30代の筋力トレーニング実施率はわずか16.2%|健康寿命延伸のために若いうちから始める筋活習慣

近年、「健康寿命の延伸」が重要な社会課題として注目されています。
平均寿命が延びる一方で、健康上の問題なく自立して生活できる期間をいかに長く保つかが課題となっているためです。
また、高年齢従業員の労働災害防止が企業の努力義務として求められる中、転倒や腰痛などの対策は企業にとっても重要性を増しています。
こうした課題を踏まえ、働くすべての年代に意識していただきたいのが“筋肉量の維持”です。
本記事では、筋肉の役割や重要性、若いうちから取り組みたい「筋活習慣」について解説します。

筋肉の役割と健康とのかかわりあい

筋肉は体を動かすだけでなく、健康を支えるさまざまな働きをしています。
筋肉量が保たれているとエネルギーを消費しやすくなり、肥満や生活習慣病の予防につながります。
年齢とともに体重が減りにくくなるのは、筋肉量が加齢により減少することも一つの要因です。
また、筋肉の力によって姿勢が安定し、つまずきや転倒の予防にも役立ちます。
筋肉量が低下すると、段差でつまずいたり、重い物を持った際に腰を痛めたりと、労働災害のリスクも高まります。
特に高齢者の転倒は、その後の活動量低下や要介護リスクにもつながるため注意が必要です。
個人の健康だけでなく、職場の安全対策の観点からも、筋肉量の維持は重要です。

筋活を始めるのに“早すぎる”ことはない

筋肉量は25~30歳をピークとして、年間1~2%ずつ減少していくといわれています。(※1)
そのため、高齢期になって筋肉量低下を自覚してから対処するのではなく、若いうちから筋肉量維持のための習慣を持つことが重要です。
皆さんは、日頃どのくらい体を動かせているでしょうか?
厚生労働省が推奨する身体活動量を満たしている人は、わずか47.9%。(※2)
つまり、約2人に1人は運動不足の状態にあるというのが現状です。
この「身体活動量」とは、安静時の約3倍以上の強さ(3メッツ以上)の活動を指し、たとえば歩行や家事、軽い運動などが含まれます。
成人の場合、こうした活動を1日60分程度実施することが推奨されています。
さらに、運動習慣がある人の中でも、筋力トレーニングに取り組めている人は多くありません。
週に1回以上筋力トレーニングを実施している人の割合は、30歳代で16.2%、40歳代で10.7%、50歳代で14.1%にとどまっています。(※3)
「それなりに動いている」と思っていても、実際には必要な運動量に届いていないケースは少なくありません。

今日からできる筋活習慣 運動は“強度”を意識しよう

筋肉量を維持・向上させるには、筋肉に負荷をかける「筋力トレーニング」が効果的です。
筋トレはボディメイクをしている人が行うものというイメージがあるかもしれませんが、生活習慣病予防や、いきいきとした毎日を送るためにも欠かせない運動です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、筋肉量の維持や生活習慣病予防のために、週2~3回の筋力トレーニングが推奨されています。(※4)
適度に負荷をかけられるのであれば自重のトレーニングでも問題なく、自宅で行うことができる種目としては、腕立て伏せや腹筋、スクワット、マウンテンクライマー、バーピーなどがおすすめです。

マウンテンクライマー

 

バーピー

下半身の筋肉を中心に、可能であれば色々な部位のトレーニングをまんべんなく行うようにしましょう。
ただし、持病や痛みがある際はくれぐれも無理をしないようにし、運動の強度や実施可否については主治医に相談するようにしてください。

トレーニングを続けていく中で普段のメニューが楽にこなせるようになったら、ペースをゆっくりにして筋肉が緊張する時間を長くする、ペットボトルなど重りを持って行う、セット数を増やすことで負荷を高められます。
また、筋肉の材料となるたんぱく質をしっかり、正しく取ることも心掛けましょう。
たんぱく質は1食でまとめて取るよりも、1日3食に分けて取るほうが効率よく筋肉づくりに利用されます。
日本人を対象にたんぱく質摂取量を調査した研究では、3食の中で朝食が最も少なく、次いで昼食、夕食が最も多いという結果が示されています。(※5)

また、高齢女性を対象とした研究によると、朝食時のたんぱく質摂取は、その他の時間帯と比較して筋肉量を増加させやすいことが示唆されています。(※6)
まずは、特にたんぱく質が不足しがちな朝食に、卵や納豆、ヨーグルトや牛乳などを追加するのがおすすめです。
さらに、たんぱく質だけでなく、エネルギー源となる糖質や、たんぱく質の代謝を助けるビタミンB6なども不足しないよう意識しましょう。
糖質を極端に制限してたんぱく質を積極的にとるといった食事バランスでは、身体のエネルギー源となる糖質が足りず結果として筋肉を分解してしまいます。
ビタミンB6はバナナやアボカド、さつまいもなどに多く含まれています。
また、鶏肉や赤身の肉・魚はたんぱく質もビタミンB6も豊富に含む食品なので、筋肉づくりを目指すのにおすすめの食品です。

年齢とともに減っていきやすい筋肉を保つためには、筋肉の材料となる栄養素をしっかり取ることに加え、無理のない範囲で適度に負荷をかけた筋力トレーニングを定期的に行うことが大切です。
企業としても、従業員が無理なく体を動かせる環境整備や、正しい知識の提供を通じて、それぞれの取り組みをサポートすることが求められます。
将来の自分と職場の安全のために、今日からできる「筋活習慣」を始めてみてはいかがでしょうか。

<参考>
※1 荒井秀典「第56回大会特別講演 世界のサルコペニア研究の最新知見」(『日本食生活学会誌』 2018年29巻2号81~84頁)
※2 公益財団法人明治安田厚生事業団、公益財団法人笹川スポーツ財団「活動量計による身体活動・スポーツの実態把握調査2024」
※3 公益財団法人笹川スポーツ財団「スポーツライフ・データ2020」
※4 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
※5 Kentaro Murakami、Nana Shinozaki、M Barbara E Livingstone、Aya Fujiwara、Keiko Asakura、Shizuko Masayasu、Satoshi Sasaki「Characterisation of breakfast, lunch, dinner and snacks in the Japanese context: an exploratory cross-sectional analysis」(『Public Health Nutrition』2022年25巻3号689~701頁)
※6  Shinya Aoyama、Hyeon-Ki Kim、Rina Hirooka、Mizuho Tanaka、Takeru Shimoda、Hanako Chijiki、Shuichi Kojima、Keisuke Sasaki、Kengo Takahashi、Saneyuki Makino、Miku Takizawa、Masaki Takahashi、Yu Tahara、Shigeki Shimba、Kazuyuki Shinohara、Shigenobu Shibata「Distribution of dietary protein intake in daily meals influences skeletal muscle hypertrophy via the muscle clock」(『Cell Reports』2021年36巻1号109336)

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小林 彩実株式会社ドクタートラスト 管理栄養士

投稿者プロフィール

大学で栄養学や食物学を学び、管理栄養士の資格を取得。「多忙な人にも健康を意識してほしい」の想いから産業保健業界へ。食事はもちろん、ながら運動やインナーマッスルトレーニングなど、運動セミナーも多数実施している。正しい知識をわかりやすく具体的に伝える姿勢が人気。
このほか、特定保健指導や執筆活動にも広く携わる。
【保有資格】管理栄養士、第一種衛生管理者、健康運動実践指導者、人間ドック健診情報管理指導士、健康経営エキスパートアドバイザー
【詳しいプロフィールはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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