コロナ禍の影響を受け、生活習慣病患者の受診控えや在宅勤務による生活習慣病の悪化、検診未受診による疾病の発見遅れなどが心配されています。
そんななか河野太郎行政改革・規制改革担当相が、2020年10月9日の会見で「安全性と信頼性をベースに、オンライン診療について初診を含め原則解禁する」と述べました。
オンライン診療の初診は、疾病の見落としや誤診を防ぐ、医師と患者の信頼関係を基盤とした診療が必要などの理由から、原則適用対象外とされていました。(※現在は新型コロナウイルスにより特例措置として認められています)
今後は、産業医や保健師による健康相談(面談)だけでなく社員にオンライン診療を利用するよう助言を行う機会が増えたり、社員で利用する方が増えたりする可能性があります。
実際に保健師である筆者も、保健指導を行う中で面談した方から「オンライン診療を利用している」と聞く機会が増えました。
今回は「オンライン診療」についてわかりやすく解説します。
オンライン診療とは?
オンライン診療は、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2018年3月公表、2019年7月改訂)で以下のように定義されています。
オンライン診療
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為
高血圧の方の血圧コントロールの確認などが当てはまります。
オンライン受診勧奨
(前略)情報通信機器を通して患者の診察を行い、医療機関への受診勧奨をリアルタイムにより行う行為であり、患者からの症状の訴えや、問診などの心身の状態の情報収集に基づき、疑われる疾患等を判断して、疾患名を列挙し受診すべき適切な診療科を選択するなど、患者個人の心身の状態に応じた必要な最低限の医学的判断を伴う受診勧奨。一般用医薬品を用いた自宅療養を含む経過観察や非受診の勧奨も可能である。(後略)
発疹に対し問診を行い、「あなたはこの発疹の形状や色ですとじん麻疹が疑われるので、皮膚科を受診してください」と勧奨するなどがあてはまります。
社員のオンライン診療の活用
社員のなかには、新型コロナウイルス感染への懸念から、治療(受診)を中断している方もいるかもしれません。
オンライン診療では、高血圧の方の血圧コントロールの確認、糖尿病の方の血糖コントロールの確認などができますので、通院が必要な慢性疾患の方が治療を継続する一つの方法ともなりますね。
これまで同様、就業判定や健康相談など産業医との連携が基本となりますが、身体に症状が出ており、何科を受診したらよいかわからない場合などにはオンライン診療を活用できます。
また、身近に医療機関や専門機関がない場合にオンライン診療を活用することで、病気の早期発見につながる可能性があります。
さらに、禁煙外来でオンライン診療を行っている医療機関がありますので、健康相談などで紹介する機会もありそうです。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえてオンライン診療を行っている医療機関一覧は、厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」で公開されています。
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療について」
オンライン診療の注意点
急性の症状が出ている、検査や手術を受ける必要がある、その他医師が認めない場合などは、オンライン診療ではなく医療機関の受診をしましょう。(従業員にそのような方がいらっしゃる場合には、医療機関受診を勧めてください)
また、オンライン診療には、画面でのやりとりゆえに症状を見落とすリスク、医師・患者双方のなりすましなどの心配があります。
いずれにしても、主治医(かかりつけ医)や産業医を基本として活用していきましょう!
<参考>
厚生労働省「オンライン診療に関するホームページ」