デジタル技術の浸透でビジネスパーソンの意識に変化?自身の業務代替への「脅威派」と「楽観派」がほぼ拮抗
- 2026/1/9
- 働き方改革

公益財団法人日本生産性本部が11月26日に発表した「第4回 生産性課題に関するビジネスパーソンの意識調査」によると、生成AIなどのデジタル技術が自身の業務を代替することに対して「脅威を感じている」とする回答が42.2%、「脅威を感じない」とする回答が44.1%とほぼ拮抗していることがわかりました。
この調査は、従業員規模300人以上の組織で働く経営層、管理職、非管理職の計2,882名を対象に、2025年9月にインターネットを通じて実施されたものです。
日本の労働生産性の現状認識や生産性向上の阻害要因、改善策などについて、ビジネスパーソンの意識を定量的に把握することを目的としています。
まずデジタル技術が業務を代替することへの意識を役職別に見ると「かなり脅威を感じている」と回答した割合は、トップマネジメント(会長・社長など)で23.9%と他の役職より多く、役職が高くなるほど回答が多くなる傾向が見られました。
経営層全体では47.1%が脅威を感じており、管理職の43.4%、非管理職の38.2%と比較して高い数値となっています。
一方で「わからない」とする回答は非管理職(18.5%)で最も多く、役職が低くなるほど回答が多く、役職による認識の違いが浮き彫りになっています。
経営トップが事業戦略の観点からデジタル技術のインパクトをより深刻に捉えているのに対し、現場レベルでは実感が伴っていない様子がうかがえます。
脅威を感じる人々が現在必要だと考えている取組みとしては、「デジタルスキル・AI活用スキルの習得」が全体で25.2%と最も多く、特に非管理職では26.7%に上りました。
経営層では「より質が高い、高付加価値業務へのシフト」(25.9%)が最多となっており、階層によって対応策への考え方に違いが見られます。
日本の生産性の実態
生産性への危機感は7割近くに
調査ではまた、日本の労働生産性が国際的に低迷する現状に対して68.7%が危機感を持っていることも明らかになりました。
日本の時間当たり労働生産性は、最新のデータによるとG7で最下位、OECD加盟38カ国中29位にまで落ち込んでいます。
役職別に見ると、経営層では74.2%、管理職では70.5%、非管理職では63.6%と、役職が上がるにつれて危機感が強まる傾向が見られます。
経営層のうち、トップマネジメントでは「かなり危機感がある」が35.2%に上り、前回調査(2024年6月)の44.9%からは減少したものの、依然として高い水準を維持しています。
海外売上高比率別では、「50%以上」の企業で「かなり危機感がある」とする回答が35.3%と最も多く、グローバル市場で競争している企業ほど、日本の生産性の低さを切実な問題として捉えていることがうかがえます。
「無駄な作業」が生産性低下の主因
労働生産性が低い要因としては「無駄な作業・業務が多い」(43.5%)が最多となりました。
この回答は役職が低くなるほど多く、非管理職では50.5%に達しています。
また、海外売上高比率が「なし」「1~25%未満」の企業で回答が多く、国内市場中心の企業でより深刻な課題となっている様子がうかがえます。
次いで「仕事の仕組みのデジタル化が進んでいない」(24.9%)が挙げられました。
こちらは対照的に、役職が高くなるほど回答が多くなる傾向があり、経営層では32.1%に上ります。
経営サイドはデジタル化の遅れを課題と認識している一方、現場では日々の無駄な業務に追われている実態が読み取れます。
そのほか、「会社の価値観や仕事のやり方が以前と変わっていない」(21.8%)、「新しいことにチャレンジしにくい組織風土がある」(16.4%)といった組織文化に関する課題も上位に挙がっています。
生産性向上の意味については、「業務を効率化してムリ、ムダ、ムラをなくすこと」が43.3%で最多となりました。
いわゆる生産性の「分母」を改善する発想が根強い一方、「分子」の改善にあたる「労働時間あたりの付加価値を高めること」は38.7%にとどまっています。
ただし、後者はものづくり企業では43.5%と高く、サービス業との意識の違いが見られます。
物価高でも賃上げ実感は乏しく
賃上げが物価上昇に見合っているとする回答は32.7%にとどまり、見合っていないとする回答が55.0%を占めています。
役職別では、経営層で「見合う」とする回答が53.6%と過半数に上る一方、非管理職では21.3%にとどまり、大きな認識のギャップが存在します。
また、海外売上高比率による違いも顕著で、「なし」の企業では「見合わない」が62.8%に達する一方、「25~50%未満」では37.7%、「50%以上」では41.0%と、グローバル企業ほど賃上げの実感があることがわかります。
来年の賃上げ予想については「4.0%未満」が54.5%と半数を超えました。
特に非管理職では65.6%に上り、現場レベルでは賃上げへの期待が低いことがうかがえます。
興味深いのは、海外売上高比率による違いです。賃上げ率を「6.0%以上」と予想する回答は全体で4.3%ですが、海外売上高比率が「50%以上」の企業では10.1%と、全体平均の2倍以上に達しています。グローバル市場での人材獲得競争が、国内企業との賃金格差を生み出している可能性が示唆されます。
投資の障壁は「資源制約」と「理解不足」
人材や設備、研究開発投資の障害となっている要因については、「わからない」(20.6%)が最も多く、次いで「経営資源の制約(人員・資金)」(19.2%)、「経営層の理解・関心の不足」(15.3%)、「投資に対する将来の不確実性・リスクへの懸念」(14.6%)が続きました。
「経営資源の制約」は経営層で25.7%と最も多く、役職が上がるほど回答が多くなる傾向が見られます。
組織の上層部ほど投資の制約を強く感じており、リソース配分の難しさに直面していることがうかがえます。
一方、「わからない」は非管理職で28.5%と最も多く、また海外売上高比率が「なし」の企業で25.7%に上ります。
投資戦略が現場まで十分に共有されていない、あるいは国内市場中心の企業で投資の方向性が定まっていない可能性が示唆されます。
さらにイノベーション創出のための複数組織とのエコシステム構築については、「取り組んでいる事例はあるが、成果は一部にとどまっている」(37.0%)と「ほとんど取り組んでいない」(34.0%)に二極化する傾向が見られました。
「ほとんど取り組んでいない」は非管理職で44.5%と最も多く、海外売上高比率が「なし」の企業では47.3%に達しています。一方、「積極的に取り組んでおり、成果を実感している」は全体で8.0%にとどまるものの、海外売上高比率「50%以上」では18.8%と比較的高くなっています。
成果を上げている企業の特徴としては、「該当分野での専門知識を持つ高度人材がいる」(31.9%)、「豊富な人脈・ネットワークを持つ高度人材がいる」(30.0%)、「失敗を恐れず挑戦するなど、新しいことに積極的に取り組む組織文化がある」(28.6%)が上位に挙がりました。
今回の調査からは、デジタル技術の浸透、グローバル化の進展、物価上昇など、企業を取り巻く環境が大きく変化する中で、ビジネスパーソンの意識にも変化が生じていることが読み取れます。
特に、役職や海外売上高比率によって認識に大きな違いがあることは、組織内でのコミュニケーションや戦略の共有が今後の課題となることを示唆しています。
<参考>
公益財団法人日本生産性本部「第4回『生産性課題に関するビジネスパーソンの意識調査」』」





















