歯が白いだけが「美」ではない! 睡眠時ブラキシズムに注意

皆さんは、朝起きた時に歯や顎が痛かったり、だるい感じがした経験はありませんか?
そのようなことがある人は、もしかすると「睡眠時ブラキシズム」かもしれません。
そして、「睡眠時ブラキシズム」を放っておくと、歯がすり減ったり、割れてしまったりすることも……。
この記事では、歯や顎の健康と美しさを保つために知ってほしい「睡眠時ブラキシズム」の重大さや対策を説明します。

睡眠時ブラキシズムとは

睡眠時ブラキシズム、聞き慣れないこの言葉は「歯ぎしり」や「食いしばり」のことです。
歯や顎の役割はいうまでもなく、食物を噛み千切る、かみ砕く、飲み込みやすく口腔内でまとめるといった、食事に関するものが大きく、咀嚼(そしゃく)という運動をすることです。
しかし、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、この役目をまったく果たさない非機能的な運動に当たります。
日常的な食事においての人のかむ力は、男性で約70㎏、女性で約40㎏といわれています。
一方で、睡眠中に無意識に噛む際には、起きて食事をしている時よりも大きな力でかむ場合もあり、その持続時間は約5分程度にものぼる人もいます。(※1)
目的を持って噛んでいる時よりも、自分自身の歯同士を強くぶつけ続けていることになるのです。
それにより、歯がすり減ったり、亀裂が生じ欠けたり、インプラントをしている人であれば抜け落ちてしまったりする可能性があります。
さらに、歯や顎は会話や審美的にも大きな役割を持ちます。
健康的な歯並びや歯の形は、見た目に美しいだけでなく、会話に必要な発音を左右します。
睡眠時ブラキシズムにより歯や顎の健康が損なわれることで、人とのコミュニケーションや食事に大きな影響を及ぼすことが、十分にお分かりいただけたのではないでしょうか。

あなたは大丈夫? 睡眠時ブラキシズムを疑う症状と対策

睡眠時ブラキシズムに対しては、主に歯科で治療が進められます。
しかし、まさか自分が歯ぎしりや食いしばりをしていると思わないうちに、歯や顎に日々過度な負担を掛けている人もいるかもしれません。
「患者の歯ぎしり音の自己申告」を基にした欧米やアジア諸国での調査(※2)によると、睡眠時ブラキシズムの発生率は、小児で10~20%、成人では約5~8%、高齢者で2~3%と加齢とともに減少するものの、性差はないということが報告されています。
まずは、ご自分が睡眠時ブラキシズムの状態があるのかを知ることから対策を始めましょう。

・ 歯がすり減っている
・ 朝起きた時に、顎の疲れや歯の痛みを感じることがある
・ 考えごとやストレスを感じた時に、気が付くと歯を食いしばっている
・ 周りから、歯ぎしりを指摘されたことがある
・ 輪郭(エラ)が張ってきた気がする

上記に当てはまる人は、ぜひ歯科のある医療機関を受診することをお勧めします。
治療では、歯を守るためのマウスピースを作ったり、必要に応じてかみ合わせを調整したりすることもあります。
また、生活習慣によっても睡眠時ブラキシズムを引き起こしやすくなります。
飲酒・喫煙・カフェインなどの嗜好品、過度なストレスや不安を感じやすい性格、睡眠不足などがある場合は、睡眠時ブラキシズムのリスク因子となるため、思い当たることがあればその状態の軽減に努めましょう。

さいごに

歯や顎の健康は、今の自分だけでなく将来の自分の健康で楽しい生活を送ることができるかどうかにも関わってきます。
いくら歯を磨いて虫歯や歯周病の予防をしても、歯科や自宅などでホワイトニングを行い歯を白くしても、自分自身の力で歯と顎を知らず知らずのうちに壊しているかもしれません。
ここで紹介した以外にも、睡眠時ブラキシズムによる好ましくない影響はいくつもあります。
まずは自分の状態を振り返り、歯科など医療機関に相談し適切に対応することで、今そして将来の自分の健康と美を守りましょう。

<出所>
※1:馬場一美「睡眠時ブラキシズム-合理的な診断と歯科的対処法」(『Dental Medicine Research』2008年28巻3号、p.187-194)
※2:公益社団法人日本歯科医師会「歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」

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佐藤 せな株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

看護師として病院で救急看護や慢性期看護などを広く経験するなかで、思わぬ病気により、過去の生活を後悔する患者さんを数多く目にすることで、病気の予防に強く関心を抱く。
ドクタートラストに参画後は、働く人の病気の予防に貢献するため、健康診断後の保健指導などを実施。また、実際の病気のありようや経過、患者さんの気持ちの変化など、看護の現場にいたからこその知見を活かした健康セミナーなども行っている。
【保有資格】看護師、保健師
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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