お風呂に入ったときのウトウトが実は「ヒートショック」って本当?

今回は「ヒートショック」についてよくある質問にお答えします。

Q. お風呂に入っているときの眠気って、ヒートショックが原因なんですか?

お湯につかることで、筋肉の緊張がほぐれたり、副交感神経が優位となることでリラックス状態に入り、入浴中に眠気を感じることがあります。
しかし、眠気だと思っていたこの「うとうと」が、ヒートショックによって生じる意識消失の前兆の可能性があるのです。

Q. 眠気とヒートショックの見分け方、違いを教えてください。

眠気は、主に「睡眠不足」が原因で生じます。
睡眠とは、心身のメンテナンスの時間であるため、この回復時間が不足すると眠気が生じます。
一方で、ヒートショックによる意識消失は、急激な血圧の変動に伴う血流の減少によって意識が消失することを指します。
眠気かヒートショックかの見分け方として、以下を参考にしてください。

<眠気とヒートショックの見分け方>
● 声をかけても応答がない。刺激を加えても応答がない
● 応答があっても呂律がまわっていない
● 普段はいびきをかかない人が、大きないびきをかいている

Q. そもそもヒートショックとはどんなものですか?

私たちの体は、温かい場所から寒い場所に移動すると、血管が収縮され血圧が上昇します。
逆に、温かい場所へ移動すると、血管が広がり血圧が下がります。
急激な温度変化に伴い、血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中、不整脈、失神といった血管や心臓の疾患を引き起こす健康障害をヒートショックといいます。
日常生活の中でもっとも起こりやすいのは、冬場の入浴時です。
室内の暖かい環境から寒い脱衣所や浴室に移動することで、血管が縮んで血圧が上昇します。
そして、その後お湯につかることで体温が上昇し、血管が拡張されることで血圧が低下するのです。

Q. ヒートショックになりやすい人はいますか?

ヒートショックになりやすい人は以下のとおりです。
当てはまる方は特に気を付けけるようにしましょう。

● 高齢者:体温の調整機能が低下することによって、気温の変化に合わせた体温調整が難しくなるためヒートショックが起こりやすくなります
● 生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)の方:生活習慣病をお持ちの方は、動脈硬化によって血管の弾力性が低下することで血圧の変動が大きくなる可能性があります

また、入浴について以下の特徴がある方もリスクが高いといえます。

● 入浴前に飲酒をしている方
● 熱いお風呂を好む方
● 長時間(30分以上)お湯につかっている方

Q. ヒートショックが起こらない入浴方法を教えてください

ヒートショックはリスクの有無に限らず、誰でも起こる可能性があります。
次の入浴時のポイントを意識して、身体に負担の少ない入浴方法を心がけましょう。

① 入浴前に脱衣所や浴室を暖める

ヒートショックを予防するうえで知っておきたいポイントは、ヒートショックが温度差による血圧の急激な変化によるものであるということです。
「暖かい室内や浴槽内」と「寒い脱衣所や浴室」の寒暖差が少なくなるよう工夫をしましょう。
暖房器具を使用したり、お湯がたまった浴槽の蓋を外しておくことでも浴室の温度を上げることができます。

② 熱いお湯での長湯をしない

42度以上のお湯では、心臓や血管に大きな負担をかけたり、高体温になることで健康障害を引き起こしやすくなります。
「湯温は41度以下、入浴時間を10分まで」を目安にしましょう。

③ かけ湯をする

お湯につかる前にかけ湯をするようにしましょう。
心臓から遠い足先から始め、徐々に肩までお湯をかけるようにしましょう。
この順番でかけ湯を行うことで、心臓への負担を少なくし、急激な血圧の変動を防ぐことができます。

④ 浴槽から急に立ち上がらない

浴槽から立ち上がった際には、お湯の水圧がなくなることや入浴により身体が暖められたことで血管が拡張したことにより、血圧が低下します。
急に立ち上がると急激に血管が拡張されるため、脳への血流が減少してしまい、めまいや立ち眩み、意識消失が生じる可能性があります。
浴槽から出るときは、ゆっくり立ち上がることを心がけましょう。

また、お風呂に入る前に、同居する家族に声を変えることも何か異常があった際の早期発見につながります。
特に高齢者の入浴には気にかけるようにしましょう。

<参考>
・ 滋賀県「ヒートショック対策について」
・ 社会福祉法人恩賜財団済生会「冬場に多発!温度差で起こるヒートショック」
・ 政府広報オンライン「交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」
・ 南東北グループ医療法人財団健貢会 総合東京病院「冬場は要注意 ヒートショックとは」

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武内 しおり株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学卒業後より総合病院の総合集中治療室にて看護師として勤務するなかで、「産業保健」に興味を持つようになりました。皆様の「気になる」を産業保健の視点から情報発信できるよう努めてまいります。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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