夏に起こりやすい睡眠障害!適切な室温で快眠を手に入れる

夏になると「寝苦しくて何度も目が覚める」「夜になっても体が火照って眠れない」といった声が増えてきます。
特に2020年代以降は猛暑日が続き、室温が夜間でも下がらないことから、良質な睡眠を確保することが難しくなっています。
本記事では、夏に起こりやすい睡眠障害の背景とその対策ついて解説します。

夏の睡眠障害、その原因とは

睡眠は、体温と密接な関係があります。
人は入眠時に深部体温(内臓などの温度)が下がることで、入眠しやすい状態となります。
しかし、夏は外気温が高く、特に就寝前の室温が下がりにくいため、この体温調節がうまく働かなくなり、入眠が妨げられやすくなります。
実際、夏の寝室の室温上昇時に、睡眠時間が短縮し睡眠効率が低下するということが調査によって報告されています。
また、それに加えてエアコンの冷風が直接体に当たると、体が冷えすぎて途中で目覚めたり、翌朝だるさや頭痛を感じたりすることもあります。

厚生労働省が公表した「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では、睡眠環境の整備が快眠のために極めて重要とされています。
質の高い睡眠には、睡眠時間の確保だけでなく、室温や湿度の管理など物理的な環境の工夫が欠かせません。
また、現代ではスマートフォンやタブレットのブルーライトの影響により、メラトニン(眠気を誘発するホルモン)の分泌が遅れることも知られています。
夏の睡眠障害には環境要因と生活習慣要因が重なっているのです。

快適な睡眠のための対策

では、睡眠効率が低下しやすい夏の時期に良質な睡眠を確保するための室温管理の方法についてお話します。

室温上昇を防ぐ

夏場は日中の強い日差しによって室温が上昇し、夜まで熱がこもりやすくなります。
特に西日が差し込む部屋では、夜になっても室温が下がらないことがあります。
部屋のなかに入る日差しを減らすために、以下の方法を取り入れましょう。

遮光カーテンや断熱フィルムを導入
外からの熱の侵入を防ぎ、部屋の温度上昇を抑える効果があります。
昼間の換気タイミングを工夫
朝晩の涼しい時間帯に窓を開けて換気し、こもった熱を逃がしましょう。
すだれやグリーンカーテンの活用
ベランダや窓際で日差しを遮る自然な方法もおすすめです。

室温と湿度の調整

東京保健医療局の健康・快適移住環境の指針では、冷房使用時の室温は25〜28℃、湿度は40〜60%程度が適切とされています。
冷房や除湿機、サーキュレーターを併用して、空気の流れを作りながらこの環境を保つことがポイントです。
サーキュレーターや扇風機を併用することで、空気を部屋全体に循環させ、冷気が一部に集中するのを防ぎます。

また、体感だけでなく数値で確認することで、正確な管理が可能になります。
冷房を使用する必要がある室温なのか、冷房によって部屋を冷やしすぎていないか、温度計を使用して確認するようにしましょう。
冷房を使用する際は「冷えすぎ」を避けるため、通気性のよい寝具や、腹巻・レッグウォーマーの使用もおすすめです。
身体を局所的に守りつつ、全体として涼しく保つ工夫が快眠につながります。


上記のような具体的な環境整備を行うことで、夏の睡眠障害は大きく改善されます。

冷えすぎが引き起こす体調不良に注意

ここまで、快適な睡眠のためには冷房等を使用しながら適切な室温を維持することが重要というお話をしてきました。
一方で、冷房の効いた部屋に長時間居続けたり暑い屋外と冷房の効いた部屋の出入りを繰り返したりすることで体の体温調整機能に変調が起こり、自律神経の失調から体にさまざまな悪影響が出る場合があります。
そのため、冷房の使い方には注意が必要です。
冷房によって生じる可能性のある症状は以下のとおりです。

• 体のだるさや疲れ
• 足腰の冷え
• 肩凝り
• 頭痛
• 腹痛、下痢

ただ、エアコンを「使わない」ことが健康とは限りません。
上手に使って身体の負担を減らすことが、健康維持と快眠への鍵なのです。
冷房による体調不良の予防には、以下のような対策が有効です。

【冷房による体調不良の予防ポイント】
• 冷房使用時の室温「25~28℃」を目安にし、外気との温度差を7℃以下にする。
• 風が直接体に当たらないよう調整する。
• 羽織りものやひざ掛けを使用して体を冷やしすぎないようにする。
• 1日冷房が効いた部屋で過ごした後は、軽い体操やマッサージで全身をほぐしたり、お風呂にゆっくり浸かって身体を温める。
• 窓を開けて空気を入れ替える。
• 冷房の効いた部屋で長時間過ごすときは、時々軽い屈伸運動をして足先の血流をよくする。


冷房は「使う or 使わない」の2択ではなく、「どう使うか」を考えることが、予防にもつながります。
暑さを我慢して眠ることが、必ずしも健康的とは限りません。
エアコンを上手に活用し、体への負担を軽減すれば、快適な睡眠を手に入れることができます。

季節に応じた体調管理の鍵は「無理をしないこと」と「正しい知識を持つこと」です。
この夏は、快眠と健康の両立を目指して、出来ることから少しずつでも睡眠環境を見直してみてはいかがでしょうか。

<参考>
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」
一般社団法人千葉市医師会「『冷房病』にかからないために」
東京保健医療局「健康・快適居住環境の指針」
環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」p31-32

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武内 しおり株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学卒業後より総合病院の総合集中治療室にて看護師として勤務するなかで、「産業保健」に興味を持つようになりました。皆様の「気になる」を産業保健の視点から情報発信できるよう努めてまいります。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者
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【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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