食べて防ぐ夏バテ!企業が取り組む栄養サポート術
- 2025/7/22
- ドクタートラストニュース, 夏, 夏バテ, 管理栄養士, 食事

猛暑日数が更新され続けていますね。
暑さが厳しい夏は、熱中症や夏の暑さによる体力の消耗、夏バテが大敵です。
Job総研「2023年 夏の働き方実態調査」では、全体の88.8%が暑さで仕事のやる気減少に影響がある※と答え、51.8%が夏バテにより仕事に影響した経験があると答えています。
(※とても影響する37.4%、影響する30.3%、どちらかといえば影響する21.1%の総数)
夏バテは仕事の生産性に大きく影響します。
そのため企業にとっても、社員の夏バテ対策をすることが必要なのではないでしょうか?
対策の1つとして「食事」が重要な鍵となります。
そこで今回は、夏バテによる仕事の生産性低下を防ぐための食習慣を提案します。
夏バテ対策に効果的な栄養素と食材
「夏バテ」という言葉は日常的によく使われますが、その医学的なしくみは完全には解明されていません。
暑さによる体調不良として広く認識されていますが、具体的な病態生理については不明確です。
症状としては、慢性疲労、胃腸症状、睡眠障害、ストレス症状、モチベーション低下などの症状を示します。
また、外の気温と部屋の気温の温度差により、自律神経が乱れることが原因とされる意見もあります。
つまり「疲労を回復させる食事」をとることが重要です。
疲労回復のためにまずは三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質を不足しないようにとりながら、夏バテ対策に役立つビタミンやミネラルを取り入れるのがおすすめです。
■炭水化物:主に、ご飯、パン、麺、いも類に多く含まれる
■たんぱく質:肉、魚、たまご、大豆製品に多く含まれる
■脂質:お肉や魚のあぶら、バターや調理油に含まれる
特に暑さによる食欲の低下から夏場は、「たんぱく質」が不足している方が多いです。
たんぱく質は筋肉だけでなく、皮膚、髪、爪、内臓、血液など体をつくるほか免疫力やホルモンの生成にも関与しているので、不足すると夏バテを引き起こしやすくなるでしょう。
意識してたんぱく質をとるようにしてみてください。コンビニやスーパーで販売している高たんぱく食品を利用しても良いでしょう。
食欲がないという方は、牛乳や豆乳、プロテインなど飲み物からたんぱく質を取るのもおすすめです。
夏バテ対策にとりたいのが、疲労回復に役立つとされる「ビタミンB1」や「ビタミンC」です。
汗でナトリウムが失われやすくなり、塩分を意識して補給している方は多いと思いますが、「カリウム」も汗で失われやすい栄養素なので意識すると良いでしょう。
これらの栄養素を補える食材として、夏が旬の野菜や果物がおすすめです。
<おすすめの夏野菜や果物>
トマト
きゅうり
ピーマン
ゴーヤ
おくら
スイカ
桃
夏バテ予防に「朝食」が重要!
また、栄養素だけでなく食べ方も重要です。
夏バテを起こさないために、朝食抜きは避けるべきでしょう。
就寝中には、水分をとることができないため就寝前に適度な水分補給をしないと水分不足になりやすいです。
お酒を飲む方は、アルコールには利尿作用があり水分不足になりやすいのでお酒だけでなく水分を適宜補給もすると良いでしょう。
また、体温調整のために汗をかくので、水分だけでなくミネラルも不足した状態になります。
たとえ冷房の効いた涼しい環境下でも、人は寝ている間に汗をかきますし、長時間のエアコンの使用をすると空気が乾燥しがちです。
乾燥した環境下では、肌や喉から水分が奪われやすくなります。
水分不足になると、頭痛やめまい、食欲の低下と夏バテを引き起こしやすくなります。
そのため、朝食で水分をとれず日中外にでて汗をかくと、さらに水分やミネラルは不足し夏バテだけでなく、熱中症にもなりやすい状態になってしまいます。
日中以降は、暑さから食欲の低下につながり、昼食でも十分な食事量をとれないという方も多くみかけますので、朝の食事が重要です。
「水分だけとっていれば問題ない?」と思う人もいるかもしれませんが水分だけではなく、食事からも水分がとれますし、食事をとることで胃腸が動き出して体内のリズムも整うと言われています。
お米、果物、野菜は水分を多く含みます。
お米150gに対してとれる水分は90g、食パン6枚切り1枚に対してとれる水分は18.5gなのでお米のほうが多く水分をとることができます。
また、バナナ1本では90.5g、ヨーグルト100gあたり56gとれるので果物とヨーグルトの組み合わせもおすすめです。
「朝はコーヒーだけ。エナジードリンクだけ」という方はいませんか?
コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインには利尿作用があり水分を体外に排出してしまうのでさらに水分不足のリスクが高まる可能性がありますので、朝一で飲むのは避け、飲む際は他で食事や水分とった上で飲めると良いでしょう。
エネルギーの源となる糖質や脂質、からだをつくるたんぱく質を中心として朝食を食べると夏バテしにくい体をつくれるでしょう。
以下に簡単でおすすめの朝食例をあげます。
<おすすめの朝食例>
・ たまごかけ納豆ご飯:たんぱく質、糖質、塩分がとれます
・ 鮭おにぎり:たんぱく質、糖質、塩分がとれます
・ チーズトースト:たんぱく質、糖質、塩分がとれます。ほうれん草などをのせるとさらにビタミンが補給できます
ほうれん草は冷凍でも販売されています。
時間のない朝は、冷凍食品を活用するのもおすすめです!
企業としてできること
企業として社員の夏バテ対策のためにできることとして、まずは情報提供でしょう。
今回の記事の内容を社員にイントラなどで流しても良いですね。
他には、設置型の健康社食の導入もおすすめです。
「産業保健新聞」運営元のドクタートラストでも、「オフィスで野菜」と「筋肉食堂」の2つを導入していますが、時間がなくて朝食を食べられなかったときや間食としても利用している社員が多いです。
設置型の健康社食の導入はハードルが高いという場合は、おにぎりやバナナなど手軽に食べられる食べ物を朝食として提供することから取り組んでも良いのではないでしょうか。
厚生労働省の熱中症予防の取り組み事例としても、冷やしたバナナに塩をかけたものを提供している企業が紹介されていました。
仕事の生産性にも影響を及ぼす「夏バテ」。
個人としても対策が必要ですが、企業としても社員の夏バテ対策のための食事について考えていきましょう。
<参考>
・ 髙田邦夫「バランスの取れた熱中症及び夏バテの予防法の提案」(『航空医学実験隊報告』64巻(2024年)1号)
・ 髙橋圭、関豪「食事・栄養と運動による熱中症の予防」(『名古屋文理大学紀要』22巻(2022年))