女性特有の課題への企業サポート状況はどうなっている?経団連結果から

2025年4月10日、一般社団法人日本経済団体連合会は「『女性と健康』に関する調査結果」(以下、「本調査」)を公表しました。
本調査は、企業における女性活躍推進と健康経営の観点から実施されたもので、人事・労務担当者を対象に、女性従業員の健康課題に対する企業の対応状況や取り組みの実態を把握することを目的としています。
調査期間は2024年11月から12月、回答企業数は317社にのぼりました。

多くの企業が女性特有の健康課題を「経営課題」として認識

2018年に経済産業省が実施した「働く女性の健康推進に関する実態調査」では、約5割の女性従業員が「女性特有の健康課題により職場で困った経験がある」と回答しています。
また、「女性特有の健康課題による社会全体の経済損失は年間約3.4兆円に上る」との試算も公表されており、女性の健康が組織にとって重要な経営課題であるという認識が広がっていることがうかがえます。
こうした現状を踏まえ、以下に本調査の主なポイントをわかりやすく解説します。

調査結果のポイント

① 企業がサポート可能とする主な健康課題は「月経の不調」

企業に「サポート可能と考える女性の健康課題」を3つまで選んでもらったところ、上位は以下のとおりでした。

・ 月経の不調:83.9%
・ 女性特有のがん:59.4%
・ 更年期の不調:53.1%

さらに、これらの健康課題へのサポートが女性のQOL(Quality of Life=生活の質)向上につながることで、企業にとってどのようなメリットがあるかを尋ねたところ、最も多かった回答は「社員の生産性向上」(52.1%)、次いで「女性社員の定着率向上」(22.9%)でした。
また、株式会社帝国データバンクが2025年2月に発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」によると、正社員の人手不足を感じている企業は53.4%にのぼり、これはコロナ禍以降で過去最高の水準です。
このような背景から、一人ひとりの生産性向上や社員の定着促進は企業経営において重要な課題となっており、女性特有の健康課題への取り組みがその解決に貢献するといえます。

② 実際に導入されているサポートで最も多いのは「生理休暇」

次に、現在企業で導入されている女性の健康課題へのサポートについて見てみましょう。
本調査によると、女性の健康課題に関する具体的な取り組みを実施している企業は全体の95.8%にのぼりました。具体的なサポート内容の上位5項目は以下のとおりです。

・ 生理休暇:93.9%
・ 女性特有のがんに関する健診費用の補助:76.0%
・ 産業医などの専門医によるアドバイスや医療機関の紹介:68.8%
・ 不妊治療・通院のための休暇制度:65.6%
・ 総務部や人事からのアドバイス提供:50.0%

このように、多くの企業が就業規則の整備や産業保健体制の強化を通じて、女性の健康課題に対応しています。

③ 経営層を含む全体の理解度は「およそ半分」にとどまる

女性の健康課題へのサポートは生産性向上に資する一方で、理解が進んでいないとその効果は限定的になります。
実際に、職層ごとに理解の浸透状況を尋ねたところ、以下のような結果でした。

<経営層>
・ 総じて浸透している:32.3%
・ 一部は浸透していない:25.0%
・ 大半は浸透していない:30.2%
・ 現状を把握できていない:12.5%

<管理職層>
・ 総じて浸透している:14.6%
・ 一部は浸透していない:35.4%
・ 大半は浸透していない:37.5%
・ 現状を把握できていない:12.5%
<一般従業員層>
・ 総じて浸透している:13.5%
・ 一部は浸透していない:30.2%
・ 大半は浸透していない:41.7%
・ 現状を把握できていない:14.6%

上記を見ると、必ずしも浸透しているわけではなく、女性特有の健康課題と生産性の関連性が十分に認識されているとは言いがたい状況と推察できます。

まとめ

今回の調査から、企業における女性の健康課題への認識は高まりつつあるものの、職場風土の改革や理解の浸透はまだ発展途上であることが明らかとなりました。
女性の健康課題は、人材戦略や採用戦略の観点からも極めて重要です。企業の持続的な成長を支える鍵として、今後さらに注目されるべきテーマといえるでしょう。

<参考>
・ 一般社団法人日本経済団体連合会「『女性と健康』に関する調査結果(PDF)」
・ 経済産業省「働く女性の健康推進に関する実態調査」
・ 株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」

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蜂谷未亜株式会社ドクタートラスト 編集長

投稿者プロフィール

出版社勤務を経てドクタートラストに入社。産業保健や健康経営などに関する最新動向をいち早く、そしてわかりやすく取り上げてまいります。
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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