「無糖のお酒だから大丈夫」は間違い!管理栄養士が解説するアルコールと血糖値の関係

年度の変わり目が近づき、これから歓送迎会シーズンを迎え、どうしてもお酒を飲む機会が増えてきますね。
特定保健指導などの面談で、「血糖値を気にしてハイボールなど糖質の入っていないお酒を選ぶようにしています」という方も多く、近年は健康志向の高まりから糖質オフ・フリーのお酒も増えています。

しかし、「糖質0だから大丈夫!血糖値には影響がない」というわけではないんです。
改めて「アルコールと血糖値の関係」を確認していきましょう。

血糖値とは

血糖値とは血液中の糖の濃度のことです。
一般的な健康診断では、「空腹時血糖」と「HbA1c」の2つの項目を検査しています。
人間ドック学会の定める「異常なし」の数値は、空腹時血糖99mg/dl以下、かつHbA1c5.5%以下です。(※1)

血糖値の数値悪化を放置してしまうと、糖尿病のリスクが高くなります。
糖尿病は症状が進行すると、神経障害や失明などの合併症を引き起こす、透析が必要になる、などのリスクがある非常に危険な病気です。
2017年に独立行政法人労働政策研究・研修機構によって行われたインターネット調査(※2)によると、「勤め先(雇用者の疾患罹患時に在籍した会社)で治療(経過観察を含む)していた主な疾患」では、糖尿病の割合が最も高く、34.3%でした。
糖尿病は働く世代にとって非常に身近な病気といえます。

今回は、特に血糖値とアルコールの関連から気を付けるべきポイントをお伝えしますが、日頃の糖質の摂取量や食事のタイミングなどもあわせて留意してください。

血糖値とアルコールの関係

アルコールそのものに血糖値を上げる働きはありません。
しかし、アルコールは肝臓にあるグリコーゲン(糖質の体内での貯蔵形態)のブドウ糖への分解を促進させるため、アルコールの摂取量が多いと血糖値上昇に間接的に作用してしまうということになります。
さらに、アルコールは「インスリン」という血糖値を下げる働きのあるホルモンの分泌を抑制することも明らかになっています。

これらのことから、糖質を含まないお酒でもアルコールによって血糖値が上昇しやすくなり、糖尿病のリスクを高めるということがいえます。

お酒との上手な付き合い方

ここまで飲酒量と血糖値の関連について解説してきました。
適切な量の飲酒(純アルコール20g~25g/日程度)であれば、糖尿病の発生リスクを抑えると報告されています。(※3)
ただし、普段お酒を飲まない方に糖尿病リスク低減のために純アルコール20g程度を目指して飲酒することが推奨されているわけではありませんので、ご注意ください。

また、2024年2月19日に厚生労働省より公表された「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(※4)」によると、男性の脳卒中(出血性)や大腸がんは、1日あたり純アルコール20g以上の飲酒をすることで発症の可能性が上がる旨を示しています。
女性に関しては、一般的に男性と比較して、体内で分解できるアルコール量が少ないことや女性ホルモンの働きにより、アルコールによる身体への影響が大きく表れる可能性があります。
女性では、純アルコール量11g/日以上で脳卒中(脳梗塞)、14g/日以上で乳がんが、それぞれ発症リスクが上がるとされています。

ですので、血糖値への影響という観点では純アルコール20~25g程度を目標にするのが良いですが、その他の疾患や体質、性別を考えると男性では純アルコール20g/日以内、女性ではその半分程度を目安とするのが理想的です。
また1日あたりの飲酒量を制限するだけでなく、お酒を全く飲まない「休肝日」を最低週に2回は設けるようにしましょう。

純アルコール20ℊ
※女性の場合はこの半分程度が目安

ここまで、アルコールと血糖値の関係について解説してきました。
糖質ゼロのお酒でも、アルコールの働きで血糖値が上がりやすくなりますので、お酒を飲む際は、純アルコール20gを目安に適量を心がけていただければと思います。

<参考>
※1 公益社団法人日本人間ドック学会「判定区分 2024年度版
※2 独立行政法人労働政策研究・研修機構「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(WEB患者調査)
※3 Li X, Yu F, He J et al:Association between alcohol consumption and the risk of incident type 2 diabetes: a systematic review and dose-resp
※4 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン

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小林 彩実株式会社ドクタートラスト 管理栄養士

投稿者プロフィール

大学で栄養学や食物学を学び、管理栄養士の資格を取得。「多忙な人にも健康を意識してほしい」の想いから産業保健業界へ。食事はもちろん、ながら運動やインナーマッスルトレーニングなど、運動セミナーも多数実施している。正しい知識をわかりやすく具体的に伝える姿勢が人気。
このほか、特定保健指導や執筆にも広く携わる。
【保有資格】管理栄養士、人間ドック健診情報管理指導士
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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