厚生労働省は、毎年11月1日から30日までを「過労死等防止啓発月間」としています。
この期間中、各都道府県でシンポジウムやキャンペーン、セミナーが開催されます。「過労死等防止対策推進法」に基づき、これらの活動は過労死等の防止の重要性を国民に認識させ、理解と関心を深めることを目的としています。この啓発月間を通じて、過重労働の解消と過労死防止を目指し、広範な啓発活動が展開されます。
過労死等防止対策推進法とは
過労死等防止対策推進法は、過労死等が多発し大きな問題になっていること、過労死等が遺族や家族だけでなく社会にとって大きな損失であることを受け、2004年に施行されました。
過労死等の防止のための対策を推進し、過労死等がなく仕事と生活を調和させ、健康で充実した働き方ができる社会の実現に寄与することを目的としています。
「過労死等」は、過労死等防止対策推進法2条で以下のとおり定義づけられています。
・ 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
・ 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
・ 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
過労死等防止対策推進法では、政府は、調査・研究を行い、過労死等が生ずる背景を総合的に把握することが定められています。
さらに、これに基づき、過労死等を防止するための教育活動・広報活動などを通じて過労死等を防止することの重要性について国民の関心と理解を深めるために必要な施策を講じることも定められています。
このようにして、政府は労働環境の改善を図り、過労死等のリスクを低減させ、働く人々の健康と安全を守ることを目指しているのです。
過労死等の防止のための対策に関する大綱
また、過労死等防止対策推進法6条では、政府は毎年、国会に対し、過労死等の概要および政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならないと定められています。
(年次報告)
第6条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。
出所:過労死等防止対策推進法
厚生労働省は、労働環境の改善、長時間労働の是正、健康管理体制の強化など、政府が過労死等防止対策のためにまとめた「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づき、施策の状況を取りまとめ、毎年10月に研究結果や分析結果を「過労死等防止対策白書」として公表しています。
このうち大綱は、社会情勢の変化や過労死をめぐる諸情勢の変化に応じておおむね3年ごとに変更されています。
また、2024年10月11日に公表された「令和6年版過労死等防止対策白書」では、労働時間やメンタルヘルス対策の状況、過労死等の現状についての報告とともに、2024年8月に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の主な変更ポイントについて公表されました。
「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の主な変更ポイント
・ 時間外労働の上限規制の遵守徹底
・ 過労死等を発生させた企業に対する再発防止対策
・ 予防研究・支援ツールの開発
・ 多様な働き方への対応
さいごに
2024年に変更された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、時間外労働の上限を遵守することや、過労死等を繰り返し発生させた企業には改善計画を策定させるなどの再発防止策の強化が定められています。
また、予防研究や支援ツールの開発、多様な働き方の推進も含まれており、労働者が健康で充実した生活を送れる環境づくりが目標とされています。
官民が協力してこれらの対策を実施し、働きやすい社会の実現に努めることが求められています。
同時に、企業は従業員が支援を求めやすい環境を整えるために具体的な対策を講じる必要があります。
年に1度の「過労死等防止啓発月間」を機に、現在の取り組みを再評価する機会として活用してはいかがでしょうか。
<参考>
・ 厚生労働省「過労死等防止対策」
・ 厚生労働省「11月は「過労死等防止啓発月間」です」
・ 厚生労働省「令和6年版過労死等防止対策白書(本文)」