頭痛、めまい、頭がぼーっとする…冬に気を付けたい「暖房病」

外出するのが億劫になるほどの寒さが続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今年は新型コロナウイルスの影響もあり、年末年始の帰省もままならず、おうちで過ごす時間が長くなっているのではないでしょうか。
この寒さをしのぐために、多くの方がおうちで暖房器具を使用されていると思います。
エアコン、石油ストーブ、ガスストーブ、ファンヒーターなど多くの種類がありますが、暖房器具の使用中に不調を感じたことのある方はいらっしゃいませんか?
頭痛、めまい、頭がぼーっとするなどの不調が思い当たる方、その不調を放置すると最悪の場合死に至るかもしれません。
今日は「暖房病」についてお話します。

暖房病とは

「暖房病」とは正式な病気の名前ではなく、暖房器具使用時に起こる体の不調全般のことを指しています。
もちろん、暖房器具を使うとすべての人が不調に陥るというわけではなく個人差があります。
症状として、頭痛、頭重感、めまい、息苦しさ、吐き気、のぼせ、眠気などを感じる人が多く、中には暖房器具をまったく使うことができないほど強い症状を感じることもあるようです。
これまでなんとなく冬になると調子が悪くなると思っていたら暖房が原因だった人もいらっしゃるかもしれませんね。
なぜこのような不調が生じるのでしょうか。
原因は空気の温まり方、乾燥、一酸化炭素にあります。

原因① 空気が温められること

暖房器具は当然ですが室内の空気を温める効果があります。
しかし、室内の空気全体を均等に温められるわけではありません。
温められた空気はどうしても軽くなって上昇してしまうという特徴があります。
室内で使用した場合、人間の頭に近い天井側が温かくなり、足元に近い床側が冷えることになりますね。
しかし人間の血流は通常頭に流れやすく、下半身に流れづらいため、寒い場所で何も対策しなければ下半身だけが冷えた状態になってしまいます。
人間の体には「頭寒足熱」が良いといわれますが、これは下半身の冷えを防ぎ全身を均等に温めるためのものです。
暖房器具はこの逆で「頭熱足寒」状態を作り出してしまうので、下半身の冷えは改善されず、頭だけが過剰に温められた結果、脳の血管が拡張してしまい、片頭痛やめまいなどを引き起こしてしまいます。
また寒い屋外から急に暖かすぎる室内に入ることも不調の原因のひとつです。
急激な気温の変化に適応できず、自律神経が乱れた結果、さまざまな身体不調が引き起こされるのです。
いわゆる「クーラー病」と同じ原理ですね。
空気を温めることが目的の暖房器具ですが、温め方によっては不調の原因となります。

原因② 乾燥による脱水

冬はもともと空気が乾燥していますが、暖房器具を使うことでさらに乾燥がひどくなると感じたことはありませんか?
空気中の水分量が暖房器具によって減ってしまうわけではなく、室内の温度が上がることにより、空気中の飽和水蒸気量(空気中に存在できる水分の量)が増えてしまい、空気中の水分量が変わらなくても相対的に湿度が下がってしまうからです。
乾燥に晒された体は水分を欲しますが、皆さんは冬場に積極的に水分をとっていますでしょうか。
夏場は喉の渇きを感じるので何も意識しなくても水分を摂取する機会は増えると思いますが、冬場は喉の渇きを感じづらいため、意識をしなければ水分不足に陥りがちです。
その結果脱水状態に陥り、頭痛やめまいにとどまらず、最悪の場合は意識障害や死に至ります。

原因③ 一酸化炭素

暖房器具の中でも、石油ストーブ、ガスストーブ、ファンヒーターなどの開放型暖房器具を使用されている方は、この原因が当てはまるかもしれません。
これらの暖房器具は空気中の酸素を使って燃焼し、排気ガスを出していますので、室内の空気は汚染され、酸素濃度が低下し、非常に毒性の高い一酸化炭素が増加してしまうことが特徴です。
増加した一酸化炭素によって中毒に陥ると、頭痛、吐き気、めまいなどの症状があらわれ、脱水と同様、やがて死に至ります。
また一酸化炭素は無味無臭なのですが、臭いに過敏な人は、石油やガスの燃える独特の臭いに反応して頭痛や吐き気などの不調を起こしてしまうこともあるようです。
いずれにしても注意が必要ですね。

これらが原因となって暖房器具による不調が発生します。
ひとつだけではなく複数の原因が重なっている可能性もありますので、きちんと対策しながら暖房器具を活用することが必要です。

