高齢者の活躍を支える企業雇用対策の現状~65歳までの雇用義務化と70歳までの就業確保措置の進展~

高齢者の活躍を支える企業雇用対策の現状~65歳までの雇用義務化と70歳までの就業確保措置の進展~

国勢調査(2020年調査)をもとに国立社会保障・人口問題研究所が推計した、日本の将来推計人口は、2020年の1億2,615万人から、 2070年には8,700万人に減少することが予測されています。
また、65歳以上の人口割合は2020年の28.6% から一貫して上昇、2070年には38.7%になると推測され、ますます日本の高齢化が進んでいくとも考えられています。
厚生労働省では、2024年12月20日「令和6年『高年齢者雇用状況等報告』」の集計結果を公表しました。
今回の集計結果は、従業員21人以上の企業237,052社からの報告に基づき、高年齢者の雇用等に関する措置について、2024年6月1日時点での企業における実施状況等をまとめたものです。
主なポイントである「65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況」「70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況」「企業における定年制の状況」についてみていきましょう。

65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況

(1)65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況

高年齢者雇用確保措置(※1)を実施済みの報告をした企業は236,920社でした。
企業の内訳としては、企業全体で99.9%、中小企業では99.9%(※2)、大企業では100.0%でした。
大企業のみ昨年より0.1ポイント増加となりました。

※1
高年齢者雇用安定法第9条第1項に基づき、定年を65歳未満に定めている事業主は、雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、以下のいずれかの措置を講じなければならない。
① 定年制の廃止、②定年の引上げ、③継続雇用制度の導入

※2
本集計は原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、それにより0%となる数値については小数点第2位以下を切り上げ、100%となる数値については、小数点第2位以下を切り捨てとしている数値がある。

引用:厚生労働省「令和6年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」

(2)雇用確保措置を実施済みの企業の内訳

雇用確保措置の措置内容別にみると、定年制の廃止は9,247社で3.9%、定年の引上げは68,099社で28.7%、継続雇用制度の導入は159,574社で67.4%となりました。

定年の引上げは、昨年より1.8ポイント増加しています。
また、継続雇用制度の導入は昨年より1.8ポイント減少となりました。

(3)継続雇用制度の導入により雇用確保措置を講じている企業の状況

雇用確保措置を講じていると報告をした企業159,574社を内容別に見ると、希望者全員を対象とする継続雇用制度を導入している全企業で86.2%、中小企業では87.6%、大企業では71.1%でした。
昨年と比較すると、全企業では1.6ポイント、中小企業は1.5ポイント、大企業では3.0ポイント増加と、昨年より企業全体で継続雇用制度が普及してきています。
一方、対象者を限定する基準がある継続雇用制度を導入している企業(経過措置適用企業)は、全企業13.8%、中小企業12.4%、大企業28.9%でした。
全企業で昨年より1.6ポイント、大企業は昨年より3.0ポイントの減少となっています。

 

70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況

(1)70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況

70歳までの高年齢者就業確保措置※3を実施済みの報告をした企業は75,643社でした。
企業全体は31.9%(※4)、中小企業では32.4%、大企業では25.5%でした。
昨年と比べて、企業全体は2.2ポイント、中小企業は2.1ポイント、大企業は2.7ポイントの増加となっており、企業全体での70歳までの高年齢者就業確保措置が普及していることがわかります。

(2)就業確保措置を実施済みの企業の内訳

措置内容別に見ると、企業全体のうち、定年制の廃止は9,247社で3.9%、定年の引上げは5,690 社で2.4%、継続雇用制度の導入は60,570 社で25.6%、創業支援等措置(※4)の導入は136社で0.1%でした。
昨年比では、定年の引上げが0.1ポイント増加、継続雇用制度の導入は2.1ポイント増加、定年制の廃止と創業支援等措置(※5)の導入は昨年と変動なしとなりました。

※3
高年齢者雇用安定法第10条の2に基づき、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主または65歳まで の継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する 高年齢者について、次に掲げるいずれかの措置を講ずることにより、65歳から70歳までの就業を確保するよう努めなければならない。
①定年制の廃止、②定年の引上げ、③継続雇用制度の導入、④業務委託契約を締結する制度の導入、⑤ 社会貢献事業に従事できる制度の導入(事業主が自ら実施する社会貢献事業または事業主が委託、出資 (資金提供)等する団体が行う社会貢献事業)

※4
本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているため、内訳の積み上げが就業確保措置実施済み企業の割合に一致しない場合がある。

※5
高年齢者就業確保措置の就業確保に係る措置のうち、④業務委託契約を締結する制度の導入及び⑤社会貢献事業に従事できる制度の導入という雇用以外の措置を創業支援等措置という。

引用:厚生労働省「令和6年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」

 

企業における定年制の状況

65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は32.6%でした。
昨年より1.8ポイント増加となっています。

年代別内訳

定年

企業数割合

廃止

9,247社

3.9%

60歳152,776社

64.4%

61~64歳6,930社

2.9%

65歳59,693社

25.2%

66~69歳2,716社

1.1%

70歳以上5,690社

2.4%

定年を60歳とする企業は昨年より2.0ポイント減少、定年を61~64歳とする企業と定年を65歳とする企業、定年を70歳以上とする企業は昨年より増加しました。
また、定年制を廃止している企業と定年を66~69歳とする企業に変動はありません。

2025年4月、高年齢者雇用安定法の改正に基づく経過措置が終了し、事業者に対する「65歳までの雇用確保」の義務が完全に施行されます。
この改正により、定年年齢を65歳未満に設定している企業は、「高年齢者雇用確保措置」を講じることが法的に求められることになりました。
少子高齢化が進むなか、労働力の確保と経験豊富な人材の活用は、多くの企業にとって重要な課題となっています。
高齢者の就業確保措置への対応は、企業が社会的責任を果たすだけでなく、経営に新たな価値をもたらす可能性があります。
今後も、各企業の高齢者の活躍を支える取り組みが重要となるでしょう。

<参考>
・ 厚生労働省「令和6年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」
・ 厚生労働省「将来推計人口(令和5年推計)の概要」

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須賀 実咲株式会社ドクタートラスト 精神保健福祉士

投稿者プロフィール

大学で臨床心理、福祉を専攻し、福祉介護業界に勤めていました。自立支援や就労支援も経験し、生活での悩みや環境について強い興味関心があります。
日常の健康や不安に向き合える機会や、きっかけになれる情報を発信していきます。
【保有資格】精神保健福祉士
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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