「ベジファースト」より「カーボラスト」のほうが効果的な理由

皆さんは「ベジファースト」をご存知でしょうか?
ベジファーストとは、「野菜・きのこ・海藻を先に食べることで血糖値の急上昇を防げる」もので、「食べ順ダイエット」として注目されていることもあり、読者の方の中には「知ってる!」という方も多いことでしょう。
では「ベジファースト」以上に「血糖値を急激に上げない食べ方」として、最近注目されつつある食べ方があるのはご存知ですか?
その食べ方の名前は「カーボラスト」。
「カーボラストって何?」「そもそも血糖値とダイエットに何の関係があるの?」、そんな疑問をお持ちの皆様に、本日はどんどん解説していきます。

カーボ = 炭水化物・糖質

カーボとは、ごはん、パン、うどん、そば、ラーメン、パスタ、芋類、とうもろこし、砂糖の入った製品(お菓子等)砂糖や果物などです。
より具体的な料理名にしてみますね。
白いご飯を筆頭に、チャーハン、ピラフ、ドリア、ロールパン、食パン、菓子パン、お好み焼き、かけそば、ざるそば、焼きそば、ラーメン、パスタ、春雨、ビーフン、フォー、焼き芋、ジャガバタ、焼きトウモロコシ、ポップコーン、和菓子、洋菓子、清涼飲料水(炭酸飲料、100%ジュース)、フルーツ類……などなど。
皆さんの、そして筆者の大好物が行列をなしてます!
これらの特徴は、単品かつ炭水化物の料理が多いこと。
この「炭水化物・糖質」の塊たる「カーボ」を、たんぱく質を多く含むメインディッシュ(たんぱく質の入った料理:肉料理、魚料理、卵料理、豆料理や豆腐納豆)や野菜料理(サラダ、小鉢、キノコ海藻を使った副菜料理)の後に食べる工夫が「カーボラスト」なのです。

「ベジファースト」や「カーボラスト」をおすすめするデータ根拠

前提として、血糖値は食事をすると上がるもの。
ダイエットで大事なのは「血糖値の急激なアップダウンを避ける」ことです。
また、血糖値は急上昇ののちに急降下します。
そして血糖値が急激に下がると、とても強い空腹を感じてしまい、食べ過ぎ、結果的に太ってしまうのです。
つまり血糖値を急激に上げない食べ方がダイエットのコツ!
先ほど例示した、白いご飯に始まる筆者の大好物の炭水化物たちは、食事の最初にとると血糖値が急激に上がります。
2011年に大阪府立大学のグループが、野菜→メインディッシュ(肉・魚・卵・豆製品による料理)→主食(ごはん、パン)の食べ順指導で血糖管理を改善できる、つまり血糖値の急上昇を予防できることを発表しました。
もっともこの発表では、食べ順指導とともに一口当たり20回噛んで食べるという咀嚼指導が行われていたため、必ずしも食べ順だけの効果を証明しているわけではありませんでした。

食べる順番の研究

2016年に、関西電力病院のグループが、ごはん→魚よりも、魚→ごはんや、肉→ごはんの順番のほうが、食後の血糖値上昇を緩やかにすると発表。
あわせて、胃から腸への食べ物の排泄遅延が、魚→ごはんや、肉→ごはんといった食べ順で確認されており、魚や肉といったたんぱく質を先に食べることで、ごはん(炭水化物・糖質)の胃から腸への排泄遅延を引き起こし、急激な血糖上昇を防ぐことも報告しましました。

そして、2017年末、米・ニューヨークのウェイル・コーネル医科大学のグループがこの食べ順について、新たな研究結果を発表しました。
発表での食事実験内容は以下のとおりです。
オレンジジュース、パン(オリーブオイルを塗ったもの)、鶏肉(皮なしグリル)、野菜サラダ(レタス、トマト、キュウリ、ノンオイルドレッシング)これらを次の3つのパターンで食べてもらい、血糖値の上昇具合を観察しました。

パターン1(カーボファースト)

① パン(オリーブオイルを塗ったもの)とオレンジジュース
② 10分休憩
③ 鶏肉(皮なしグリル)と野菜サラダ

パターン2(カーボラスト)

① 鶏肉(皮なしグリル)と野菜サラダ
② 10分休憩
③ パン(オリーブオイルを塗ったもの)とオレンジジュース

パターン3(三角食べ)

