先日、職場がん検診において、子宮頸がん・乳がんなどの女性がん検診の受診率が低水準であるという調査結果が発表されました。
職場のがん検診の受診率では、肺がん・大腸がん・胃がん健診が国の目標値である5割を超えるのに対して、女性がん検診(乳がん・子宮頸がん)の受診率は3割程度にとどまっています。(厚生労働省発表 第17回がん検診のあり方に関する検討会資料より)
健康診断そのものを受診している従業員は、81.5%と、企業に勤務する人の5人に4人は、1年に1回の定期健診を受診していることになります。(厚生労働省 平成24年度「労働者健康状況調査」より)
「任意受診」「費用自己負担」となっている点は、女性がん検診も、その他のがん検診も共通しています。
それではなぜ、女性がん健診の受診率が低いのでしょうか?
婦人科検診が敬遠されるわけ
任意での受診となるがん検診・婦人科がん検診ですが、受診しない理由として、以下のことが挙げられています。
1.時間がない(48.3%)
2.費用がかかる(30%)
3.受診の手続き方法がわからない(28.6%)
4.検診方法がわからず不安(27.2%)
5.症状がないので必要性を感じない(22.8%)
特に【1.時間がない】は働く女性にとっては大きな課題です。
会社の健診と一緒に受けられない場合は、平日に有給休暇を取得するか、土日のどちらかを割かなくてはなりません。
また、乳がん検診=乳腺外科、子宮頸がん=婦人科と、受診する診療科が異なります。
そのため、この2つを一度に受けるためには、健診機関で婦人科ドックを申し込まなければならず、さらにハードルが高くなっています。
また、子宮頸がん検診は内診を伴うため、婦人科を受診したことがなく不安という声も多く聞かれます。
時間・費用といった物理的な理由に加えて、検診方法への不安や病気に対する知識不足など、女性の検診への心理的なハードルが高いのも、受診率が低い大きな理由でしょう。
実は高い女性のがん罹患率
検診受診率が低いとされる女性特有のがんは、実は、とても身近な病気です。
かかりやすい年齢・・・20~40歳(※ピークは40代)
かかる確率・・・94人に1人
※特に2000年前後を境に20代・30代で子宮頸がんにかかる人が急増しています。
●乳がん
かかりやすい年齢・・・40歳代以降(※ピークは40代後半~50代前半)
かかる確率・・・12人に1人
子宮頸がんは、乳がんとくらべるとかかる確率が低いように見えますが、20代での罹患率は73人に1人程度と、通常はがんにかかりにくい若い年代に多いことも注意すべきポイントです。
受診率向上のカギは企業の衛生委員会
女性がん検診の受診率は、個人任せにしていては、なかなか上昇していきません。
企業側からも、受診を促すように積極的に取組む必要性が求められています。
【企業の取組み例】
・企業で女性がん健診の費用を一部/全額負担する
・女性がん検診の必要性を啓蒙する(企業内セミナーの実施・パンフレット配布など)
・社内アンケートの実施
・ピンクリボンなど社内キャンペーンの実施
これらの取り組みの基盤となるのは、企業における衛生委員会です。
産業医・産業保健スタッフと検診について話し合い、議題として取り上げてみてはいかがでしょうか。
産業医向けになりますが、がん対策推進企業アクションHPより、「がん対策スライド」をダウンロードできます。
上記HPでは、さまざまな企業のがん検診受診率向上に向けての取り組みを見ることができますので、人事担当や産業保健に関わる方は、ぜひご覧ください。