年齢を重ねると体重が増えたり、体型が変化したりする原因は代謝にあり?

「年齢を重ねると代謝が落ちてしまう」「代謝が落ちると痩せにくくなる」など聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「代謝」と「体重」や「体型」の関連についてお話しします。

代謝とは

代謝はエネルギー消費の観点から、大きく分けて「基礎代謝」「身体活動量」「食事誘発性熱産生」の3種類があります。
「基礎代謝」とは、早朝空腹時に快適な室内等においての安静時の代謝量です。
「何もしなくても消費するエネルギー量」と置き換えてもらうとわかりやすいでしょう。
基礎代謝はエネルギー消費の約60%を占めています。
「身体活動量」は身体を動かすことによって消費されるエネルギーのことで、全体の約30%を占めます。
運動によるものと、家事などの日常生活活動によるものの、大きく2つに分かれます。
「食事誘発性熱産生」は、食事の摂取によって体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が熱となって消費される際のエネルギーのことで、全体の約10%を占めます。
食事をすると体がポカポカしてくることがあると思いますが、それは食事誘発性熱産生のしわざです。

代謝が落ちるとどうなるの?

基礎代謝は体格に依存し、年齢や筋肉量、性別などによっても変化します。
以下の表のとおり、加齢によって基礎代謝は落ちていきます。

表 参照体重における基礎代謝量

性別男性女性
年齢(歳)基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)参照体重(kg)基礎代謝量(kcal/日)基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)参照体重(kg)基礎代謝量(kcal/日)
1~261.011.570059.711.0660
3~554.816.590052.216.1840
6~744.322.298041.921.9920
8~940.828.01,14038.327.41,050
10~1137.435.61,33034.836.31,260
12~1431.049.01,52029.647.51,410
15~1727.059.71,61025.351.91,310
18~2923.764.51,53022.150.31,110
30~4922.568.11,53021.953.01,160
50~6421.868.01,48020.753.81,110
65~7421.665.01,40020.752.11,080
75以上21.559.61,28020.748.81,010

出所:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」30~49歳と50~64歳を比較すると、男性で1日当たり50kcal低下します。
1か月だと1,500kcal、1年で18,250kcalです。体重に換算すると約2.5kgの脂肪が増加することになります。(7,200kcal=脂肪1kgで計算)
女性だと1日当たり30kcalの低下と男性よりは減少幅が少ないですが、1年間で約1.5kgの脂肪が増加することになります。
こうした理由で20代や30代のころと食習慣や運動習慣を変えていないのにいつの間にか体重が増えている、体型が変化しているということが起きてしまうのです。

基礎代謝を減らさないためにどうすればいい?

すぐに減量したい場合については有酸素運動をオススメしますが、太りにくい身体を作りたいのであれば、「筋力トレーニング」がオススメです。
筋肉は臓器の中で最もエネルギー代謝量が多いため、筋肉を増やすことが体型の維持に重要です。
筋肉を増やすのが難しくても筋肉を減少させない、維持するだけでも、太りにくい身体を作るためには非常に効果的です。
横浜市スポーツ医科学センターによると除脂肪量(脂肪を除いた組織の重さで、筋肉が半分を占める)が1kg増えると基礎代謝が1日当たり50kcalアップしたという研究結果が出ています。
そのため、筋肉量を増加、ないしは維持することが、基礎代謝量の増加、ひいては脂肪の減少につながるということです。

オススメの筋力トレーニング:ワイドスクワット

私がオススメするトレーニングはワイドスクワットです。
これは足幅を自身の肩幅の1.5~2倍程度開いた状態で通常のスクワットをするというもので、大きなメリットが3つあります。
1つ目は通常のスクワットと比べて負荷が低いことです。
いきなりスクワットはハードルが高いと思う方や、運動の初心者にもオススメです。
2つ目は鍛える部位が「お尻」「裏もも」「内もも」など下半身がメインなので、大きい筋肉を鍛えることができ、効率よく基礎代謝の向上が期待できる点です。
下半身の筋肉は20代から低下し、つまずきや転倒の原因になるので、下半身トレーニングは介護予防にもなります。
3つ目は通常のスクワットよりも足幅を広げるだけなので簡単に行えるという点です。

以下の点に注意しながら実施してみてください。

実施上の注意点

・ イスに座るイメージでお尻を下げる
・ ひざがつま先よりも前に出ないようにする
・ ひざが内側に入らないようにする
・ 回数は15~20回、1日3セット程度、週に2~3回を目安に実施
※無理のない範囲で実施しましょう。

<参考>
・ e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」
・ e-ヘルスネット「食事誘発性熱産生」
・ 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
・ 横浜市スポーツ医科学センター「肥満と減量(理論編)知っておきたい肥満と減量の基礎知識【理論3】減量に筋力トレーニングが必要な理由」

出演:横野凌(株式会社ドクタートラスト 保健師)

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横野 凌株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学病院に看護師として勤務する中で生活習慣病を抱える人の多さに驚くとともに、予防医療の重要性を再認識しました。その後、保健師学校に入学し、保健師資格を取得しました。現在は成人、特に働く世代の方たちが健康に働くことができるよう産業保健師として活動しています。より多くの方が健康に関する知識を身に付け、病気を予防することができるよう努めていきます。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、Ⅲ種
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

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