管理栄養士が知る健診数値改善のポイント~結果がなかなか良くならない人へ~

皆さんは健診結果を見たときに「せっかくがんばったのに全然改善していない……」とがっかりしたことはありませんか?
管理栄養士として年間100人以上の保健指導を担当するなかでもそういったお声をよく伺います。
もしかするとその原因は、数値改善の取り組みが少し違う方向性だったのかもしれません。
この記事では、意外と知られていない健診結果の改善方法のポイントについて改めてまとめてみました。

運動って結局あんまり効果ないの?

「減量のために運動したほうが良い」ということは皆さんご存じだと思います。
ただ「歩くようにしたけど体重が減らなかった」「筋トレをしたら逆に体重が増えた」という方はいませんか?
減量のために、効果的な運動を行うにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。

① 脂肪燃焼を目指すなら有酸素運動が効率的

同じ時間運動するなら、ウォーキングなどの有酸素運動がカロリー消費に優れています。
例えば、体重60kgの人が30分ウォーキングする(普通の速度、4.3メッツ)と約135kcal消費できますが、同じ時間自重トレーニング(3.5メッツ)を行っても約110kcalとなります。
実際に取り組んだことがある方ならわかるかもしれませんが、筋トレ30分というのはなかなかハードです。
取り組みやすさや運動の時間に対する消費カロリーで考えると有酸素運動の方が減量には向いているといえます。

② できるのであれば筋トレもプラス

筋トレは、基礎代謝を上げ、痩せやすい体を作るために欠かせません。
有酸素運動と組み合わせれば、より効果的に体脂肪を減らすことができます。
組み合わせて行う際には、筋トレ後に有酸素運動を行うと、エネルギーの消費効率が高まります。

③ 運動の強度がカギ

「なんとなく運動する」のではなく、強度を意識することが大切です。
ウォーキングであれば、大股で歩き、腕を大きく振るなどして、心拍数を上げてみましょう。
有酸素運動の適切な強度としては、運動後の心拍数が、最大心拍数(220-年齢)の50~75%程度になることを目指すとよい、といわれています。
実際に計算、計測して強度が足りているか確認してみましょう。

筋トレの場合は、がんばって最大12回できる位のトレーニングを8~12回×3セットが理想です。
自重だとなかなか12回しかできないくらいのトレーニングはないかもしれないので、その際はスピードをゆっくりにする、ペットボトルを持つなどの工夫をして強度を高められると、筋肉量の増加が期待できます。

「筋肉が増えると体重が増えてしまうのでは?」と気になると思いますが、筋力トレーニングを行うと中性脂肪を分解する成長ホルモンの分泌が促進され、脂肪が分解されやすくなります。
また「筋肉が重いから、筋肉がつくと体重が重くなる」といわれます。
しかし、同じ体積で比較した場合、筋肉は脂肪の120%程度の重さですが、実際の体重で考えると大きな差ではありません。
相当に強度の高い筋トレをしていない限り、カロリー消費や代謝向上による減量の方が大きな割合になりますので安心してトレーニングに取り組んでいただきたいです。

なかなか減らない悪玉コレステロール

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い方でよく聞くのが「体重を減らしたのにLDLコレステロールが減らない」という嘆きです。
減量をがんばったのに数値が改善しない、というのはやるせないですよね。
体重とまったく関係がないわけではありませんが、LDLコレステロールの数値改善のためには食事の質が非常に重要です。

① なぜ食事の質が重要なのか

具体的には、常温で固体の動物性の脂の摂取量が多いと、LDLコレステロールの数値が悪くなりやすくなります。
豚バラ肉やひき肉、洋菓子を食べる機会が多い方は、それらを鶏肉や赤身肉、和菓子に変えるのがおすすめです。
また、LDLコレステロールが高い方は食事からの摂取量を200㎎にすることが推奨されています。
サイズによりますが、鶏卵1個あたりにコレステロールが大体200㎎以上含まれていますので、LDLコレステロールが高い方にとっては毎日卵1個だと少し多いかもしれません。
他にも、マヨネーズやカスタードなどもコレステロールを多く含む食品です。
一日の中で、動物性の脂(飽和脂肪酸)やコレステロールを多く含む食品を重ねて摂取しないようにすると上手にバランスがとれるのではないでしょうか。

② 食物繊維の多い食品を摂取

またLDLコレステロールが高い方は、食物繊維を多く含む食品(玄米、雑穀、納豆、野菜、海藻、きのこ、こんにゃくなど)や、不飽和脂肪酸の多く含む青魚を積極的に取り入れるようにしましょう。
ただし、体内のコレステロールは約7~8割が肝臓で合成される内因性のもの、残りの2~3割が食事から摂取される外因性のものといわれています。
つまり、体内の合成量が多く遺伝的に数値が高い方というのも一定数いらっしゃいます。
生活習慣の改善を頑張ってもなかなか数値が正常にならない場合は、家族性高コレステロール血症など遺伝的要因が関連している可能性がありますので、医師に相談されるのが良いでしょう。

健康を意識してお酒の選び方を気にしているのに……

最近、○○オフのお酒増えていますよね。
そういった商品の活用はおすすめですが、「オフだから大丈夫」とはいかないケースもあります。
具体的には尿酸値が高い方、血糖値が高い方です。
それぞれプリン体オフや糖質オフのお酒を選ばれる方が多いと思いますが、アルコールそのものが尿酸値や血糖値を上げることがわかっています。
お酒を飲むのであれば、なるべくは「プリン体オフ」や「糖質オフ」の商品を選んでほしいのですが、それだけでなく飲酒量の適正化や休肝日の設定などもあわせて行いましょう。

「健診結果がなかなか改善しない」とお困りの方はぜひ参考にしてください。

<参考>
・ 今川泰憲著、石井直方監修『トレーニングのプロが本気で考えた効果絶大自重筋トレ』(コミックス出版、2021年7月)
・ 一般社団法人日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
・  一般社団法人日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会編『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』(診断と治療社、2018年12月)
・ 厚生労働省e-ヘルスネット「アルコールと糖尿病」

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小林 彩実株式会社ドクタートラスト 管理栄養士

投稿者プロフィール

大学で栄養学や食物学を学び、管理栄養士の資格を取得。「多忙な人にも健康を意識してほしい」の想いから産業保健業界へ。食事はもちろん、ながら運動やインナーマッスルトレーニングなど、運動セミナーも多数実施している。正しい知識をわかりやすく具体的に伝える姿勢が人気。
このほか、特定保健指導や執筆にも広く携わる。
【保有資格】管理栄養士、第一種衛生管理者、健康運動実践指導者、人間ドック健診情報管理指導士、健康経営エキスパートアドバイザー
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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