いつもと違う通勤経路で事故……労災はどうなる?
- 2016/6/9
- 労働安全衛生法
通勤中の災害
多くの方は通常使う通勤経路を会社に提出し、その経路で通勤していると思います。
その通勤中に災害にあった際には、通勤と災害との間に相当の因果関係が認められた場合、労災として扱われることになります。
では、会社に提出した通勤経路以外で起きた事故は通勤災害になるのでしょうか?
災害が発生した経路が会社に提出した通勤経路と異なっていても、その通勤経路が「合理的な経路・方法」であれば、 通勤災害と認められる可能性はあります。
この場合、労災として労災保険が適用となるには、次の2点から「通勤」中と認められる必要があります。
- 就業に関する住居と就業場所を往復、あるいは別の就業場所への移動、単身赴任先からの帰省などであること
- 合理的な経路および方法によるものであること
合理的な経路とは?
会社に届け出た鉄道・バス等の通常利用する経路および通常これに代替することが考えられる経路等が「合理的な経路」となります。
その他、 タクシー等を利用する場合に、 通常利用することが考えられる経路が2、3通りあるような場合も合理的な経路となります。
合理的な経路と認められない場合
一方で、 特段の理由もなく著しく遠回りとなるような経路をとる場合は、 合理的な経路とは認められません。
たとえば、 健康維持のため、 あえて自宅から遠い駅まで歩いた際にけがをした場合などは、合理的な経路とは判断されない可能性があります。
また、会社に提出した通勤経路上であっても、長時間にわたって話し込んだり、食事をして帰宅した場合、 通勤を 「逸脱」 ※1、「中断」 ※2したこととなります。
原則として 「逸脱」 「中断」 以降は労災保険でいう通勤には該当しません。
しかしながら、下記の行為は日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものであるため、その行為後に、合理的経路に戻った場合には、労災が認められる場合があります。
(1) 日用品の購入その他これに準ずる行為
(2) 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3) 選挙権の行使その他これに準ずる行為
(4) 病院または診療所において診察または治療を受けることその他これに準ずる行為
実際に通勤中に事故にあった際には、自分で判断するのではなく、専門家に相談することをお勧めします。
通勤中の労災とは認められなかったケース
次のケースは通勤中の労災とは認められなかったものです。ご参考にしてください。
- 業務終了後、事業場施設内でサークル活動を行った後に帰宅する途中の災害
- 出勤途中、交通事情で遅刻しそうになったため、会社の許可を得て休暇を取り、帰宅する途中の災害
- 休暇中に会社へ給料を受領に行き、その帰宅途中における災害
- 昼休みに帰宅する途中の災害
- 就業の途中で子供を歯科医院に送り届けた後に、再び会社に向かう途中の災害
- 自動車通勤者が、前日泊った婚約者宅から出勤する途中の災害
- 会社主催の新入社員歓迎会への出席後、泥酔のため帰宅途中で被った災害
- 退勤中、長時間にわたり日用品の購入等をした後、通勤経路に復した後の災害
※1 通勤途上において就業また は通勤とは関係のない目的で経路をそれるこ と
※2 通勤の経路上において通勤とは関係のない行為をすること