災害時の事業継続に欠かせないBCP、BCMの策定と見直し~衛生委員会を活用する~
- 2024/1/19
- 災害
はじめに
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震で被災された皆さまには心よりお見舞い申し上げます。
災害が起きた時に、どのように社員の安全と生活を守れるか、みなさんが所属する企業の対策はご存じですか。どのような計画があり、自分はどう行動することが求められるか理解されていますか。
災害時にも企業には安全配慮義務が求められます。そして災害時に重要になのがBCP(事業継続計画)とBCM(事業継続マネジメント)です。これらは、2011年3月に発生した東日本大震災後に注目されるようになりました。また、新型コロナウイルス感染症流行時に、あらためて自社のBCP、BCMの策定、見直しをされた企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、企業における災害対策の要である、BCPとともにBCMについてご紹介します。
BCP、BCMとは
まず、BCP、BCMについて確認していきましょう。
(1) BCP:事業継続計画(Business Continuity Plan)
BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするため、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続の方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
自然災害時であっても企業側には、安全配慮義務が課せられています。
BCPは、「事業継続」とともに、従業員を守ることも目的としています。BCPを策定することにより、非常時の安全配慮体制を整えられるといえるでしょう。
内閣府「令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」の結果によると、大企業の70.8%、中堅企業の40.2%がBCPを策定しています。
(2) BCM:事業継続マネジメント(Business Continuity Management)
BCM(事業継続マネジメント)とは、リスク発生によって生じる事業の中断に対し、必要なサービスレベルを戦略的に決定し、事業の継続を確保する経営管理手法のことです。
BCPを機能させるべく、経営層の方針のもと事業継続を確保するための取り組みともいえ、内閣府「業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―」では「経営レベルの戦略的活動」と位置づけられています。特に経営層がBCM(事業継続マネジメント)の必要性やメリットについて理解したうえで導入を決定、基本方針の検討といったフェーズを踏むとスムーズに策定できます。
また、BCPは、BCMの一つと位置付けられています。
BCM(事業継続マネジメント)はなぜ重要なのか
災害発生時には、死傷者数、損害額を最小限にし、安否確認や被災者の救助・支援をする従来の防災活動に加えて、「ここまでは後回しにしても、ここだけは守る」といった具合に収益を確保する、経営判断としての取捨選択が必要になってきます。しかし災害に見舞われた場合、すべてに対して平時と同じ環境で対応するのは、決して容易ではありません。
本来であれば管理監督者が迅速に出社し、指揮にあたる流れが理想ですが、それができる保証はありません。仮にBCP(事業継続計画)が策定されていても、活用できないと無駄になってしまうことから、BCM(事業継続マネジメント)の重要性が注目されるようになったのです。
そのため、管理監督者が不在であっても対応できるようなルール・マニュアルをあらかじめ策定しておきましょう。
<基本的なBCM(事業継続マネジメント)のプロセス>
1. 基本方針の策定
2. 分析・検討
3. 事業継続戦略・対策の検討と決定
4. BCPや事前対策、教育などの計画の策定
5. 事前対策および教育・訓練の実施
6. 見直し・改善
内閣府「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―」P9をもとに作成
BCP、BCM策定には衛生委員会が役立つ
今回の能登半島地震をはじめ、日本では、大地震の発生や台風、火山の噴火などの災害がいつどこで発生しても不思議ではありません。また、感染症の流行やテロなど、災害以外の緊急事態発生も考えられます。事業継続のための取捨選択を求められるような場面に直面しでも慌てることがないように、BCP、BCM策定を強くお勧めします。
BCP、BCMを策定するうえでは、事前の情報収集・入念な準備が必要です。その第一歩として、衛生委員会などを通じ、「リスク発生時には何を優先すべきか?」などの議論をされてみてはいかがでしょうか。
また、ほとんどの企業では、BCP策定から一定期間が経過すると、内容の見直しを行っています。「うちは以前に策定しているから安心」と思ってしまうかもしれませんが、年に一回以上は現状と相違がないかBCPの確認を行いましょう。策定後の見直しを忘れる、後回しになる場合は年間計画の一つとして計画ください。
<参考>
・ 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針~緊急事態を生き抜くために~」
・ 内閣府「事業継続ガイドライン―あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応―」
・ 内閣府「令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」