皆さん、日本テレビ系列で10月14日に放送が始まったドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」は見ましたか?
数ある恋愛ドラマの中でも、女優の波留さんが演じる主人公の大桜美々の職業はなんと、一般企業に勤める「産業医」という珍しいものです。
主人公たちの恋愛模様も気になるところですが「産業医という仕事が気になった」「産業医の存在を初めて知った」という方も多いのではないでしょうか。
実際にドラマの放送後、産業保健師をしている私のもとには友人たちから「うちの会社にも産業医っているのかな?」「本当にあんなふうに仕事しているの?」「あのイケメン看護師は何者?」など疑問がたくさん寄せられました。
今回は気になる「産業医」の仕事について、ドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」の第1話のシーンを振り返りながらご紹介します。
そもそも産業医とは
産業医は何をする人か
産業医とは何をしている人のことなのでしょうか。
日本医師会によると「事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師」を産業医とよびます。
医師というと、医療機関に勤めていて、皆さんが病気や怪我をしたときに、診断や治療をしてくれるイメージがあるかもしれませんね。
しかし産業医は「#リモラブ」の主人公である大桜美々のように一般企業に勤めており、診断や治療をすることはありません。
では何をしてくれるのかというと、働く人たちが安全に、心身ともに健康に働き続けるために必要なアドバイスや管理をしてくれています。
産業医の具体的業務とは
働く皆さんは最低でも年に一度、健康診断を受けていますよね。
その健康診断結果は皆さんの手元に届くだけでなく、産業医が選任されている場合、必ず産業医が結果を確認しています。
そして受診や再検査の必要性がある場合や、これまでと同じ働き方を継続していると健康被害が発生する可能性が高いという場合には、産業医から会社や皆さんへ今後に関するアドバイスをすることがあります。
健康診断の結果確認はあくまで一例ですが、ほかにも体や心に不調を抱えている方と面談をして今後の働き方についてのアドバイスをしたり、ストレスチェックの結果を確認して職場環境改善に関するアドバイスをしたり、長時間労働者の健康状態を確認したり、職場の環境が皆さんにとって危険な状態ではないかを巡視したり、衛生委員会という委員会に毎月出席して皆さんの安全と健康を守るためにどのような活動を進めていくかを会社や労働者の代表と話し合ったり……、皆さんが想像する以上に多岐にわたる仕事をしています。
50名以上の事業場なら、産業医がいます
働く皆さんのためにここまで活動している産業医ですが、「産業医がいるなんて知らない」「会ったことがない」という方も多いのではないでしょうか。
「そもそも産業医はうちの会社にもいる?」という疑問に対するお答えとしては、労働安全衛生法により、従業員数50名以上の事業場では産業医を選任することが義務づけられていますので、皆さんがお勤めの職場に従業員が50名以上いらっしゃる場合は産業医が必ず選任されていることになります。
ただし「#リモラブ」のように産業医が会社に常駐する義務があるのは従業員数1,000名以上(※特定の有害な業務をしている場合は従業員数500名以上)の大規模な事業場のみです。
実際に、大桜美々が勤める「株式会社鐘木パルプコーポレーション」通称カネパルは、従業員数1,129人と大規模な事業場です。
中小規模の事業場では、会社に常駐しているわけではなく、月に1回程度、定期的に会社に訪問して、必要な活動をまとめて行っています。
そのため自社の産業医と直接会ったことがなく、これまで存在を知らなかったという方が多いのかもしれません。
しかし先述したとおり、皆さんが健康に働き続けるために欠かせない役割を担っているのが産業医です。
せっかくなので、このドラマを機に、産業医のお仕事についてもっと詳しく知っていきましょう。
「#リモラブ」第1話のシーンで振り返る産業医の仕事
産業医という存在は知っているという方でも「#リモラブ」第1話をご覧になって「産業医ってこんな人なの?」「本当にこんな仕事しているの?」と思った方がいらっしゃると思います。
主人公の大桜美々は従業員に対しての厳しさが目立ち、劇中では「健康管理室の独裁者」と呼ばれるほどの強烈なキャラクターで、従業員たちからは「人を人として見ていない」「鉄仮面」「嫌われている」などの悪口を言われてしまうほどでした。
実際の産業医もこういう方ばかりなのでは、と不安になってしまったかもしれませんが、そんなことはありません。
厳しくテキパキと指導をしてくれる産業医もいれば、温厚で優しい産業医もいますし、普通の人と同じように産業医のキャラクターも十人十色です。
ただ多くの産業医の先生にお会いして、一緒にお仕事させていただいた私が感じる産業医の共通点としては、大桜美々と同じように「働く人の安全と健康を守りたい」という強い思いを持っていることだと思います。
大桜美々も厳しさばかりが目立ちますが、それは従業員を守りたいという強い思いの裏返しであるともいえますよね。
とはいえ私自身は、大桜美々ほど厳しい産業医に出会ったことはありません(笑)
ほとんどの産業医が従業員にとても丁寧に、親身に接してくださると思いますので、これから産業医面談を受けてみようかなと考えている方は怖がらなくて大丈夫ですよ。
不安な場合は自社の産業医がどんな人か、あらかじめ人事部の方に聞いておくといいでしょう。
さて、大桜美々のキャラクターはさておき、劇中でおこなっていた仕事を振り返り、「本当にこんなことするの?」という疑問に答えていきたいと思います。
37.5℃以上の熱がある従業員がいないかチェックしていたシーン
こちらは本当にあり得る仕事です!