暖房病の対策方法

ここからは暖房病の対策方法についてご紹介します。

対策① 屋内でも屋外でも足元を中心に厚着をして防寒

先述したとおり「頭寒足熱」といいますので、寒さを感じるときは暖房器具を強めるよりも、足元を中心にしっかりと温めることが大切です。
屋外ではもちろん、屋内でも靴下、ルームシューズ、ブランケットなどを活用し、足元が冷えないようにしましょう。
最近では「冷え取り靴下」と称して重ね履き専用の靴下も販売されているようです。
床の冷たさが気になる方は、温かいラグや電気式のホットカーペットなどを敷くことでも足元の冷えを防ぐことができますよ。
逆に頭のほてりや、脈打つようなズキズキとした痛みを感じるときは、おでこやこめかみなど痛む箇所をタオルに包んだ保冷剤で軽く冷やすと緩和されます。
ただし首は太い動脈が通っていて冷やすと全身の体温が下がってしまうため、冷やしすぎないように注意してくださいね。
また屋外と室内との急激な寒暖差による不調をなくすためにも、帰宅時はいきなり暖房を強度に設定するのではなく、しばらくは弱めに設定し、厚着をして体を直接温めることがおすすめです。
逆に外出時は家を出る少し前から暖房を弱め、外と同じように厚着をして過ごすと不調に陥りづらくなりますよ。

対策② 加湿と水分補給

乾燥による脱水を防ぐために有効なのは、加湿と水分補給です。
暖房器具を使うときは、加湿器を活用したり、濡れたタオルや洗濯物を室内に干したりして、空気を加湿しましょう。
加湿することはこの時期ウイルス対策としてもおすすめですよ。
また自分自身の脱水を防ぐために、喉が渇いていなくてもこまめに水分補給をしましょう。
この際冷たい飲み物ではなく、常温もしくは温かいものを飲むことで体の冷えを防ぐことにもつながります。
ただし、アルコールを含む酒類や、カフェインを含むコーヒー、紅茶などは利尿作用によって脱水を促進してしまうため避けるようにしてくださいね。

対策③ 定期的な換気

開放型暖房器具による一酸化炭素中毒を防ぐためには、定期的な換気が必要です。
換気も、加湿と同様にウイルス対策にも効果がありますよ。
寒い中で換気をすることに抵抗のある方もいらっしゃると思いますが、命にかかわることですので、最低でも1時間に1回、5分以上は必ず窓を開けたり換気扇を回したりしましょう。
効率的に換気するためにも一か所ではなく、対角線上に窓を2か所開けたり、窓を開けながら同時に換気扇も回したりすることがおすすめです。
また自力で換気のできない子どもやお年寄りがひとりで過ごす時間が長いご家庭では、開放型暖房器具は使用せず、別の暖房器具を選ぶようにしてくださいね。

上手な暖房器具との付き合い方

中にはどんなに対策をしても、暖房器具による不調が避けられないという方もいらっしゃると思います。
とはいえ、この寒さに耐えて過ごすこともあまり体に良くありません。
そんな方は暖房器具で空気を温めるのではなく、直接体を温めることを意識しましょう。
対策の中でもご紹介した、足元を中心に厚着をする方法や冷たい飲み物を避ける方法以外にも、毎日シャワーで済ませずに湯船につかる、湯冷めしないように髪を乾かして早めに布団に入る、温かいものを摂取する、基礎体温を上げるために筋トレをするなど、日々の生活習慣の見直しが有効です。
またオフィスの暖房によって不調に陥る方は、気分が悪くなったら厚着をして屋外で深呼吸をすることや、ひどい場合は無理をせず、設定温度を見直してもらうように会社に申し出ることも必要です。
そして自分は暖房で不調を感じたことがないという方も、これを機にオフィスの空調設定において、さまざまな人に理解を示せるようになるといいですね。
上手に暖房器具を活用して、この冬を元気に乗り切りましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

北原梨英株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学を卒業後、保健師として活動するほか、健康経営エキスパートアドバイザーとしてさまざまな企業様の健康経営を支援してきました。現在はセミナーのご依頼が最も多く、得意とする女性の健康増進と活躍推進をはじめ、多くのテーマでお話をしております。「従業員に長く健康に働き続けてほしい」「健康経営に取り組みたい」「健康経営優良法人の認定を目指したい」などお悩みがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。どのようなご状況の企業様にも親身に寄り添って、今すぐできることからご提案し、一緒に取り組んでいくことをお約束いたします。
【保有資格】保健師、健康経営エキスパートアドバイザー、看護師、第一種衛生管理者、人間ドック健診情報管理指導士
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼などはこちらからお願いします】

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 【動画あり】「コロナかも」従業員が激増!会社はどう対応する?~コロナが疑われる従業員、休ませた場合の手当は会社が支払うべき?~

一目置かれる健康知識

ページ上部へ戻る