2024年12月初旬から、リンゴ病の感染者が増加し、首都圏の都県では「流行警報」が発令されるほどにまでなりました。
国立感染症研究所によると、患者数は過去5年間の同時期の平均と比較してかなり多くなっています。
可愛らしい名前をしているので病態の恐ろしさがなかなか想像しづらいですが、感染歴のない妊婦が感染すると流産や胎児水腫などの重篤な状態を引き起こす可能性のある病気です。
他にもいったいどんな症状が発生するのか、感染時の危険性、予防方法も併せて解説します。
気づいたころには感染爆発?リンゴ病とは
リンゴ病の正式名称は「伝染性紅斑」です。
両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」とも呼ばれます。
リンゴ病はヒトパルボウイルスB19に感染することにより発症します。感染経路は飛沫感染、接触感染です。
リンゴ病の大きな特徴は、子どもがかかると感染後10~20日の潜伏期間後に両頬の赤い発疹が出現することです。
腕、脚部にも網目状・レース様の発疹がみられ、1週間ほどで消失します。
頬が赤くなってからやっと感染に気付くことも多いのですが、実は頬が赤くなる頃にはウイルスの排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失しています。
ウイルスを排泄する時期は頬の発疹がでる7~10日前で、インフルエンザのような症状を呈することがあり診断が難しく対策が遅れてしまうことがあります。
また、大人がかかると約半数は症状が出現しないので、より対策が不十分になってしまいます。
そのため、知らず知らずのうちにウイルスに感染していることも多くあります。
予防方法
リンゴ病には有効な予防接種がありませんので、手洗い、咳エチケットが基本的な予防方法です。先述のとおり、大人は特徴的な症状が現れにくいので少しでも体調が優れないと感じた際は、基本的な感染対策をしっかり行いましょう。周囲で感染者が発生した場合は、できる限り接触を避けるような注意が必要です。
流行警報が出ている地域にお住まいの子供や妊婦は普段より意識して手洗いうがいを行い、なるべく人混みを避けるようにしましょう。流行地域の家庭で子どもが体調を崩した場合は、マスクの着用、定期的な換気、食器の共有や感染の可能性が高くなるスキンシップを避けるなどの工夫が重要です。
なぜ妊婦は気を付けないといけないのか?
妊婦がヒトパルボウイルスB19に感染すると、ウイルスが胎児に垂直感染(胎内感染)する可能性があります。
胎児への感染率は約40%です。
ウイルスに感染した胎児は2~10%の確率で胎児水腫を合併します。重症の場合は流産、死産となる場合もあります。
これらは妊娠20週までの感染に多いと報告されていますので、妊娠初期、中期の方は特に注意が必要です。
もしリンゴ病にかかってしまったら?
・妊婦の対応方法
妊娠中に感染した、感染の可能性がある場合は、速やかに妊婦健診で受診している病院へ連絡し、指示を仰ぎましょう。
妊娠中の感染後、8~12週間までは、胎児の超音波検査を実施することが推奨されています。
万が一、妊婦がリンゴ病に感染しても、胎児貧血を起こしていなければ自然治癒が期待でき、予後はリンゴ病に感染していない妊婦の児と変わりません。
胎児に症状が現れている場合は、専門施設で胎児輸血などの治療を行います。
・子どもの対応方法
子どもが感染した場合は、出席停止の措置を受けます。学校保健安全法では、病状により学校医その他の意思において、伝染の恐れがないと認めるまでとされています。
・大人の対応方法
発熱や関節痛などの症状がなく本人が元気であれば仕事を休む必要はありませんが、無理をしないようにしましょう。
リンゴ病は特別な予防方法がありません。そのため普段から基本的な感染対策を行うことが一番の予防です。
自分の家族に妊婦がいなくても、職場でよく会う方、電車で隣になった方には妊婦の家族がいるかもしれません。
自分はもちろん、周りも守るための感染予防対策を心がけましょう。
<参考>
・ 国立感染症研究所「伝染性紅斑とは」
・ 国立感染症研究所「感染症発生動向調査 感染症週報」
・ 日本産婦人科・新生児血液学会「産婦人科・新生児血液Q&A」
・ 厚生労働省「感染対策・健康や医療相談の情報」