
花粉症が企業活動に与える影響
くしゃみや鼻水、目のかゆみなどの症状に悩まされる人が増えてくる時期です。
日本では、成人の約3割が何らかの花粉症症状を抱えているといわれており、身近な健康課題として日常生活に影響を与えています。
花粉症は「季節の症状」にとどまらず、働く人の集中力や業務効率、さらには組織全体の生産性にまで影響を及ぼしていることはご存じでしょうか。
春先を中心に多くの人を悩ませる花粉症は、単なる季節性の不調ではなく、企業にも影響を及ぼす健康課題です。
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみといった症状に加え、頭重感や倦怠感、集中力の低下などが生じることで、業務効率が落ちるケースは少なくありません。
特にデスクワークや精密作業、接客業務など集中力が求められる職種では、生産性への影響が顕著に現れます。
実際、花粉症による「プレゼンティーイズム(出勤しているが本来のパフォーマンスを発揮できない状態)」は、企業にとって見えにくい損失となっています。
発熱などの急な体調不良と異なり欠勤には至らないため問題が表面化しにくいものの、長期間にわたりパフォーマンスが低下することで、組織全体の生産性に影響を及ぼします。
また、鼻詰まりや鼻水などの症状は、睡眠の質の低下は判断力や注意力の低下を招き、睡眠不足を引き起こすことにより、労働災害リスクの増加にもつながる可能性があります。
花粉症の症状があるとき、仕事の効率は症状がないときにくらべて平均63%と通常時の6割にダウンするともいわれています。
このように花粉症は個人の問題にとどまらず、企業活動に影響を与える重要な健康課題であり、健康経営の視点から取り組むことが重要とされています。
健康経営における花粉症対策の位置づけ
近年、従業員の健康を経営資源と捉える「健康経営」の考え方が広がっています。
健康投資を行うことで従業員の活力や生産性を高め、結果として企業価値向上につなげる取り組みです。
その中で花粉症対策は、比較的取り組みやすく、効果が見えやすいテーマの一つです。
企業側が取り組めることとしていくつか紹介します。
1つ目は、環境整備です。
空気清浄機の設置や定期的なフィルター清掃、換気方法の工夫などは基本的かつ効果的な対策です。
2つ目は、ティッシュやマスクなどの消耗品の準備をすることや花粉症の治療にかかる通院費や薬代などの治療費を補う花粉症手当などがあります。
また、花粉の飛散が多い時期には、時差出勤やテレワークの活用も有効です。通勤時間帯のピークを避けることで花粉の曝露量を減らすことができます。
3つ目は、花粉症に対する健康教育などを行うことです。
これは、花粉症への正しい理解を深めることで従業員が各自で花粉症対策を行うことにつながるほか、適切な医療機関受診の促進にもつながります。
花粉症の時期は、市販薬で自己対応をする方も多いですが、適切な診断と処方により症状を安定させることが可能です。
企業として受診を後押しできるように健康教育等を行うことで、従業員の健康リテラシーが上昇し、早期治療につながります。
花粉症対策を通じた組織力向上
花粉症対策は季節限定の取り組みに見えるかもしれませんが、その本質は「従業員一人ひとりの不調に目を向ける組織文化づくり」にあります。
小さな不調に対しても丁寧に向き合う企業は、他の健康課題やメンタルヘルス対策にも柔軟に対応できる基盤を持っています。
また、従業員が自らの健康に関心を持ち、主体的にセルフケアを行う風土は、長期的な疾病予防や医療費抑制にも寄与します。
企業が健康を大切にする姿勢を示すことは、従業員のエンゲージメント向上や人材確保の面でもプラスに働きます。
花粉症という身近なテーマを切り口に、健康と経営が密接に関わっていることを伝え続けることが重要です。季節性疾患への対策を戦略的に行うことは、企業の成長を支える基盤づくりにつながります。
健康経営の実践は特別なことではなく、日常の健康課題に丁寧に向き合うことから始まります。
まとめ
花粉症は、多くの働く世代が抱える身近な健康課題でありながら、その影響は個人の不快症状にとどまらず、業務効率や安全性、さらには企業全体の生産性にも波及します。
特にプレゼンティーイズムという観点から見ると、花粉症対策は見えにくい経営損失を防ぐ重要な取り組みとなります。
企業が環境整備や制度面での支援、健康教育の機会を設けることは、従業員一人ひとりの症状緩和だけでなく、健康リテラシーの向上や主体的なセルフケアの促進にもつながります。
季節性の不調という身近なテーマに目を向け、小さな困りごとを見過ごさない姿勢こそが、健康経営の一歩です。花粉症対策をきっかけに、「健康を大切にする職場づくり」について改めて考えてみてはいかがでしょうか。
<参考>
・ 大久保公裕「的確な花粉症治療のために 第2版(PDF)」
・ ACTION!健康経営「『もっと知ろう!花粉症対策のこと』イベント開催レポート」
・ 経済産業省「花粉症対策について」
・ アレルギーポータル「主なアレルギー疾患」





