産業医の仕事の中には、新型コロナウイルスをはじめとする感染症から従業員を守ること、社内での感染拡大を防ぐことも含まれます。
したがって、コロナ禍において従業員に毎日の検温を命じることや、検温結果をチェックすることも産業医の仕事のひとつです。
また、ドラマの中で大桜美々が営業部の岬に対しておこなったように、発熱がみとめられる場合には、本人に連絡をとって症状の有無を確認し、場合によっては帰宅してもらい自宅待機をお願いすることもあります。
ドラマのように発熱している従業員を社内中追いかけまわしたり、本人の平熱や症状の確認もせずに問答無用で帰宅を命じたりすることは、ドラマの演出上のややオーバーな表現ではありますが、舞台は緊急事態宣言が出る前の2020年4月で、今以上に新型コロナウイルスについて明らかになっていないことが多かった時期です。
当時はまだ検温している期間も長くないので、個々人の平熱がわかりづらかった時期でもあるでしょうし、37.5℃以上の発熱があれば、症状がなくても大事をとって帰宅させるという判断は間違いではなかったのではないでしょうか。
またドラマでは大桜美々が直接岬に連絡していましたが、常駐している産業医のいない中小企業では、産業医の訪問時に感染拡大防止のための取り組みや、検温、帰宅を命じる基準などについてアドバイスをもらい、それに従って自分たちで取り組みをおこなうことが一般的ですよ。
マスク着用やソーシャルディスタンス確保について従業員へ指導するシーン
ドラマの中で強く印象に残っているのが、大桜美々が社内の従業員に対して「ソーシャルディスタンス!」「マスク着用!」と厳しく呼びかけるシーンではないでしょうか。
あの厳しい言い方もドラマ上のオーバーな表現ではありますが、従業員への感染予防に関する指導そのものは、本当にある仕事です!
先述したとおり、感染症対策も産業医の仕事ですので、新型コロナウイルスの感染拡大に効果があるとみられるソーシャルディスタンスや、正しいマスク着用について指導することも重要な役割です。
また、ドラマでは大桜美々が社内を移動している際に偶然見かけた従業員に対して指導をおこなっていましたが、一般的には月に1度の実施が義務付けられている職場巡視の際に、職場の環境だけではなく従業員の皆さんの様子もチェックして、必要に応じてその場で声かけや指導をおこなうことが多いでしょう。
新型コロナウイルス対策会議に参加するシーン
ドラマの舞台となっているカネパルでも、新型コロナウイルス対策として在宅勤務が導入されましたね。
その導入前に感染対策について会議をするシーンがあり、その会議に産業医である大桜美々が出席して、在宅勤務中の感染予防について講話をしていました。
こちらも本当にあり得る仕事です!
産業医は新型コロナウイルスのような有事の際にはもちろんのこと、常日頃から、季節ごとに注意しておきたい健康管理のポイントなどについて、事業場の安全衛生にかかわるメンバーや従業員に対して講話をすることがあります。
ほとんどの方は医師の話を聴く機会というと病気や怪我などで医療機関を受診したときくらいかと思いますが、病気や怪我をする前に、予防に必要なことを医師から教えてもらえるのなら、大変ありがたいですよね。
ちなみにこの会議後に大桜美々が人事部の青林から「コロナ禍で彼女ができたがどう接したらよいか」という質問をされるシーンがありましたが、このように従業員から個別に健康相談を受けることも実際にあります。
基本的には恋愛相談ではなく、あくまで自分の健康や今後の働き方にかかわる相談に限ります(笑)
このように、「#リモラブ」に登場した産業医の仕事シーンは、多少オーバーな表現はあるものの、本当に産業医がおこなっている仕事の一部です。
そう考えると仕事シーンのリアリティはなかなかのものですね。
一緒に働いていた「美男美女の看護師さん」は何者?
ところで、大桜美々が勤務しているカネパルの健康管理室には、ついひじ杏奈さんが演じる駒寺夏樹と、ジャニーズJr.の髙橋優斗さんが演じる八木原大輝のふたりの看護師も勤めていました。
医師と同様に、看護師も一般的には医療機関に勤めているイメージですよね。
彼らは一般企業に勤めている「産業看護師」という存在です。
基本的には産業医と同様、働く人の心身の健康管理や安全衛生管理を目的として、産業医がおこなっている業務のサポートをおこなっています。
産業医ひとりではすべての従業員の管理をおこなうことが難しいため、産業医が実施しなければいけない業務と看護師でもできる業務を整理して分担するほか「いきなり産業医に相談するのはハードルが高いけれど看護師さんなら……」という従業員からの相談を受けて、必要時に産業医や人事へ繋ぐというスクリーニングの役割を果たすこともあります。
企業によっては産業看護師ではなく、筆者のように保健師資格を有する「産業保健師」を設置しているところもありますよ。
ただ、看護師や保健師は、産業医と異なり選任義務がありませんので、必ずしもいるとは限りません。
産業医が常駐しているような比較的大規模な事業場ですと、産業医の業務も多いため、常駐している看護師や保健師にお目にかかれる可能性は高いかもしれません。
もちろん、中小規模の事業場でも、常駐ではなく月に1回程度など定期的な訪問という形で設置していることもありますし、産業医と同様に重宝されているという話をよく聞きます。
ドラマを視聴するにあたって、産業医と同様に、産業看護師のふたりの仕事ぶりにも注目してみるといいですね。
今後も目が離せないドラマ「#リモラブ」。
実際に今50名以上の従業員がいる職場に勤めている方は、自分の職場の産業医がどんな先生なのかを人事部に確認してみたり、衛生委員会のメンバーに立候補してみたり、何か悩み事がある場合は悩みを相談したいと申し出てみてもいいかもしれません。
このドラマを通じて、皆さんにとって産業医や産業看護師という職業をもっと身近に感じていただけると筆者としてはとても嬉しいです。
恋愛模様だけでなく、産業医や産業看護師のお仕事にも注目してみてください。