「有酸素運動」と「筋力トレーニング」オススメはどっち?推奨される順番は?

少しずつ暖かくなってきて「運動をしよう!」「夏に向けてダイエットしたい!」と、運動に対して前向きに考えている人も多いのではないでしょうか。
しかし、「結局、有酸素運動と筋力トレーニングのどっちを行えばいいの?」「両方やるとしたら順番はどうすれば?」というお悩みをよく聞きます。
今回は、筋力トレーニングと有酸素運動についてお話しします。

有酸素運動と筋力トレーニングはどちらがオススメ?

筋肥大目的ではなく、減量目的であっても有酸素運動に加えて筋力トレーニングを併せて行うことがオススメです。
有酸素運動は体内の脂肪を利用するので、すぐに痩せたい場合に有効ですが、やりすぎると筋肉量が減ってしまいます。
そうすると基礎代謝量が減り、痩せにくい身体になってしまう可能性があります。
そのため、筋力トレーニングで筋肉量を増やし、基礎代謝量を上げつつ有酸素運動を実施することで脂肪を燃焼させるのがベストです。

「両方やるのはちょっと……」という方は筋力トレーニングがオススメです。
効果はゆっくりですが、着実に理想の体型に近づいていきますし、健康寿命が延びるメリットまであります。

有酸素運動と筋力トレーニングの順番は?

有酸素運動と筋力トレーニングの順番は目的によって変わります。

目的【減量・脂肪燃焼】
先に筋力トレーニングをしてから有酸素運動

目的【筋肥大】
先に有酸素運動をしてから筋力トレーニング

ただ、注意していただきたいのが、筋肥大目的の場合の有酸素運動はウォームアップ程度にとどめることです。
筋力トレーニング前に有酸素運動をやりすぎてしまうと、トレーニングのパフォーマンスが低下する、成長ホルモンの分泌が抑制されて筋肥大が抑制されるという報告があるためです。
個人差もありますが、時間にすると10分程度、少し汗ばむくらいをイメージしていただければと思います。

なぜ痩せるには有酸素運動が後なの?

有酸素運動は脂肪を主にエネルギー源とするため、脂肪を燃焼したい場合に有効です。
また、筋力トレーニングは糖質をエネルギー源とするため、それ自体が脂肪を燃焼させるわけではありませんが、成長ホルモンが分泌されます。
成長ホルモンによって脂肪が燃焼しやすい状態が作られるため、そのうえで有酸素運動を行うことで、より脂肪燃焼効果が期待できるという仕組みです。
また、基礎代謝量も上がるので太りにくい身体にしてくれます。

「トレーニングをしたあとに有酸素運動をするほどの時間がない!」という方も安心してください。
筋力トレーニング後に運動以外の活動(NEAT:非運動性熱産生)を行うだけでも効果があるとされています。
要するに、筋力トレーニング後に家事などを行うだけでも脂肪燃焼するということです。
忙しい方も、仕事帰りに軽めのトレーニングを実施したあと、少し遠回りをして帰るだけでもかなり変わってきます。
最近は手軽に通えるジムも増えてきていますので無理なく実施してみましょう!

筋力トレーニングの前に

ただ、いきなり筋力トレーニングを行うと怪我のリスクも高まるので、動的ストレッチもしくは軽い有酸素運動を行ってからが望ましいです。
動的ストレッチとは肩関節や股関節を回すなどの動きを伴うストレッチです。
ちなみに、筋力トレーニングの前に静的ストレッチ(柔軟運動など)を行うと、トレーニングによるパフォーマンスが落ちると報告されていますので一般的には推奨されません。
「どうしても柔軟(静的ストレッチ)を行わないと気持ち悪い!」という方は、30秒以内の柔軟であればそれほどパフォーマンスは落ちないとする研究がありますので、短時間で行ってみるのもいいかもしれません。

また、筋力トレーニングを行う前には特異的ウォームアップを行うことが推奨されています。
特異的ウォームアップとは、メインで行うトレーニングと同じ動きを低負荷で行うものです。
例えば、大胸筋を鍛えるためにベンチプレスをする場合、腕立て伏せや低負荷でのベンチプレスを行ったうえでトレーニングをする流れです。

実際に私がトレーニングをするときの流れをご紹介します。

大胸筋トレーニング例

①動的ストレッチ実施(肩関節を回したり、股関節を回すなど)
②軽い有酸素運動(エアロバイクなどを10分前後)
③特異的ウォームアップ(強度の低いベンチプレスや腕立て伏せを10~15回実施)
④筋力トレーニング(ベンチプレスやダンベルプレス、チェストプレスなど)
⑤有酸素運動(ランニング、もしくは家事などのNEATを30分程度)
下半身トレーニング後の有酸素運動はけがをしないように注意しましょう!


今回は筋力トレーニングと有酸素運動の順序についてお話してきました。
久しぶりの運動だと加減がわからず、無理をして怪我をしてしまう可能性がありますので、しっかりと動的ストレッチや有酸素運動などのウォームアップを行って、筋肉を温めてからトレーニングをしましょう!

<参考>
庵野拓将著「科学的に正しい筋トレ 最強の教科書」KADOKAWA、2019/3/28
横浜市スポーツ医科学センター「コラム(健康・体力アップ情報)」
厚生労働省「健康日本21アクション支援システム」
下村祐介他「筋力増強訓練と有酸素運動の実施順序の違いによる効果の検討」第49回近畿理学療法学術大会、2009/09/11

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横野 凌株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学病院に看護師として勤務する中で生活習慣病を抱える人の多さに驚くとともに、予防医療の重要性を再認識しました。その後、保健師学校に入学し、保健師資格を取得しました。現在は成人、特に働く世代の方たちが健康に働くことができるよう産業保健師として活動しています。より多くの方が健康に関する知識を身に付け、病気を予防することができるよう努めていきます。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、Ⅲ種
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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