コロナから5年、テレワークの「いま」~制度化11.9%・未導入73%・廃止企業の本音~

コロナ禍で一気に普及したテレワーク。
緊急事態宣言が解除され、社会が「日常」を取り戻した今、職場の働き方はどう変わったのでしょう。
厚生労働省は2025年度、「テレワークの労務管理等に関する総合実態調査」を実施し、その結果を2026年3月に公表しました。
今回はこの調査結果をもとに、テレワークの現在地をわかりやすく解説します。

テレワークはコロナ後も定着したのか?「制度化」は進んだが、未導入は73%のまま

本調査結果によると在宅勤務を「就業規則や付帯規定等に明記し、会社の制度として認めている」企業の割合は11.9%でした。
コロナ禍の2020年度調査(7.5%)と比べると増加しており、制度としての定着は一定程度進んでいます。
ただし、「会社の制度はなく、実施する従業員もいない」企業は全体の73.1%を占めています。つまり、約4社に3社はテレワークを実施していないのが現状です。
企業規模による差も顕著です。
「1,000人以上」の大企業では67.1%が在宅勤務を制度として認めているのに対し、「29人以下」の小規模事業場では8.4%にとどまります。テレワークの定着は、大企業と中小企業の間で大きく二極化しています。
また、約4%の企業は「過去に導入・実施していたが、現在は廃止した」と回答しています。コロナを契機に始めたテレワークを、コロナが落ち着いた後にやめた企業が一定数存在することがわかります。

導入しない、やめた理由は?「業務の限界」と「不公平感」が壁に

本調査でテレワークを未導入の企業に理由を聞いたところ、最も多かったのは「テレワークでできる業務が限られているから」(59.1%)でした。
医療・福祉や宿泊・飲食サービス業など、対面での業務が欠かせない職種では、そもそもテレワークへの移行が難しいという現実があります。
未導入企業のうち「テレワークをする余地は考えられない」と回答した割合は70.3%にのぼり、多くの企業にとってテレワークは選択肢の外にある状況です。
2位は「テレワークのメリットが感じられないから」(19.2%)で、2020年度調査(13.9%)と比べて増加しています。コロナ禍の緊急対応として経験したうえで「やはりうちには合わない」と判断した企業が増えているとも読み取れます。
一度導入して廃止した企業の理由も見てみましょう。
廃止理由の1位は「テレワークでできる業務が限られていたから」(56.2%)でした。2位は「テレワークができない従業員との間で不公平感が生じたから」(31.1%)、3位は「従業員の勤怠管理や在席・勤務状況の確認が難しかったから」(27.%)と続きます。
特に注目したいのが「不公平感」の問題です。テレワークができる職種とできない職種が混在する職場では、「在宅で働ける人と出勤しなければならない人」という分断が生まれやすくなります。
制度設計の段階でこの問題にどう対処するかが、テレワーク定着のカギになると言えるでしょう。
廃止企業のうち約9割は「再開予定はない」と回答しており、一度やめた企業が戻ってくる可能性は低い状況です。

導入企業が直面する課題は?見えにくい「健康リスク」にどう向き合うか

テレワークを導入している企業が抱える課題として、この調査では健康管理やメンタルヘルス対策に関する項目も設けられています。

在宅勤務時の時間外労働については、「オフィス勤務時と比べてテレワーク時の法定時間外労働などが多い」と回答した企業が一定数存在します。
在宅勤務では通勤がなくなる分、仕事と生活の境界が曖昧になりやすく、気づかないうちに長時間労働になるリスクがあります。
また、テレワーク時の健康確保措置として、多くの企業が取り組んでいるのは定期的なオンラインミーティングの実施や、チャットツールを活用したコミュニケーションの維持です。
一方で、メンタルヘルス対策として個別の相談窓口を設けている企業はまだ少なく、孤立感や不調の発見の遅れが課題として浮かび上がっています。

特に在宅勤務が長期化すると、上司や同僚から物理的に離れた環境でのストレスが蓄積されやすくなります。
「顔が見えない」環境では、不調のサインを周囲が気づきにくいという特性があるため、ストレスチェックの活用や産業医・保健師による定期的なフォローアップ体制を整えることが重要です。
テレワークの「便利さ」の裏側にある健康リスクを、企業として意識的に管理していく必要があります。
今回の調査から見えてきたのは、テレワークが「コロナの緊急対応」から「企業が選択する制度の一つ」へと変わりつつある現状です。
一方で、大企業と中小企業の間の格差、業種による導入の壁、不公平感やコミュニケーション不足といった課題は依然として残っています。
さらに、テレワークを継続する企業にとって今後重要になるのが、従業員の健康管理です。在宅勤務特有の長時間労働リスクや孤立感への対策を、労務管理と一体で考えていくことが求められます。
「テレワークを導入して終わり」ではなく、働く人の健康をどう守るかを含めた制度設計が、これからの職場環境改善の鍵となるでしょう。

<参考>
・ 一般社団法人日本テレワーク協会「令和7年度 テレワーク・ワンストップ・サポート事業 テレワークの労務管理等に関する総合実態調査 報告書」

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
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