子宮頸がんワクチンのキャッチアップ接種はラストチャンス?
- 2024/8/9
- 助成金
若年層の女性の罹患率が高い子宮頸がんはワクチンで予防ができるがんです。
定期接種は小学6年生~高校1年相当の女性ですが、接種を逃した方(1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性)を対象にしたキャッチアップ接種も行われています。
この子宮頸がんワクチンのキャッチアップ接種が2025年3月に終了します。
ワクチンは接種年齢や種類によっては、最大で3回接種する必要があり、3回目の接種は1回目の接種の6か月後に受けなくてはならないため、9月末までに1回目の接種を終えなければすべて公費(原則自己負担なし)での接種はできません。
つまり、今年の夏がラストチャンスです。
改めて、子宮頸がん、キャッチアップ接種、企業としてできることについての情報をお伝えしていきます。
子宮頸がんとは
子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんでHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因です。
日本で年間約1.1万人が罹患しており、子宮頸がんが原因で約2,900人が亡くなっています。また、25~40歳までの若年層の女性における死亡率の高いがんの第2位です。
子宮頸がんは早期にはほとんど自覚症状がなく、数年から数十年かけて進行していきます。
HPVは性的接触のある女性であれば50%以上が一度は感染するといわれている一般的なウイルスです。
100以上の種類があるものの、そのうち特に子宮頸がんに大きくかかわるウイルスの種類があることもわかっているため、ワクチン接種により予防が可能です。
ワクチン接種を行うのは性交渉前がもっとも望ましいとされるため、日本では公費による対象年齢は小学校6年~高校1年相当の女性が対象です。
そして、子宮頸がんのワクチン接種の有無に関わらず、20歳以降は2年に1回定期的な検診を受けることが大切です。
なお、子宮頸がんの検査結果では2%程度が「要精密検査」になるため、その場合は必ず婦人科医療機関を受診してください。
要精密検査の場合、必ずがんになるというわけではなく、がんになるまで段階があります。子宮頚部が異形成と呼ばれる、がんに進行する確率が高い状態や悪性と良性の境界にある状態である段階で見つかることもあります。
異形成の場合は治療をすることなく自然治癒することもありますが、がんになる可能性もあるため、受診間隔が3~6か月ごとに受診が必要とされています。
つまり、子宮頸がんの予防のためにはワクチンと検診の両方が重要です。
キャッチアップ接種とは
対象者は下記2つを満たす方です。
・平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性
・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない※
※過去に接種したワクチンの情報(ワクチンの種類や接種時期)については、母子健康手帳や予防接種済証等でご確認ください。
出所元:厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~」
接種できるワクチンは現在3種類あります。
それぞれ感染を防ぐ効果も違いますが、50~90%という高い予防効果があります。
自費で受けるとなると1回あたり1~3万円程度となり、3回接種となると非常に高価です。そのため、ワクチンが公費で受けられれば経済的な負担が軽くなります。
厚生労働省にて5月22日に開催された、第60回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会では、HPVワクチンの接種が議題となりました。
接種対象者と保護者への調査が行われた結果、接種対象者本人の約4割がHPVワクチンの存在を「知らない」と回答しており、認知度が一部に限られている可能性もあります。
キャッチアップ接種の対象者は、住民票のある市町村からお知らせが届いていますが、お知らせをなくした方もいるでしょう。その場合は市町村の窓口に相談ください。
また、過去に受けた接種回数や時期により、接種方法が異なる場合もあります。
不明な点があれば、母子健康手帳を確認して、市町村や医療機関へ相談ください。
企業としてできること
ワクチン接種を逃した方の公費による接種はラストチャンスが近づいてきました。
HPVワクチンは子宮頸がんだけではなく、肛門がん、膣がんの予防にも効果があります。
HPVワクチンは一時期打ち控えもあったため、過去の情報のまま、アップデートすることなく、なんとなく「怖いものだ」と考えている人もいるかもしれません。ただ、情報を得たうえで、接種するかしないのかの選択を行える状態が望ましいです。
企業としても、さまざまなワクチンへの考え方を持つ社員がいるため、情報共有を行う際に、強制しているように受け取られてしまう可能性もあり、難しさを感じるかもしれません。
そこで、厚生労働省のキャッチアップ世代に向けたパンフレットを社内に設置して、「キャッチアップ接種のラストチャンスである」ことを、あくまでも情報提供のひとつとして行ってみてはいかがでしょうか。
子宮頸がんは働き世代の女性にとって非常に身近ながんです。
子宮頸がん検診についても、啓発ポスターの掲示や受診勧奨をイントラネットに掲示するなど、受診率の向上もセットで行ってください。
<参考>
・ 厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~」
・ 厚生労働省「第60回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料」
・ がん情報サービス「子宮頸がん」
・ 東京都保険医局「子宮頸がんのこと」
・ 厚生労働省「9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(シルガード9)について」