「はしか」って怖いの?なぜ行動情報が公開される?企業の人事担当者、衛生管理者に知ってほしいこと
- 2024/3/22
- 健康管理
2024年3月現在、はしかの感染者が全国で相次いでいます。
はしかは医学的には「麻疹(ましん)」と呼ばれる、ウイルスによる感染症です。
日本では、一時大きな流行が見られたものの、予防接種の機会提供より患者数は激減、2015年3月にWHO西太平洋地域事務局から、はしか排除状態にあると認定されました。
ワクチン接種の際に名前を聞きこそすれ、「はしか流行」というニュース自体は久しぶりに、または初めて聞いた方もいるのではないでしょうか。
一方、2022年には世界で、はしかの感染者数が増加しました。
これは新型コロナウイルスの流行が受診・検査体制に影響を与え、子どもたちがワクチンの接種を受けられなかったことが理由であると推測されています。
新型コロナウイルス感染症による渡航制限も撤廃されたことで、海外渡航者や、海外からの旅行客も増え、日本国内ではしかに感染するリスクは上昇しています。
今回は、はしかの症状や、なぜニュースなどの報道ではしか感染者の行動情報が公開されているか、職域におけるはしかの感染予防対策などをわかりやすく紹介します。
はしかとは
はしかとは、麻疹ウイルスによって引き起こされる全身感染症です。
ウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染であり、その感染力は非常に強いといわれています。
はしかの予防方法
はしかはマスクや手洗いのみで予防はできず、ワクチン接種が最も有効とされています。
現在は区市町村が子どもを対象に2回ワクチンを接種の実施をしています。
過去、ワクチンを接種したことがあるかどうかは母子手帳で確認ができますが、予防接種歴が不明の場合はウイルスの抗体の確認や予防的な接種が可能です。お住まいの区市町村によっては大人でもワクチンの助成を受けられることもあるので、まずは調べてみましょう。
はしかの症状
はしかの典型的な症状は、発熱、全身の発疹、咳や鼻水、目の充血などの風邪症状です。
感染すると約10~12日間の潜伏期間後に38℃程度の発熱や咳、鼻水といった風邪症状が現れ、口の中の頬の粘膜に小さな(約1mm程度)の白い「コプリック斑」と呼ばれる発疹が観察されることもあります。2~4日発熱が続いたあと、39℃以上の高熱と全身に発疹がみられます。
全身の感染に対する抵抗力の低下により、肺炎や中耳炎も生じやすく、1,000人に1人の割合で脳炎の発症がみられるほか、死亡する割合も1000人に1人といわれています。
なぜ感染者が出ると、こんなに細かく行動情報が公開されるのか
感染力の強さと長さ
はしかに感染者の行動歴が自治体から詳しく発信され、びっくりした方もいるかもしれません。
これは、免疫を持っていないとほぼ100%感染、一度感染して発症すると一生免疫が持続するといわれるほど、はしかの感染力が強いことによります。
ウイルスは浮遊中や物質の表面で最大2時間感染力をもち、基本再生産数(1人の感染した人が平均して何名にうつすかと推定した値)はインフルエンザ2~3、おたふくかぜ4~7に対して、はしかは12~18です。
ワクチン接種を受けておらず抗体が少ないなど免疫がなければ、飛行機や電車、コンサート会場など同じ空間にいるだけで感染し発症してしまう危険があるのです。
さらに、はしかの怖さの一つとして、潜伏期間の長さがあります。
発疹が現れる4日前から、発疹がなくなった後4日という期間にわたり感染力を持ちます。
合併症の可能性
はしかは、ウイルスそのものに有効な治療はありません。
感染すると1週間以上高熱が続くうえに、感染者の30%に合併症をきたす可能性があるとされています。
先進国であっても1,000人に1人は死亡する、10万人に1人程度亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる中枢神経疾患を発症します。
また、妊娠中に感染すると、肺炎等合併症が生じやすいほか、胎児が感染すると流産や早産の原因となってしまいます。
妊娠中の方はワクチン接種を受けることができないため、はしかが流行している場合は外出を避けるなどして人混みに近づかないようにしましょう。
国立感染症研究所感染症疫学センターでは「麻疹発生時対応ガイドライン〔第二版:暫定改訂版〕」を作成しており、発病者を最小限に食い止めるため、行動情報が共有され、二次症例に備えるようにしています。
企業でできること
企業としては、「どこまでフォローを行うか」を検討しておきましょう。
はしかを含め、職域における感染予防対策は不可欠とされています。
経済産業省は「健康経営優良法人認定制度」の評価項目として、職場内の感染症予防に関する取り組みがあります。
具体的には、「麻しん風しん等の予防接種の補助」、「予防接種の就業認定や有休の特別休暇の付与」、「健康診断時に麻しん・風しんの抗体検査の実施」、「ワクチンに対する社員の知識を深めるための研修の実施」などが挙げられます。
はしかの感染予防のための対応策として、参考になるでしょう。
ワクチン接種は義務でもありませんし、抗体検査の費用補助を行ったとしても、その結果は個人情報となります。
不利益な取り扱いとならないようご注意ください。
どこまでフォローするか、職場で感染者が発生したらどうするかなどは、衛生委員会等で検討しておきましょう。
<参考>
・ 国立感染症研究所「海外の麻疹―2022年の流行状況について」
・ 厚生労働省「麻しんについて」
・ 東京都感染症情報センター「麻しんQ&A」
・ 厚生労働省検疫所FORTH「麻しんについて(ファクトシート)」