職業性ストレス簡易調査票
従業員が常時50名を超える事業場に実施が義務づけられているストレスチェックですが、多くの事業場では「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)を使ってのストレスチェックが行われています。
これには理由があって「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(以下「ストレスチェック指針」)に次の記載があるからです。
事業者がストレスチェックに用いる調査票としては、別添の「職業性ストレス簡易調査票」を用いることが望ましい。
(ストレスチェック指針より抜粋)
この「別添の『職業性ストレス簡易調査票』」の設問が57問なので、ゆえに現在は57項目が主流となっているのです。
調査票は他にもある?!
ストレスチェック指針には次の記載もあります。
ストレスチェックの調査票
事業者がストレスチェックに用いる調査票は、規則第52条の9第1項第1号から 第3号までに規定する3つの領域に関する項目が含まれているものであれば、実施者の意見及び衛生委員会等での調査審議を踏まえて、事業者の判断により選択することができるものとする。(ストレスチェック指針より抜粋)
つまり、労働安全衛生規則が定める3つの領域に関する項目が含まれていれば、どのような調査票を利用してもよいということになっているのです。
ただし、選定する項目に一定の科学的根拠が必要です。
そして、科学的根拠を示すことには多大な時間と労力を要します。
職業性ストレス簡易調査票は、厚生労働省「平成11年度作業関連疾患の予防に関する研究」にもとづいていて作成されていて科学的な根拠も十分にあることから、推奨されて多くの事業場で利用されているのです。
ちなみに、3つの領域とは次の項目です。
1 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
2 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
3 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
この3つの項目は、57問のストレスチェックを受検された方の結果通知等では、1は「仕事のストレス要因」、2は「心身のストレス反応」、3は「周囲のサポート」と記載されていることが多いので、ストレスチェックを受検した方の大半は目にしたことがある項目ではないでしょうか。
新職業性ストレス簡易調査票
ストレスチェックで現在主流となっている「職業性ストレス簡易調査票」ですが、所属や職制等で集団的な分析を行って、対象となる集団の特徴や傾向についてはある程度把握することができますが、事業者側としては分析結果に物足りなさを感じることもあるかもしれません。
また、平成11年の研究ということで、若干古めかしさを感じることもあるのではないでしょうか。
実は、平成21~23年度厚生労働科学研究費補助金研究事業「労働者のメンタル不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究」(東京大学)の成果物にもとづいて、「新職業性ストレス簡易調査票」という調査票が作成されています。
これは、先に公開されている「職業性ストレス簡易調査票」をもとした80項目の設問で構成されている調査票で、科学的な根拠もあって前述の3つの領域も含まれているのでストレスチェックの調査票としても活用できるものです。
また、事業場や部署等の組織レベルでの評価を主目的としていて、労働者の仕事へのポジティブな関わり(ワーク・エンゲイジメント)や職場の一体感、職場のハラスメントなどを測定することができるので、集団的な分析を行った際に職場改善に有効な結果を事業者は入手しやすくなっているともいえます。
今後のストレスチェックでは、ストレスチェックの集団の分析を職場に活かすという考えのもと、「新職業性ストレス簡易調査票」の利用を衛生委員会で検討してみるのも良いのではないでしょうか。
<参考>
・ 「職業性ストレス簡易調査票」(東京医科大学)
・ 「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(厚生労働省)
・ 「ストレスチェック制度による労働者のメンタルヘルス不調の予防と職場環境改善効果に関する研究」(東京大学)
・ 「新職業性ストレス簡易調査票」(東京大学)