2024年12月26日、厚生労働省内に設置された労働政策審議会が建議「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」(以下、本資料)を公表しました。
本資料は、女性の活躍推進と職場におけるハラスメント防止に関する具体的な対策、提言を盛り込んだものです。
特に、2015年に制定された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下、女性活躍推進法)は、10年間の時限立法であり、2026年3月末にその期限を迎えることになります。
しかし、現在の状況を踏まえると課題はまだまだ多く、女性活躍のさらなる推進が求められています。
本資料では、女性活躍推進法の期限が迫っていることを受け、その延長と内容の見直しを提案し、さらに、職場におけるさまざまなハラスメント問題に対して、事業主の責任を明確化し、対策を強化することを目指しています。
以下では、本資料から、「中小企業における女性活躍の推進」、「えるぼし認定制度の見直し」、「職場におけるハラスメント防止対策の強化」のポイントをわかりやすく解説します。
中小企業における女性活躍の推進
現在は常時雇用労働者301人以上の企業に対して「男女間賃金差異」の公表が義務付けられていますが、本資料では「101人以上300人以下」の企業にまで拡大することが適当とされています。
合わせて、「女性管理職比率」について常時雇用労働者101人以上の企業に義務づけていく方針です。
えるぼし認定制度の見直し
本記資料では、えるぼし認定制度の見直しとして、以下の2点が挙げられています。
1. 認定基準の見直し
現在の認定基準では、5つの基準のうち該当しない事項について、2年以上連続して実績が改善していることが求められています。
この要件が、企業が認定を受ける際のハードルとなっているとの指摘があり、この要件の見直しが行われる見込みです。
2. えるぼしプラス(仮称)の創設
職場における女性の健康支援に積極的に取り組む企業を評価するため、えるぼし認定制度に、女性の健康支援に関するプラス認定の仕組みを設けることが提案されています。
これにより、企業は女性の健康に関する取り組みを強化するインセンティブを得ることができ、女性の健康課題への対応が促進されることが期待されます。
職場におけるハラスメント防止対策の強化
本資料では、職場におけるハラスメント防止について、特に以下の点に重点が置かれていました。
1. ハラスメントの種類と対策の強化
カスタマーハラスメントは、2024年8月に公表された「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会報告書」において顧客や取引先などからの著しい迷惑行為を指し、労働者の就業環境を害する行為として定義されたハラスメントです。
本資料では事業主には、カスタマーハラスメントに対する雇用管理上の措置義務が新たに設けられることが提案されています。
具体的には、相談窓口の設置、予防策の周知、事後の適切な対応などが求められます。
また、就職活動中の学生に対するセクハラを防止するため、事業主の雇用管理上の措置義務が創設されることが提案されています。
具体的には、面談時のルール作り、相談窓口の設置などが求められます。
さらに、いわゆる「自爆営業」など、職場におけるパワーハラスメントの定義をより明確化し、防止策を強化することが提案されています。
2. ハラスメント防止のための取り組み
さらに、ハラスメントの防止のための取り組みとして、本資料では「規範意識の醸成」「中小企業への支援」「周知・啓発」を行っていくことが提案されています。
3. カスハラ明確化の検討
さらに、本資料ではカスハラについて対象となる行為の具体例や、それに対して事業主が講ずべき雇用管理上の措置の具体的な内容は、指針において明確化することが適当であるとしています。
※本資料での提言のうち女性管理職比率の公表については、厚生労働省で正式に取りまとめられる見通しです。
企業側にはさまざまな対応が求められることから、ぜひ審議会の動向に注視しておきましょう。
<参考>
・ 労働政策審議会建議「女性活躍の更なる推進及び職場におけるハラスメント防止対策の強化について」