① 鶏肉(皮なしグリル)と野菜サラダ、パン(オリーブオイルを塗ったもの)、オレンジジュースをそれぞれ半分食べる
② 10分休憩
③ 残りの半分を食べる

これら3パターンの血糖値の変化グラフが以下のようになります。

グラフから読み取れるように、炭水化物を最後に食べるパターン2(カーボラスト)の場合、血糖値の変動がとても緩やかで急上昇を防いでいることがわかります。
食後高血糖と呼ばれる急激に血糖値を上げる食べ方は、臓器に負担をかけ、肥満につながります。
要は、野菜とメインディッシュ(たんぱく質の入った料理:肉料理、魚料理、卵料理、豆料理や豆腐納豆)から食べ始め、そのあと、炭水化物(カーボ)を食べるという順序が、血糖値の急激なアップダウンを防ぐ食べ方「カーボラスト」太りにくい食べ方!ということです。
ただ、きっちりおかずを食べた後に、おかずなしで白いご飯を食べるというのは極端です。
炭水化物を始めに食べるのではなく、途中から食べていきましょう!というようにとらえていただければと思います。

食事を選ぶ力が求められる

このカーボラストを実際に食事に取り入れていくうえでは、どんな料理に炭水化物や糖質がたくさん含まれているかを知ること、つまり「食事を選ぶ力」がポイントとなります。
さらに、急激なアップダウンを防ぐコツとして「間食のとり方」も重要です。
たんぱく質を多く含むおやつが腹持ちがよく、ポイントになります。
「食事を選ぶ力」と、「間食のとり方」については、また次回ご紹介しようと思います。

「カーボラスト」にぜひ取り組んでほしいHbA1c5.7%以上の方!

血糖値以外で目安となるものに、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)というものがあります。
健康診断の結果を引っ張り出して確認してみましょう!
HbA1c(ヘモグロビンエーワンンシー)は血糖値のここ1~2か月の平均値を表す健康診断の検査指標です。
私たちアジア系民族は、インスリン抵抗性が強い、つまり糖尿病になりやすい民族であるため、HbA1cが5.7%以上の方は、「カーボラスト」にぜひ取り組んでみることをおすすめします。

健康診断の結果を実生活につなげていきましょう

今回の話はダイエットの話にとどまらず、あなたの健康につながるお話です。
健康診断の結果を元に、実生活をどのように変えていけばいいか、食生活をどう改善したらよいかを知る機会が保健指導です。
ドクタートラストでは、保健指導を健康診断の後の事後措置の一環として提供しています。
「食事を選ぶ力」や「間食のとり方」を含め、マンツーマンでその方の生活に寄り添ったアドバイスをすることが可能です。
健康診断結果に基づく個人向け保健指導だけでなく、最近は集団対策としての従業員向けセミナーもご提供しています。
特にこの時期は、新入社員研修の中へ食事セミナーをコンパクトに組み込んでほしいとのご要望が多くあります。
体に優しい食べ方を知っている従業員とそうでない従業員では、将来の健康度に差が付くことは想像できますね。
つまり生産性、パフォーマンスが変わってきます。まさにゼロ次予防! 健康リスクの未然防止です。

ドクタートラストでは「定期健康診断と事後措置~おさえておくべきポイントとは~」と題して3月に無料セミナーも実施予定です。
保健指導は事後措置の一環ですので、このセミナーの中でも保健指導内容をご紹介していきたいと思っています。
セミナーについての詳細はこちら

春はすぐそこ!新入社員を迎える準備や、次年度の安全衛生計画準備に、とても忙しい時期かと思います。
人事こそ、会社のプロフィットセンターです。ぜひ社員の健康のため、働きかけてみてください!

<参考文献等>
・ Del Prato S「In search of normoglycaemia in diabetes: controlling postprandial glucose.」
・ Alpana P Shukla 他「Carbohydrate-last meal pattern lowers postprandial glucose and insulin excursions in type 2 diabetes」
・ Imai S 他「A simple meal plan of ‘eating vegetables before carbohydrate’ was more effective for achieving glycemic control than an exchange-based meal plan in Japanese patients with type 2 diabetes.」
・ 『Diabetes Care』 (Volume 40, Supplement 1,January 2017)

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