BCPとは
BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)は、2011年の東日本大震災以降、急速に知られるようになった用語です。
自然災害や大震災、地震や風水害等の自然災害あるいはテロや火災、事故等の人為的災害といった、従業員や中核事業等に対して重大な被害や影響を及ぼす可能性のある事態に遭遇した際に、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことを指します。
防災計画とは何が違う?
BCPの特徴は、次の5つです。
- 優先して継続・復旧すべき中核事業を特定すること
- 緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておくこと
- 緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客とあらかじめ協議しておくこと
- 事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておくこと
- すべての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図っておくこと
仮に企業が大地震などの緊急事態に遭遇した場合、何も備えを行っていない企業では、事業の復旧が大きく遅れて事業の縮小を余儀なくされたり、復旧できずに廃業に追い込まれたりするおそれがあります。
その一方で、BCPを導入している企業は、緊急時でも中核事業を維持・早期復旧することができ、その後、操業率を100%に戻したり、さらには市場の信頼を得て事業が拡大したりすることが期待できます。
BCPは、従来の「防災対策」と類似点の多いものですが、従来から行われてきた防災対策は、人命安全、建物等の資産保全の確保を最優先とし、減災対策や復旧対策を講ずるものでした。
対してBCPは、優先業務の継続自体を目的とし、被災時の事業や業務の継続が新たな顧客獲得にもつながり得る戦略的な取組として、優先業務の特定、目標とする復旧時間・復旧レベルの設定、その継続に必要な要素の保全等を図るものです。
もちろん「優先業務の継続自体」には「人命安全、建物等の資産保全の確保」の意味も包含されており、その点では、BCPは防災計画よりも広い範囲を取り扱っているといえます。
策定率は低い
BCP自体は法令等で策定が義務付けられたものではありません。
緊急時に事業の継続・早期復旧を図ることで顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受けることとなり、ひいては株主にとって企業価値の維持・向上につながるという点で、経営手法のひとつと位置づけられています。
それでは実際に策定はどれくらい進んでいるのでしょうか。
株式会社帝国データバンクが2016年7月に公表した「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」(有効回答企業数1万471社)では、実際にBCPを策定している企業は、15.5%にとどまっており、「策定中(8.3%)」、「策定を検討している(22.7%)」 を合わせても半数に満たないのが現実です。
特に従業員数の少ない企業では策定率が低く(従業員数5人以下では、5.3%)、1,000人超の企業での策定率56.6%とは10 倍以上の開きがあります。
策定が進まない理由としては、「ノウハウがない」、「策定する余裕がない」「策定のための人員不足」が挙げられており、知見の共有が広がっていない状況がうかがえます。
BCPを作ってみよう
前記「策定率は低い」にあるように、なかなか企業に浸透の進まないBCPですが、中小企業庁では「中小企業BCP策定運用指針」を公表しており、簡単に流れに沿ってBCPを策定することができます。
また、同指針にはBCP策定について「入門コース」「基本コース」「中級コース」「上級コース」の4つが設けられており、上のコースになるほど、BCPのステップアップが図られます。
緊急事態というのは、いつ生じるからわからないものです。
万が一に備えて、BCP策定の検討をぜひ一度!
<参考>
・ 中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」
・ 国土交通省関東地方整備局「業務継続計画(BCP)」
・ 株式会社帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」