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5月31日は世界禁煙デー、今日から禁煙をはじめてみませんか?
- 2025/5/27
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今では街中で喫煙をしようとしても禁止をされている場所が多いことから禁煙を意識している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
毎年5月31日は世界保健機構(WHO)が世界禁煙デーと設定されており、日本では5月31日~6月6日までを「禁煙週間」としています。
肺がんや生活習慣病など、さまざまな健康被害の原因となるたばこ。
受動喫煙によってたばこを吸わない人への健康被害が生じることも問題となっています。
自分のために、周りの人のために、禁煙を始めるきっかけにしてみませんか?
たばこに関する基礎知識
(1)日本の喫煙人口
日本における喫煙人口は、年々減少傾向にあります。
厚生労働省が発表した「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、習慣的に喫煙をしている者の割合は男性で25.6%、女性で6.9%となっています。
これは、禁煙に対する意識の高まりや公共の喫煙規制の強化、禁煙支援プログラムの普及などが背景にあります。
しかし、依然として喫煙者数は一定数おり、特に男女ともに中高年層では喫煙者数が顕著です。
喫煙率はこの10年間では減少を続けています。
一方、20~30歳代の若年層においては、加熱式たばこの利用がわずかに増えており、近年の喫煙率の減少に歯止めをかけている原因の一つと考えられます。
(2)加熱式たばこ
従来の紙巻きたばこに代わるものとして、2013年に加熱式たばこ(ヒートスティックや加熱式電子たばこ)が登場しました。
加熱式たばこは、タバコ葉を高温で加熱することで吸入できる製品で、燃焼を伴わないため煙が発生しません。
これにより、健康への影響や臭いが紙巻きたばことくらべて減少するとされる一方で、依然として健康への影響は完全には解明されていないため、今後のさらなる研究が必要とされています。
また、量が少ないとしても、煙の影響を受けることについては安全というものがなく、喫煙者と受動喫煙者の健康に影響を及ぼす可能性は否定できないと考えられています。
喫煙による心身への影響と疾患
(1)喫煙による本人への影響
喫煙は、がん、心疾患、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)など、多くの重篤な疾患の原因となります。
たばこに含まれる有害物質は血管にダメージを与え、動脈硬化を促進することで心脳血管疾患のリスクを高めます。
また、たばこの煙に含まれる発がん性物質が肺や喉、食道、膀胱などのさまざまながんを引き起こすリスクを高めます。
肺疾患においては、呼吸器系が徐々に機能低下を引き起こし、COPDの発症が高まります。
(2)喫煙による周囲の人への影響
受動喫煙は、喫煙者が吸い込む煙だけでなく、喫煙者が吐き出す煙にも危険があります。
周囲の非喫煙者がたばこの煙にさらされることで、肺がんや心脳血管疾患、呼吸器系の疾患にかかるリスクが増加します。
特に子どもや妊婦にとっては、受動喫煙が重大な健康リスクとなり、発育・成長に悪影響を及ぼす可能性が高いです。そのため、公共の場での禁煙が推進される背景となっています。
(3)妊婦の喫煙
妊婦が喫煙すると、胎児にさまざまなリスクが生じます。ニコチンは胎盤を通過し、胎児の発育を妨げる可能性があります。
妊娠中の喫煙は、流産や早産、低出生体重、胎児の発育遅延などを引き起こす要因となります。また、出産後も乳児の呼吸器疾患や突然死症候群(SIDS)のリスクを高めます。
妊婦にとって禁煙は、母体の健康だけでなく、胎児の健全な発育にも必要不可欠です。
(4)子どもへの影響
喫煙による子どもへの影響も深刻です。
受動喫煙にさらされた子どもは、喘息や呼吸器疾患、中耳炎、う歯(虫歯)などを引き起こしやすくなるといわれています。
さらに、子どもが喫煙の影響を受けると、未成年の喫煙習慣を身につけやすくなるとされています。
早期から喫煙習慣があることはニコチン依存症を招きやすく、よりたばこをやめにくくなると考えられています。
家庭内での喫煙は、子どもの健康や成長に悪影響を与えることが多いため、禁煙は特に重要です。
(5)生活習慣病への影響
喫煙は、がんやCOPD、心脳血管疾患といった重篤な病気以外にも、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高める原因となります。
生活習慣病は、長期的にみても健康リスクに悪影響を与えるため、禁煙をすることが生活習慣病、それに伴うさまざまな疾患への予防の第一歩となります。
禁煙に向けての対策と治療
(1)対策
2020年4月に改正健康増進法が全面施行され、公共施設や公共交通機関は原則屋内禁止となりました。
ただ、技術的基準を満たす喫煙専用室であることや、喫煙専用室の入口に標識が掲示されている場合には、その室内でのみ喫煙することが可能です。
2022年に実施された労働安全衛生調査では、職場の受動喫煙がある労働者に関しては「不快に感じること、体調が悪くなることがある」の回答が42.7%となっており、望まない受動喫煙から健康を守る、防止していくために、マナーやルールを守るとともに、受動喫煙対策が進むことが期待されています。
(2)治療
禁煙治療には、薬物療法と心理療法があります。
薬物療法では、ニコチンパッチ・ニコチンガムやバレニクリンという内服薬を使用します。
薬物療法はイライラやストレスといったニコチン離脱症状を緩和し、禁煙を助けるものです。
心理療法は、個人の生活に合わせた管理法や吸いたくなった時の対処法、喫煙を再開しやすい状況の予測や回避の仕方といった喫煙の習慣を断つために心理的支援を行う方法です。
※内服薬のバレニクリンは2021年6月から出荷停止が続いています。
(3)禁煙による心身への影響
禁煙を開始すると、最初はニコチン切れによる離脱症状が現れることがありますが、徐々に心身ともに改善が見られます。禁煙後、20分で血圧や心拍数が安定することや数週間後には心機能・肺機能が改善します。また、数か月から数年かかりますが、がんや呼吸器疾患といった各種病気のリスクが減少し、禁煙5年では脳卒中のリスクが非喫煙者と同じレベルになると言われています。禁煙をすることで短期的、長期的に体の機能の改善や病気にかかるリスクが低減するなど良い効果が期待できると言われています。
※
喫煙による心身への影響は理解されている方も増えているかと思います。
喫煙所の減少や禁煙外来を設けた医療機関の増加といった禁煙をする機会も増えてきています。
禁煙による健康へのメリットはとても大きいものです。
この世界禁煙デー・禁煙週間を機会に将来の自分や家族、周りの方々のためにも禁煙を始めてみましょう。
<参考>
・ 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」
・ 厚生労働省健康日本21アクション支援システムWebサイト「喫煙」
・ 公益社団法人日本医師会「さあ禁煙をはじめましょう!」