【炭水化物を正しく理解する 後編】お酒を飲むなら白米は必須|肝臓に二重の過負荷をかける”最も避けるべき習慣”とは

はじめに

本記事は、「炭水化物を正しく理解する」シリーズの後編です。
前編では、炭水化物の役割と白米(炭水化物)を抜くことの健康リスクについてお伝えしました。

後編となる今回は、お酒を飲む代わりに炭水化物を抜くことの健康リスクについてお伝えします。
「お酒を飲むから白米を食べない」という行為は、肝臓に二重の過負荷をかける「最も避けるべき習慣」の一つであると私は考えています。
しかし、保健指導をしていると、この習慣になっている方が非常に多くいらっしゃいます。
今回はそれだけ定着しつつある、「お酒を飲む代わりに炭水化物を抜くことの健康リスク」を解説していきます。

お酒を飲む代わりに炭水化物を抜くことの健康リスク

考えられる健康リスクは、低血糖、神経障害、脂肪肝の3つです。詳しく見ていきましょう。

アルコール誘発性低血糖と意識障害のリスク

アルコールが体内に入ると、肝臓は最優先でその解毒(代謝)を行います。
すると、普段肝臓が行っている「糖新生」(糖質以外の物質からブドウ糖を合成する仕組み)が抑制されてしまいます。
通常、血糖値が下がると肝臓が糖を放出して調節しますが、飲酒中はこの機能がストップします。
この状態で炭水化物を抜いてしまうと、血糖を補給する手段が完全に断たれ、最悪の場合、命に関わる深刻な低血糖を招くリスクが高まります。

酔いではなく低血糖の可能性があるサイン
・ お酒を飲んで急に顔が青ざめる
・ 異常にふらつく
・ 寝ている間に冷や汗をかく

ビタミンB1の枯渇と神経障害

アルコールの代謝にはビタミンB1が不可欠です。
しかし、炭水化物を抜くことで穀物からのビタミンB1摂取が減り、さらにお酒で大量に消費されると、体内は深刻な欠乏状態に陥ります。
ビタミンB1は水溶性で、体内に貯蔵できる量はわずかしかありません。
重篤なケースでは、記憶障害を伴う「ウェルニッケ脳症」という脳の病気を引き起こす可能性もあります。ダイエット以前に、脳を守るためにビタミンB1(豚肉、玄米、豆類、サプリメントなど)の補給は必須といえます。

神経障害の可能性があるサイン
・ 手足がしびれる
・ 最近ひどく忘れっぽい
・ お酒を飲むと目がかすむ

脂肪肝の加速(アルコール性・非アルコール性)

炭水化物が不足すると、エネルギーを確保するために、全身の脂肪組織から「遊離脂肪酸」が血液中に放出されます。
これがお酒の代謝で手一杯の肝臓に流れ込むと、処理しきれずに脂肪として蓄積され、「お酒を飲んでいるのに、飢餓状態に近い機序で脂肪肝になる」という皮肉な現象が起こります。
そもそもアルコールそのものに、筋肉での糖取り込みを阻害し、逆に肝臓での脂肪合成を促進する働きがあるため、さらに炭水化物を抜くとそれを加速させることになります。
「炭水化物を抜けば太らない」という思い込みはむしろ危険です。
アルコール代謝以外の負担を肝臓に与えないためにも、炭水化物は適量の摂取が毎食必要です。

「お酒の糖質で代用できる」という誤解

「アルコールにも糖質が含まれているのだから、主食を抜いても理論上はプラマイゼロになるはずだ」という考え方は、ダイエットの現場で非常によく聞かれます。
確かに、数値上は「ビール4.5杯で白米1杯分」くらいの糖質量になりますが、健康リスクの観点ではこれらはまったく等価ではありません
「お酒の糖質」と「食事の炭水化物」は、体内での代謝ルートがまったく異なる別物だからです。

お酒に含まれる糖質の多くは、醸造過程で残った「残糖」で、微生物による発酵を経て残った「単糖類(ブドウ糖など)」や「二糖類」が主成分です。
これらは多糖類である穀物(米や麦)に比べ、分子構造が単純で吸収が非常に早いのが特徴です。
そのため、急激に血糖値が乱高下しやすく、将来的な糖尿病リスクや動脈硬化のリスクが考えられます。
また、日本酒やワイン、一部のカクテルには果糖(フルクトース)が含まれることがあり、これらは肝臓でしか代謝できず、過剰分は速やかに「中性脂肪」へと作り替えられてしまいます。

さらに、アルコールに含まれるカロリーは「エンプティカロリー(空っぽのカロリー)」と呼ばれます。
これは「太らない」という意味ではなく、「生命維持に必要なビタミンやミネラルが皆無である」という意味です。
炭水化物をエネルギーに変えるには、ビタミンB1、B2、ナイアシン、パントテン酸などの助けが必要です。
しかし、アルコールはこれらの栄養素を含まないどころか、その分解過程で体内のビタミンB群を大量に消費します。

お米に含まれる炭水化物は、同時に摂取するおかずの栄養と共に「燃える燃料」になりますが、お酒の糖質は「自らの分解のために体内の貴重なビタミンを使い果たす燃料」です。
結果として、細胞レベルでのエネルギー産生効率が劇的に低下し、慢性的な疲労感や代謝の停滞を招いてしまうのです。

飲酒時こそ炭水化物の適切な摂取を

健康を維持しながらお酒を楽しむためには、炭水化物を「ゼロ」にするのではなく、「血糖値を急上昇させない良質な炭水化物」を少量摂取することがおすすめです。
具体的には、GI値の低い玄米やオートミール、全粒粉のパンなど、精製される前の茶色っぽい炭水化物が挙げられます。
〆のラーメンの代わりに、飲む前から少量の玄米や大麦入りのおにぎり1個をタンパク質と一緒に軽く摂っておくなどの対策がとれると良いです。
外殻部分にビタミンB1が含まれているため、アルコール代謝を直接助けることにもつながります。

また、意外かもしれませんが、枝豆は「タンパク質」と「炭水化物」をバランスよく含み、さらにビタミンB1が極めて豊富です。
お酒を飲む際、最初に「両手に山盛り一杯」の枝豆を食べることで、必要な糖質とビタミンを同時に確保できます。
居酒屋にもよくあるメニューなので、おつまみには枝豆を必ず頼むようにしても良いですね。

<参考>
・ 厚生労働省「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」
・ 厚生労働省「「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書1エネルギー・栄養素 ビタミン(水溶性ビタミン)」

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前川 アイ株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

地域で潜在的に困っている方の助けになりたいという想いから保健師を志し、大学で看護師資格を取得後、大学院にて保健師資格を取得しました。学びを深めるなかで、人生で最も長い働く世代の健康を考えられる産業保健に興味を持ち、ドクタートラストに入社いたしました。
健康に関する発信をしていくことで、一人でも多くの方が生きがいを持って笑顔で働けるお手伝いをさせていただければと思っております。
【保有資格】修士(公衆衛生看護学)、保健師、看護師
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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