タバコがストレス解消に良いって本当?

最近、私の関わっている企業では、禁煙サポートプログラムを実施しているところが数社あります。日本においても、タバコの健康影響の認知度向上、喫煙環境の制限、価格の上昇等により、喫煙率が低下していますが、諸外国とくらべるとまだまだ喫煙率が高いのが現状です。
そして、そんな逆境の中でも現在喫煙を続けておられる方は、「岩盤層」と呼ばれる禁煙に無関心な方が多く、無料で禁煙サポートを受けられるチャンスが増えていても、希望者が伸びにくいのも実情と感じています。
ただし、喫煙者の方によくお話を聞くと、「タバコが身体に悪いのは重々わかっている。でも、ストレス解消・気分転換の手段のため禁煙は難しい」ということをお聞きします。この「タバコはストレス解消に良い」という考えは本当なんでしょうか。

たばこの「ストレス解消」は禁断症状からの解放

タバコとストレスやメンタルの関係をみてみましょう。ストレスのイライラを喫煙でスッキリさせているという方も多いかもしれません。タバコを吸う方の1日の気分の変化を調べた研究があります。
その研究によると、喫煙後にはストレス度が低下しますが、喫煙後30分程度で再びストレス度が増してくることが示されています。
このとき、喫煙者の方は「タバコが吸いたい」、「集中できない」といったストレスを感じ、それ以上吸えない状況が続くと「吸いたくてたまらない」といった嫌な気分が増幅していくと言われています。
これは、タバコがニコチン依存をつくりだすためです。ニコチンは肺から吸収されると数秒で脳内に到達し、快感を感じさせます。これを続けることでニコチンがないと正常な脳機能の働きができなくなってしまいます。タバコを吸ったあと、30分程度でニコチン血中濃度が下がってくるため、上記のような症状が現れます。タバコはストレス解消の手段と捉えている方が多いですが、実は、タバコこそがストレスを作り出しているのです。

たばこは交感神経優位にする

たばこを吸うのはストレスにとって良いと感じている方も多いかもしれませんが、私たちの「自律神経」にどのような影響を与えるかご存知でしょうか。
たばこは、自律神経のうち、「交感神経」を優位にします。交感神経は、「闘うか逃げるか」と呼ばれている神経モードであり、タバコを吸うことは心拍数を高めたり、血圧上昇や血管収縮をもたらします。すなわち、リラックスとは逆の状態をつくりだすのです。
帰宅後、夕食を食べながら一服。入浴後の一服。これらは、からだがリラックスして休もうとするのを邪魔する行為と言ってよく、ストレスマネジメントの観点からみても望ましい行為とは言えません。

禁煙によってメンタルヘルスが改善する

一方、禁煙の際には離脱症状のため、ストレスが一時的に高まりますが、禁煙に成功した人ではたばこから解放されることによってストレスが低下し、精神的健康度が改善することがわかっています。
タバコは前述した、ニコチン依存だけでなく、心理的依存(タバコを吸って良かったという記憶や、身についたクセ、習慣など)を来すと言われています。したがって、この二つの依存への対策が必要です。
ニコチン欠乏症に対する禁煙補助薬や心理的依存への支援(喫煙への考え方や習慣・行動面を整える支援)を受けることにより、禁煙成功率が高まります。是非、禁煙支援を行っている専門医療機関への受診をお勧めします。
ご自身の会社や健康保険組合で禁煙サポートプログラムが実施されていたら、活用しましょう。

<参考>
・厚生労働省e-ヘルスネット「たばことストレスたばことストレス」
・医療法人社団平成医会「喫煙から起こる心理的な変化」

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南 未来株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

学生時代より予防医療やメンタルヘルス支援に興味を持ち、大学院で産業保健(Presenteeism)の研究をしました。大企業での産業保健師を経て、海外にて専業主婦、行政保健師、中企業の保健師も経験してきました。保健師として、会社組織や個人が自立して健康を構築していけるように、エンパワメントの視点を忘れずに支援していきたいと思います。また、女性として、親として、妻として、ワークライフバランスやダイバーシティについても発信していきたいです。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、精神保健福祉士、両立支援コーディネーター
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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