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まだまだ寒い時期が続きます。
インフルエンザや新型コロナウイルス、マイコプラズマ肺炎などの季節性の感染症が流行する時期でもありますが、感染性胃腸炎にも注意が必要です。
2024年11月下旬から徐々に感染性胃腸炎の報告数も増えてきており、ニュースなどでも目にする機会があったことと思います。
いつ自分自身が感染性胃腸炎になるか、身近な人が感染してしまうのかわかりません。
いつでも対策することができるよう、今回は感染性胃腸炎の正しい情報と予防方法についてお伝えをしていきます。
胃腸炎って色々と聞くけど、どんな病気なの?どうやって感染する?
感染性胃腸炎とは
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌などによる胃腸への感染症の総称です。
頻度としてはウイルス性胃腸炎が多く、通年起こりうる感染症ですが特に12月から3月にかけて流行しやすくなります。
ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルスなどが原因となることが多いです。
腹痛、吐き気、下痢、嘔吐、発熱といった症状がみられ、感染してから症状が出るまで1~2日程度、症状が続く期間は個人差もありますが1~3日程度とされています。
細菌性胃腸炎とは
一方の、細菌性胃腸炎では、サルモネラ菌・カンピロバクター・ウェルシュ菌などが原因となります。
こちらも通年発生することがありますが、高温多湿になりやすい夏季に起こることが多いです。
腹痛、下痢、嘔吐、場合によっては血便といった症状がみられます。
感染性胃腸炎の感染経路
感染性胃腸炎は感染力が強いことや以下のように感染経路が複数あることから、急速に広がる可能性があります。
接触感染
接触感染は、ドアノブや手すり、トイレなどの共有部分を介して、手などにウイルスが付着することによる感染です。
吐物や排泄物などの不適切な方法での処理によっても手に付着することで起こることがあります。
経口感染
経口感染とは、汚染された食品を摂取したことや加熱不十分な食品からの感染です。
また、調理をした人がすでに感染している場合にも、食品を通して感染する可能性があります。
飛沫感染
飛沫感染とは、感染をしている方の咳やくしゃみ、吐物が飛散したときに生じる飛沫を吸い込むことによる感染です。
空気感染
空気感染とは、吐物や便が乾燥し、周囲の空気とともに漂っているものを吸い込むことによる感染です。
感染性胃腸炎から身を守るために
感染性胃腸炎から身を守るために、以下に取り組みましょう。
石鹸を用いた流水での手洗い
アルコールでの消毒も日頃の感染対策として大切ではありますが、感染性胃腸炎を引き起こすウイルスには効果が乏しいため、石鹸を用いた手洗いが効果的です。
共有物の消毒
ドアノブや手すり、トイレなどの共有で触れるものや使用するものは次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)を使用して消毒をしましょう。
換気
冬季は暖房を使用するため空気がこもり乾燥しがちです。
定期的な空気の入れ替えを行う換気は感染リスクを軽減することにもつながります。
食品の加熱
感染性胃腸炎を引き起こすウイルスは熱に弱いため、中心温度が85℃~90℃で90秒以上しっかりと加熱することが大切です。
また、まな板や包丁などの使用した調理器具などは、85℃以上の熱湯で1分程度加熱消毒することが有効です。
適切な処理方法
吐物や排泄物を処理するときには、使い捨てのエプロン、マスク、手袋を着用する。
予防接種(ロタウイルスのみ)
ロタウイルスは乳幼児に流行することが多いため、定期接種となっています。
なお、ノロウイルスには予防接種はありません。
感染性胃腸炎になってしまったら
感染性胃腸炎に感染したからといって、出勤もしくは出席停止扱いになることは感染症法や学校保健安全法などの法律では定められていません。
ただ、感染力が強いため無理をすることで周囲の人々に感染させてしまう可能性は否定できず、そのような場合には大きな支障が起こることも考えられます。
感染性胃腸炎の治療
抗ウイルス剤などの特化した治療方法はないため、症状に応じた対症療法が基本になります。
また、下痢止めは原因により、症状を抑えることでかえって悪化させてしまう恐れがありますので、自身の判断での使用は控え、医師に相談することが望ましいです。
水分補給
嘔吐や下痢が起こることで脱水になる可能性があるため、水分補給をしましょう。
水分とともに電解質も失われやすいため、電解質も含まれている経口補水液やスポーツドリンクなども活用するのがおすすめです。
また冷たい飲み物は胃腸への刺激へとなり症状が悪化する可能性がありますので、常温や少し温めた状態にしましょう。
大量に飲んでしまうと吐き気を催すことがありますので、少量ずつこまめに摂取することを心がけてください。
水分を取ることができない場合には、点滴といった医療機関での適切な処置が必要になる場合もあるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
食事
感染性胃腸炎の時には、無理に食事を取る必要はなく水分のこまめな摂取が望ましいです。
食欲がわいてきたときには、消化の良い食事を食べましょう。
<消化の良い食品>
おかゆ、柔らかく煮たうどん、鶏のササミ、白身魚、豆腐、ほうれん草、すりおろしたりんご、バナナ、卵スープ、ゼリーやプリンなど
<避けたほうがよい食品>
揚げ物、根菜やキノコ類、脂身の多い肉類、オレンジなどの柑橘類、香辛料の使われたもの、カフェイン・アルコール、炭酸飲料など
また、症状が治ってからも、1週間程度は便中にウイルスが排出されるため手洗いなどの基本的な感染対策は必要です。
感染性胃腸炎は感染を起こす経路が多くありますが、予防するために、日常生活での手洗いや食品管理の徹底など、基本的な感染対策をすることが大切です。
下痢や嘔吐などの症状があるときには、できるだけ外出を控える、リモートワークに変更するなどの対応をすることが二次感染を拡げないことにもつながります。
感染から自分自身を守ることはもちろん、周囲の人にも感染をさせない、広げないためにも日頃から感染対策を心掛けましょう。
<参考>
・ 厚生労働省「感染性胃腸炎(特にノロウイルス)について」
・ 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
・ 厚生労働省「食中毒の原因(細菌以外)」
・ 国立感染症研究所「感染症発生動向調査 週報」