生理前に起きる月経前症候群(PMS)は8割の女性が経験していることがわかっています。
PMSは、月経前3~10日の間続く精神的な症状(イライラ感、気分の落ちこみ、不安感、過食)や身体的症状(胸のはり、下腹部痛、だるさ、腰痛、便秘や下痢、肌トラブル)などが出現する病気です。
また、日本医療政策機構が発表した「働く女性の健康増進調査2018」によると、PMSの症状によって、いつも通りに働けない、仕事のパフォーマンスが半分以下になると回答した人は約45%と半数近くいました。
PMSに関する症状を少しでも緩和し、仕事も私生活もイキイキと過ごしていける時間を増やしていけると良いですよね。
さて、そんなPMSですが、実は食事と密接なつながりがあり、とり方によってPMSの症状をひどくさせるおそれがあります。
逆にいうと、生理周期にあわせて食事を意識することで、個人差はありますがPMSの症状を緩和し過ごしやすくなります。
今回は、生理前に気をつけたい食事に関するポイントを3つ紹介します。
生理前の食欲はホルモンの影響!食べ過ぎてしまっても自分を責めすぎないことも大事
生理前になると、食欲が止まらない、食べ過ぎてしまう……。
そしてそんな自分を責めてイライラしたりそんな方はいませんか?
東京労災病院治療就労両立支援センターの調査によると、PMSの症状として、食欲増加すると回答した方は40.4%と多くの方が感じているようです。
食欲が増加してしまう原因として、生理前に分泌されるプロゲステロンの分泌量が増えることで、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効果を弱めるためと言われています。
血糖値が上昇しやすくなるのですが、上昇した血糖値を下げるために、今度は反対に大量のインスリンが分泌され、血糖値が下がりすぎてしまいます。
血糖値が下がったときには空腹感を感じやすくなり、食欲が増進しやすくなると言われています。
ホルモンの関係でもともと血糖値が変動しやすい時期なので、食事でも血糖値が上昇しにくいメニューを選択し血糖値の乱高下を防ぎましょう。
また、食欲が増加してしまうことはホルモンの関係によるものの影響が大きいので、仮に食べ過ぎたとしても「今はそういう時期なんだ」とご自身を責めないようにしましょう。
食欲が増加しやすい方は、菓子パンだけ、パスタだけ、といった単品料理になっていないか、普段の食事で食物繊維を意識して取れているかの2つを確認できると良いです。
糖質を多く含む食品や、糖質に偏った食品は血糖値が上昇しやすいため、糖質の吸収を緩やかにし、血糖値の上昇を抑える効果がある水溶性食物繊維を含む食品を意識して食事に取り入れると血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
水溶性食物繊維は、わかめ、めかぶなどの海藻類、こんにゃく、里芋などねばねばしている食品に多く含まれています。
また、大麦、オーツ麦などにも含まれ近年話題のオートミールにも多く含まれていますので意識して生理前は食べられると良いですね。
味の濃い食事を重ねていませんか?むくみ予防は、カロリーでなく塩分を気にして!
PMSの症状として、むくみを感じる方は25.4%と5人に1人がむくみを感じているようです。
生理前にむくみやすくなるのは、生理前の時期の分泌量が増加し体に水分をため込む働きをするプロゲステロン(黄体ホルモン)が影響しています。
ただでさえホルモンの影響でむくみやすい時期、むくみの緩和や予防として塩分の取り過ぎにも気をつけましょう。
東京労災病院治療就労両立支援センターによる調査によると、薄味を意識している人ほどPMSの症状が低い傾向があったそうです。
まずは食べている食事が、濃い味つけのものばかりになっていないか確認してみましょう。
日本人が摂取する塩分の6割以上が調味料から摂取しているとされているため、調味料を控えるためのアイディアとして以下のことを参考にしてみてください。
1. サラダにかけるドレッシングはかけすぎていないですか?
いつも食べているサラダ、「ほぼドレッシングの味だった」という方はかけすぎかもしれません。
サラダにかけるドレッシングの適量としては、大さじ1杯程度までを目安としましょう。
<ドレッシングの塩分量(大さじ1杯あたり)>
※メーカーや種類により多少異なります。
ノンオイル和風ドレッシング:塩分1.1g
フレンチドレッシング:塩分0.5g
中華風ドレッシング:塩分0.8g
ノンオイルタイプのドレッシングは、カロリーは低くても塩分量が高い傾向にありますので、注意しましょう。
むくみが気になる方は、減塩ドレッシングを購入したり、ドレッシングをかける量を少なめにして、代わりにリンゴ酢やレモン汁で味を調整するのもおすすめです。
また、塩分を控えめしたオリジナルドレッシングをご自宅で作ってみてはいかがでしょうか?
