2025年3月13日、株式会社マイナビは「企業の雇用施策に関するレポート（2025年版）」の結果を発表しました。
これは2024年の企業の雇用施策の導入傾向や今後の意向を把握することを目的とした調査で、従業員数3名以上の企業において、直近（2024年1～12月）に中途採用業務を担当しており、「採用費用の管理・運用」に携わっている人事担当者1,500名を対象に実施されました。
以下では、「企業の雇用施策に関するレポート（2025年版）」（以下、本調査結果）をわかりやすく解説します。

2024年に力を入れた施策や制度

現在実施している従業員向け施策では、「有給取得率向上施策（29.3％）」が最多で、「人事考課・評価制度の見直し（25.6％）」、「在宅ワーク・リモートワーク制度（24.5％）」、「退職金制度の導入（23.6％）」が続きました。
その中で特に力を入れた施策を聞いたところ、「人事考課制度の見直し（13.4％）」に続いて「有給取得率向上施策（13.3％）」、「女性管理職比率の拡大（11.3％）」などが並ぶ結果となりました。

また業種別では、IT・通信・インターネットでは「在宅ワーク・リモートワーク制度（23.5％）」、金融・保険・コンサルティングでは「人事考課・評価制度の見直し（22.6％）」、医療・福祉・介護では「有給取得率向上施策（19.1％）」がそれぞれ最多となるなど、それぞれ業界によって、働きやすさや賃金・評価制度の改善など重視している施策に特徴が見られました。

2025年の新規採用者賃上げ予定

2025年度の新規採用者の賃上げ予定を聞いたところ、「賃金を上げる予定（71.1％）」と回答する企業が多い結果となりました。
中でも「10％以上あげる予定（27.7％）」の割合が最も多く、2024年の継続雇用者についても「賃金を上げる予定（71.5％）」と昨年より2.4pt下がるものの、高い比率であることが分かりました。

全体的に例年に引き続き、物価高の中で優秀な人材の確保・離職の防止のため賃上げを予定している様子です。

2025年の従業員教育費とリスキリングニーズの高いスキル

2025年のリスキリングを含む教育訓練費を増やす予定について聞いたところ、「上げる予定（64.5％）」が最も多い結果になりました。
業種別に見ると「流通・⼩売・フードサービス」が77.0％と前年度よりも8.4pt増加、「運輸・交通・物流・倉庫」が7.2pt増加するなど、業種によっては8割近い企業が従業員教育を重視しているようです。
また、どのような内容のリスキリングが必要か？という設問には「データ分析・統計解析（36.9％）」が最多となり、「情報セキュリティ（31.0％）」、「マーケティング・WEBマーケティング（30.7％）」が続きました。

リスキングの内容で見ると、特に「データ分析・統計解析」はメーカー、商社で4割以上、「情報セキュリティ」はIT・通信・インターネット、運輸・交通・物流・倉庫で3割以上を占めるなど業種によって求められるスキルに特徴が見られました。

職種別の回答を見てみると、営業職では「マーケティング・WEBマーケティング（52.9％）」や管理・事務で「データ分析・統計解析（46.5％）」。ITエンジニアで「AI・機械学習（56.1％）」などが特に高い割合で求められていることが分かりました。
企業側では賃上げを進める一方、従業員に対して今までよりも幅広い能力が求められている傾向が見られます。

さいごに

今回の調査結果から企業の雇用傾向として、優秀な人材の採用をより強化しつつ、既存社員の離職を防止し、同時にリスキニングで一人一人のさらなる能力の向上を求める動きが見られました。業種によって回答結果に特徴が見られるなど、慢性的に人手不足の企業が多い中、それぞれが雇用に関する課題を認識し、改善しようとする傾向がうかがえました。
特に賃上げに関しては、物価高の影響もあり例年増加の傾向のため、この流れは続くと見られるでしょう。しかし、同時に新規採用者と継続雇用者の賃上げ比率のバランスなど、注意が必要です。

今後も世界的な不況と労働人口の急激な減少が予想される中、いかに優秀な人材を確保するかは企業にとって非常に重要な課題だと考えられるでしょう。

＜参考＞
マイナビキャリアリサーチLab「企業の雇用施策に関するレポート（2025年版）」