どう声をかけるべき?女性の健康課題への管理職の対応
- 2025/6/23
- WOMAN

日本の労働力人口の45%が女性となった今、職場における女性社員の健康課題への理解と適切な対応は、企業の生産性向上や職場環境の改善に直結します。
実際、多くの実態調査において、女性は、女性特有の健康課題に対して十分な支援がないと感じており、上司や周囲の従業員の理解を求めていることが明らかになっています。
本記事では、企業としてではなく、「管理職としてできること」をご紹介いたします。
昨今はコミュニケーションひとつをとっても、非常にセンシティブになっており、「女性社員への声掛けはセクハラにならないか心配……」という男性管理職の方の声もよく耳にします。
一方で、女性社員が安心して働ける環境を整えるために、適切な声掛けや支援が管理職の立場に求められていることは周知の事実ですよね。
この記事に目を通している方は、きっと部下に寄り添いたい気持ちをお持ちの方かと存じます。
できるだけ具体的に、実践しやすい対応の仕方についてご紹介いたします。
念頭に置いていただきたいこと
健康課題には個人差がある
大前提として、女性特有の健康課題については、症状の内容だけでなく、発症頻度や程度、そして知識量にも個人差があることを念頭に置いていただきたいです。
自分が経験したことのない症状については関心が向きにくく、あまり知らずに過ごせてきたという女性もいらっしゃいます。
そのため、当事者以外にはその辛さが伝わりにくく、女性同士でも理解が進まない現状があります。
「あの人は上長が女性だから大丈夫だろう」と、女性同士の関係性に任せておけば安心というわけではありません。
だからこそ、男女関係なく知識を深め、理解を促進していく必要があります。
解決策をパターン化しにくい
女性特有の健康課題にはどのようなものがあるでしょうか。
月経に関するトラブルや更年期障害、産前産後・不妊などの周産期だけではありません。
育児や介護との両立や、女性がん、婦人科系疾患など、多岐にわたります。
先ほどの個人差に、女性特有のライフイベントも絡み、その容態は多種多様です。
また、これらの健康課題には女性のホルモンバランスの変動が影響していることがあり、特効薬もあまり存在しません。
むしろ、月経や女性ホルモンの変動は、健康な女性だからこそ起こるという考え方もでき、解決思考よりも、「症状とうまく付き合っていく」という捉え方が合う人もいらっしゃいます。
「この健康課題にはコレ!」という解決策があまりないことから、健康課題を抱える従業員に対しては、解決を焦らせずに長期的に寄り添っていただければと思います。
声掛けのPOINT
直接的な用語は避ける
これは言い換えると、プライバシーへの配慮です。気がかりな女性社員がいた場合、「生理」や「更年期」といった直接的な用語を用いた声掛けは、適切とはいえません。
人それぞれパーソナルスペースがあるように、関係性によって踏み入れて良いとされる範囲が異なるためです。
社会人として、その距離感を見誤らないようにするためにも、直接的な用語は避けるという方法を取った方が安全です。
また、原因を決めつけられるような印象も与えかねないため、勝手な推測で声をかけることは避けましょう。
仕事の一環というマインドで対応する
社会人として、自身の体調不良や自覚症状を申告することは自己保健義務の一つですし、上司としても、仕事の一環という前提姿勢で接すると良いでしょう。
カウンセラーや医療職ではないため、健康課題について詳細に聞く必要はありません。
本人から言い出さないからといって、体調不良の理由を尋ねる必要もありません。
声掛けのポイントは聞くというより、できることを伝えることです。以下のような手順がおすすめです。
【① 客観的な事実や状況】
(例)「体調が悪そうに見えるけど、大丈夫?」
【② 主観的な気持ちや意見】
(例)「抱えてる仕事もあるだろうけど、体調が優れないのは心配だ」
【③ 提案と代案】
(例)「必要であれば仕事を調整するよ。半休をとって病院に行くこともできるから、もし必要だったら教えてね。」
代案まで伝えることができれば、素晴らしいと思います。
普段から、就業規則や社内外の相談窓口など、体調不良時や女性の健康管理に利用できる制度を把握しておきましょう。
管理職としてできること
女性特有の健康課題は、職場では女性側から口にしにくいという問題があります。
デリケートな話題であると共に、ある程度は我慢する風潮があるからです。
ですが、管理職側から、女性の健康課題に悩む女性社員をスクリーニングすることも難しいですよね。
そこで、人事評価の面談の際に使用する調査シートに、自覚症状や健康状態に関する質問項目を作成し、その任意回答に対応する方法があります。
本人から記載があれば、発症の頻度や程度も尋ねることができ、社員の健康状態をラインケアにつなげることもできます。
男女関係なく平等に把握できるため、企業全体の風土として、健康に関して話し合う雰囲気が醸成されることにもつながると考えられます。
ぜひ参考にしていただければ幸いです。
<参考>
・ 厚生労働省「令和5年の働く女性の状況」
・ 厚生労働省「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会(第3回)」
・ 働く女性の心とからだの応援サイト「なぜ女性の健康支援が必要なのか」
・ 経済産業省「健康経営における女性の健康課題に対する取組事例集 令和7年3月(初版)」