野菜の素材の味も引き立ってとっても美味しいオリジナルドレッシングのレシピを紹介します。
<レモンとオリーブオイルのさっぱりドレッシング>
材料(1人前)
オリーブオイル:大さじ1
レモン汁:大さじ1
ブラックペッパー:少々
すべて混ぜあわせて完成!
<バルサミコ酢とオリーブオイルドレッシング>
材料(1人前)
バルサミコ酢:大さじ2
オリーブオイル:大さじ1
減塩醤油:小さじ1
すべて混ぜ合わせて完成!
2. 汁やスープは少な目に具材を多めに
汁物には1杯あたり平均で約1~2gの塩分が含まれていますので、汁物を毎回食べると塩分摂取量が多くなってしまいます。
体温が低い朝に温かいスープを飲むのは良いと思いますが、むくみ予防のために毎食は控えましょう。
また、汁物からの塩分の摂取を控える工夫として、具材を多めにして汁を少なめにしましょう。
むくみの予防のために、味の濃い食事を控えたいところですが、生理中は、食欲がホルモンの関係で食欲が増進しやすくなり、味の濃い食事が食べたくなるということがあるかと思います。
そんなときは、味の濃い食事とあわせてむくみ予防や解消に効果がある塩分の排出を促すカリウムを多く含む食品である、わかめなどの海藻類、ほうれん草、オクラ、キャベツ、白菜、ブロッコリーなどの野菜などを意識して食べるのもおすすめです。
イライラ感や不安感を生理前~生理中はノンカフェインを
カフェインには、神経を刺激する効果があるため、過剰に摂取をしてしまうとイライラ感や不安などの精神症状などを引き起こしPMSの症状を悪化させる原因になると考えられています。
また、覚醒作用があるため、過剰に摂取したり、寝る前に飲んでしまうと不眠を引き起こす原因になり、心身ともに疲れがとれにくい状態につながってしまうかもしれません。
東京労災病院治療就労両立支援センターによる調査でも、糖分が入った清涼飲料水やコーヒーの摂取では1日の摂取回数が多い人ほどPMS症状が高い結果となりました。
生理前に、「イライラしたり落ち込んで不安な気持ちになる」という方は、カフェインを多く含む飲み物や食べ物はなるべく摂取の頻度を控えるようにしましょう。
食品名 | カフェイン濃度 |
コーヒー(カップ1杯200㎖あたり) | 120㎎ |
カフェラテ(200㎖あたり) | 86㎎ |
煎茶 | 40㎎ |
紅茶 | 60㎎ |
エナジードリンク(250㎖あたり) | 80㎎ |
チョコレート(25gあたり) | 7㎎ |
PMSの症状を緩和するためのカフェインは、明確な基準はありませんが、健康な成人は、カフェインの摂取量は1日最大400㎎までといわれています。(妊婦、授乳中、妊娠を予定している女性は、カフェインをとり過ぎることにより、出生時が低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性がある、子供はカフェインに対する感受性が高いとして、1日最大200㎎までと英国食品基準庁(FSA)でいわれています)
PMSを悪化させないためには、1日400㎎までを目安にカフェインを含む飲み物を飲むようにしましょう。
「コーヒーをどうしても飲みたい」という方は、カフェインレスのコーヒーも、コーヒーショップだけでなく、コンビニでも買えますのでおすすめです。
また、カフェインを含む飲料と含まない飲料を状況によって飲み分けるということも意識していただいても良いかもしれませんね。
<ノンカフェイン飲料>
・ たんぽぽコーヒー(カフェインをコーヒーに似た味わいですが、焙煎したタンポポの根を使用してつくるノンカフェインの飲料)
・ 麦茶
・ ハーブティー
・ 黒豆茶
・ ルイボスティー
・ ローズヒップティー
今回は、PMSの症状を予防、緩和するための食事のポイントについてご紹介しました。
月のサイクルにあわせて体が変化するように食事のとり方も意識し、心身ともに元気に働くことができると良いですね。
<参考>
・ 東京労災病院治療就労両立支援センター「働く女性のためのPMSレッスン(PDF)」
・ 農林水産省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取について」
・ 日本医療政策機構「【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」」