害される2つの類型>
・ 対価型:事業主から性的な関係を要求され拒否したら解雇されたなど
・ 環境型:上司が労働者の腰や胸などに度々触ったため、その労働者が苦痛を感じて就業意欲が低下するなど
モラルハラスメント(モラハラ)
直接的な身体的暴力はなく、言動や態度で相手を傷つけ製紙的に支配しようとする行為のことをいいます。
アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールの多量摂取の強要や飲めない人への配慮を欠く行為のことを指します。酔ったうえでの迷惑行為も含まれます。
マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠や出産、育児などを理由に解雇や降格、減給などの就業環境を害される行為のことをいいます。
なぜハラスメントが起きてしまうのか?
ハラスメントの発生要因は大きく2つに分けられます。
組織的要因
・ 上司部下、社員同士のコミュニケーション不足
コミュニケーションが不足すると誤解や齟齬、不満が生じやすくなります。業務やストレス状況の把握をおろそかにしてしまうと、相手にとって無茶な要求になってしまう、自分では通常通り接したつもりでもハラスメントをされたと誤解されることもあります。
・ 組織や文化の価値観
ミスが許されないような日常的に強いストレスがかかる職場や責任者の権限が強すぎるような閉鎖的な職場環境では生じやすくなります。
・ 労働環境や条件
長時間労働や有給取得が難しい職場は、心身ともに疲労が蓄積しやすい状況となります。慢性的にストレスがかかり、それを発散できない状態が続くと一人ひとりの余裕もなくなり、お互いをサポートすることや、思いやることが難しくなります。
個人的要因
意識的にハラスメント行為をする方もいますが、ハラスメントの知識を正しく知っておらず理解していない無知から生じることが多いのも現状です。また世代間ギャップや生活環境、価値観の違いからも起こりえます。
「相手と自分の関係であれば大丈夫」と勝手に思い込んだり、「男らしさとは、女らしさとはこうだ」と固執した考えを持っていたりする方は注意が必要です。
ハラスメント防止方法
加害者にならないために意識するポイント
・ 自分の常識が相手の常識と一緒という考えない
時代が変わるにつれて、上司部下の関係やコミュニケーションの取り方などが非常に複雑になってきています。自分の経験からは考えられないようなことが起こると違和感を覚えるのは当然ですが、時代が変わって対応の仕方も変わってきていることを受容する必要があります。
「自分の考えが必ずしも正解ではない」という意識を持って相手の気持ちや考えを確認しましょう。
・ 指導時の注意
業務上必要な言動はハラスメントにはなりませんが、相手の気持ちを考えない一方的な言動はハラスメントとなる可能性が高くなります。
好き嫌いやストレス発散など個人的な感情を優先した言動は危険です。人格の否定や必要もないのに人前で叱責をすることもハラスメントとなります。
一方的に話すのではなく、相手にも発言を促しましょう。日々のコミュニケーションを増やすことも心掛ける必要があります。
・ ハラスメントについて勉強する
企業で講習や勉強会などが開催される場合があると思います。積極的に参加する、自分の情報をアップデートしていくことも大切です。
被害者にならないために意識するポイント
被害者になりたくてなっている方はいませんし、自分できることも限られています。被害者にならないというより、被害を受けた時の対応が重要です。
ハラスメントをする相手は、「スキがある」「何を言っても文句を言わない」などの相手を選んで行為に及んでいます。他者と関わる時はアサーティブコミュニケーション(お互いを尊重しながら意見を交わすコミュニケーション術)というのが有効といわれています。無理なこと、嫌なことを我慢しすぎず相手に伝えることも時には必要となります。
不適切な行為を受けた時に、「なんとなく嫌だ」と感じて、悶々としてしまうということも少なくありません。またハラスメントを受けた後の対応について、「なにもしなかった」という方が最も多いという調査もあります。
不快な言動が続く場合は、一人で悩まず誰かに相談しましょう。言葉にすることはメンタル維持に重要であり、落ち着いて客観視することもできます。社内の窓口や労働基準監督署、法テラスなどに相談することも有効です。
そして記録をつけることが非常に重要です。日時や場所、状況、言動を記録しましょう。
企業としての対策
労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法でハラスメント防止対策を講じることが事業主の義務となっているので、各企業でそれぞれ対策されていると思います。
匿名性が担保されている社内調査などで定期的に実態把握しリアルな声を集めることも有効です。
また、相談窓口の設置だけでなく相談者への心理的なケアも重要ですので、産業医や保健師などと協力していきましょう。
<参考>
厚生労働省「あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-」
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します」