2028年4月改正|遺族厚生年金の制度変更を解説——性別による給付格差はどう変わるか
- 2026/4/20
- 法改正

皆さんは、もし万が一配偶者が亡くなってしまった時の、経済面の保障について十分に知っていますか?
遺族厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金保険の被保険者が亡くなった場合に、その人によって生計を維持していた遺族が受給できる公的年金です。
現行の遺族厚生年金の制度は、1986年(昭和61年)開始以降、社会情勢に合わせて小さな見直しが行われてきましたが、実は未だに大きな男女不均衡があります。
筆者個人としては、公的な現行制度にこんなに大きな男女格差が残っていたのかと、非常に驚きを覚えました。
今回の改正は、2028年4月からスタートする予定で、「共働きが当たり前」になった今の社会に合わせて、数十年ぶりに制度の土台を大きく変えるものです。
要点を簡潔にお伝えしていきます。
「夫は外、妻は中」現行の制度設計
現行の遺族厚生年金の制度は、昭和の「夫が稼ぎ、妻が家を守る」という形を前提にしています。
そのため、子どもがいない夫婦の場合、夫を亡くした30歳以上の妻は一生涯受け取れる一方、妻を亡くした夫は55歳未満だと「働けるはず」とされ、1円も受け取れないといった大きな差があります。
しかも、55歳で男性が得られるのは遺族厚生年金を受け取れる権利だけで、実際に給付がスタートする年齢は60歳からです。
つまり、専業主夫の子なし男性にとって非常に厳しい設計になっていることがわかります。
この場合の子どもとは、18歳になった年度末までの子(または20歳未満で障害がある子)のことを指すため、子どもが成人していることが多い50代の夫にとっても他人事ではありません。
一方で女性の場合、子どもがいるか、30歳以上であれば一生涯給付してもらえる設計です。
ただし、若くして夫を亡くし子どももいなければ、「5年間限定」の給付となっています。
これはおそらく、再婚や就労による自立を促す目的があると考えられます。
5年が経過した時点で受給権そのものが消滅するため、30歳になっても遺族厚生年金の再開はありませんが、総合的にみて圧倒的に女性優位の制度だといえるでしょう。
現在のしくみ
| 本人の状況 | 給付期間 | |
| 女性 | 子あり | 無期給付(再婚しない限り一生涯) |
| 子なし・30歳未満で死別 | 5年間の有期給付 | |
| 子なし・30歳以上で死別 | 無期給付(再婚しない限り一生涯) | |
| 男性 | 子あり | 子が18歳になるまで |
| 子なし・55歳未満で死別 | 給付なし | |
| 子なし・55歳以上で死別 | 60歳から無期給付 |
新設計は5年間の集中支援
改正後は性別の区別をなくし、男女とも同じ条件で年金を受け取れるようになります。
子どもがいない世帯においては、パートナーを亡くした際の給付が、「原則5年間」という形に変わります。
これは、悲しみの中でこれまでの生活を維持しつつ、自立に向けた準備を整えるための「生活再建期間」と位置付けられています。
さらに、期間が5年間に限定される代わりに、最初の5年間の年金額は現在の約1.3倍に増額され、これまであった年収制限(850万円未満)がなくなり、より多くの人が受け取れるようになります。
また、18歳年度末までの子(または20歳未満で障害がある子)を育てている場合はさらに手厚く、子どもが育った後も5年間は遺族厚生年金を受け取ることができるようになります。
大学進学など支出が重なる時期の負担も考慮された設計と考えられ、今回の改正で強化される部分の一つです。
加えて、5年経っても働けない障害状態にある方や、低収入の方は5年目以降も給付が継続されるというセーフティーネットが用意されています。
これまで対象外だった60歳未満の夫も給付を受けられるようになるため、厚労省の推計では、年間で約1万6千人の男性が新たに救われることになります。
共働き世帯や、妻が収入の主軸の世帯において妻が亡くなった場合に、夫が再就職や生活再建をするための準備期間が5年間、公的に保障されることになります。
2028年4月からのしくみ
| 本人の状況 | 給付期間 | |
| 男女共通 | 子あり | 子が18歳になるまで+その後5年間 |
| 子なし・20歳~60歳未満で死別 | 5年間の有期給付 | |
| 子なし・60歳以上で死別 | 無期給付(再婚しない限り一生涯) |
20年かけた「段階的」な移行~今の生活設計を壊さない配慮~
「いきなり一生涯もらえると思っていた年金がなくなるのは困る」という不安に応えるため、国は20年という長い時間をかけてゆっくりと制度を切り替えていきます。
まず、改正日よりも前から受給している方はそのままの仕組みが維持されます。
また、2028年度時点で40歳以上になっている子どものいない女性も、現行と同じく一生涯の給付(無期給付)の対象となる見込みです。新たに対象となる30代の女性は推計で年間約250人です。
まとめると、下記に該当する方は今回の改正の影響は受けず、影響がない方となります。
・ 改正前から遺族厚生年金を受け取っていた方
・ 60歳以上で死別された方
・ 2028年度に40歳以上になる女性
また、18歳年度末までの子どもを養育する間にある方の給付内容は現行制度と同じで見直しの影響はありません。ただし、こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された「有期給付+継続給付」の対象となります。
この改正は、単なる減額ではなく、「今の時代の共働き夫婦にとって、本当に必要な時に、より手厚く支える」という前向きなアップデートといえるでしょう。
<参考>
・ 厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第13遺族年金」
・ 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」





















