夏から秋にかけて日本にやってくる台風。今年もいくつか日本列島に上陸していますが、気圧や天気の変化により体調を崩してしまう方がいます。
「そういえば雨の日にだるくなることが多いかも」「天気が悪い日は頭痛がする」など感じる方は、「気象病(天気痛)」かもしれません。
天気が変わりやすいこの時期の体調不良、「気象病」について詳しく解説します。
天気の変化に左右される「気象病」とは?
雨や雷、台風など天気が悪い時は、低気圧が大きく関わっています。気圧とは大気の状態によって上下する、空気による圧力のことです。
私たち人間は常に空気による圧力を受けており、身体の内側から同じ力で押し返し、気圧の影響を打ち消しているといわれています。
日々変化する気圧の変化を感知するセンサーの役割を持っているのが内耳であり、内耳から自律神経に伝達されます。
内耳にある前庭神経が過剰に興奮すると自律神経のバランスが乱れます。自律神経には交感神経と副交感神経の2種類ありますが、交感神経が優位になりすぎると頭痛やめまいなどの症状が出ます。逆に副交感神経が優位になりすぎると、倦怠感や眠気などが生じやすくなるといわれています。
台風は急激な気圧の変化を起こす大型の低気圧です。内耳にいつも以上に負担がかかる状態となるため、普段気象病が出ない方でも体調を崩してしまう場合があります。
また、女性は男性より内耳が敏感の方が多く、気圧の変化を受けやすいといわれています。内耳の特徴以外にも、睡眠不足や食生活の乱れがある方、運動不足の方など、生活習慣の乱れがあると気象病を起こしやすい傾向があります。
気象病とはどんな症状?
自律神経の乱れに関連する症状のため、気象病の症状は多岐にわたりますが、以下のような症状を引き起こす方が多いです。また、自律神経の乱れはメンタル不調にも繋がる場合があります。
【症状】
頭痛、めまい
関節痛、肩こり、腰痛
古傷の痛み
耳鳴り、嘔気
倦怠感、気分の落ち込み
眠気、頭がぼんやりする
不安感、イライラする など
自分自身が天気で不調を起こしやすいかどうかチェックリストで確認してみましょう。チェックが多い方は気象病になりやすいため、台風や天気の悪い日は前もって体調管理をすることが重要です。
気象病の症状を予防しよう!
気象病を予防するには「自律神経をできるだけ整える行動をとる」ことが重要です。天気は自分の力で変えることはできませんが、天気の影響を受けにくくする行動をとることはできます。
下記取り組めそうなことからぜひ実践してみましょう。そして習慣化することが大切です。
朝日を浴びる
朝起きたらまずはカーテンを開けましょう。朝日は体内時計のリズムをリセットしてくれます。また、睡眠を促すホルモンも生成してくれるので、その日の夜の睡眠の質もあがります。メンタルヘルスの不調にも非常に効果的です。
窓から差し込む光ではなく、直接日の光を浴びるともっと効果が高まるので、できれば外に出て朝日を浴びると良いでしょう。
食生活を改善する
自律神経は私たちの行動1つで整ったり乱れたりしますが、その中でも食生活は大きな影響を与えます。自律神経を整えるため、日頃から食生活を意識しましょう。
~自律神経を整える食品~
・タンパク質:魚や肉類など
・ビタミンC:野菜や果物
・食物繊維:野菜やキノコ、海藻類
・GABA(脳や神経の中で働く神経伝達物質でリラックス効果がある):味噌や漬物などの発酵食品、トマトやカボチャなどの緑黄色野菜、玄米など
・トリプトファン(幸せホルモンといわれている「セロトニン」の原料となる成分):鶏むね肉やレバー、大豆製品、バナナなど
お風呂につかる
入浴により血行が促進されて身体が温まると、自律神経にも良い作用をもたらします。お湯の温度が熱すぎると交感神経が優位となり心身を興奮させてしまうため、38~40度程度のお湯に15~20分つかりましょう。
耳のケアをする
内耳の血行を良くすると症状が緩和する場合があります。また、気象病用の耳栓なども売られています。耳の内側にかかる気圧をコントロールできるので、症状がひどい方は購入して試してみましょう。
~耳のマッサージ方法~
① 両方の耳たぶを指でつまみ、軽く上・下・横に引っ張り5秒ずつキープする
② 同じように耳たぶをつまんで、優しく後ろにまわす
③ 耳を包むように折り曲げて5秒キープ
④ 耳全体を手のひらで覆い、ゆっくり円を描くように後ろに5回まわす
⑤ 3回程度繰り返す(朝昼夕と1日3回行う)
症状を和らげるツボを刺激する
気象病の症状を感じている時に、ツボを押すことで和らぐ場合があります。強く押し過ぎないように注意しましょう。
①内関(ないかん):めまいやふらつきの症状に効く
手首の内側にある付け根から肘方向に指3本分離れたところを優しく親指をあてる。息を吐きながらゆっくり押し、息を吸いながらゆっくり力を緩める。6~8回繰り返す。
②厲兌(れいだ):胃腸の働きを整える、むくみをとる
足の人差し指の爪の外側(中指側)に指をあてる。息を吐きながらゆっくり押し、息を吸いながらゆっくり力を緩める。
不調がひどい場合は受診する
低気圧による体調不良に漢方が効く方もいます。症状がひどい方はこれ以上悪化する前に、一度医師に相談しましょう。
「明日天気が崩れるかも」「体調悪化したらどうしよう」など天気予報を見て、天気が崩れることを知ると逆にストレスになってしまう……と思われる方もいるかもしれません。
あまりネガティブに捉えすぎず、事前に知ることで「今日は身体に良い食事をとろう」「早めに寝て睡眠時間を十分確保しよう」など天気予報をポジティブに活用することをおすすめします。
<参考>
・ 一般財団法人京浜保健衛生協会「『気象病』に備える」
・ 佐藤純『ビジネスパーソンのための低気圧不調に打ち勝つ12の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2021年6月)