厚生労働省は9月10日、指定感染症としての措置・運用のあり方に関するワーキンググループの会合を開き、新型コロナウイルス感染症の措置運用を見直す議論を行いました。
厚生労働省「指定感染症としての措置・運用の在り方に関するワーキンググループの資料等」
主な内容は、以下2点です。
① 新型コロナウイルス感染症の入院措置
② 新型コロナウイルス感染症と疑われる患者の医師から行政機関の届け出
②は主に診断をする医師の届け出についての内容となりますので、今回は①について詳しくご説明いたします。
「指定感染症」とは
ひとくちに感染症といっても、エボラ出血熱、結核、新型インフルエンザなど、さまざまな病気があります。
感染症法では、症状の重さや病原体の感染力から、感染症を一類感染症~五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症、指定感染症という区分に分け、各区分の危険度に応じた措置が取られています。
新型コロナウイルス感染症は「指定感染症」に指定されています。(2021年2月6日まで)
指定感染症とは、「一~三類感染症、および新型インフルエンザ等感染症に分類されない感染症の中で、一~三類に準じた対応の必要が生じた感染症」とされています。
未知の点も多い感染症であることから、国内の状況やウイルスの特性が明らかになっていく中で、どのような措置が適切か、柔軟に対応をとる必要がある区分とも言えます。
指定感染症に登録されていることにより、現在、患者本人はもちろん疑似症患者(ウイルスは検出されていないが、新型コロナウイルス感染症に似た症状がある人)、無症状者(症状はないが、ウイルスが検出された人)を強制的に入院させることができる権利を各都道府県は有しています。
ただし感染者であっても、無症状や軽症で入院の必要がないと医師が判断した場合には、ホテルなどの宿泊療養施設や自宅での療養が認められています。
今回見直されている方向性とは?
新型コロナウイルス感染症は、知られているとおり若年者は重傷者割合が低く、65歳以上の高齢者や糖尿病・肥満・呼吸器疾患などの基礎疾患がある人が重症化しやすいとされています。
流行初期と比較すると検査体制が整えられてきた現在では、軽傷や無症状患者が増加しており、一律に入院措置を取ると、医療のひっ迫につながる可能性があります。
まもなく、インフルエンザの流行シーズンになります。
さらに医療機関の負担が増加する可能性があることから、感染が確認された人を一律に入院とするのではなく、入院が必要な者への基準を明確にし、感染拡大を防ぎながら重症者・重症化リスクのある人に十分な医療を提供できるように基準を定めてはどうか、という方向になっています。
入院の必要がないと判断された場合でも、感染拡大防止のため宿泊療養や自宅療養を求めるという考え方は変わりませんが、これまで以上に自宅療養者が増える可能性があるということです。
新型コロナやインフルエンザに感染した場合の職場復帰はいつ?
インフルエンザの症状は、発熱、咳、倦怠感などであり、新型コロナウイルス感染症の主な症状ととても似ています。
医療機関で検査を行い、結果が出るまではどちらか判別することは大変難しいです。
従業員にこれらの症状が見られた場合、通常の風邪だけではなく、インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症両方の可能性があるということになります。
ですので、発熱など疑わしい症状が出た場合は、まずはかかりつけ医などの地域で身近な医療機関に電話相談することが原則です。
新型コロナウイルス感染症に感染した場合は、以下のように療養生活終了とする判断基準を定めています。(2020年10月時点)
従業員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合、職場復帰の判断は主治医の判断が基本となりますが、一般的な療養終了の目安が厚生労働省より示されています。
医療機関に入院しなかった場合も同様ですので、従業員が感染し、自宅療養となった場合の目安にするといいでしょう。
引用元:厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」
一方、インフルエンザになった場合は、職場復帰の明確な基準は定められていません。
しかし、学校での出席停止期間を定めている学校保健安全法施行規則では「発症後5日、かつ、解熱後2日」とされています。
詳細は、過去の記事をご参照ください。
今年の冬は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症、両方の可能性を視野にいれておかなければなりません。
しかし、どちらも基本的な感染予防の対策法は同じです。
個人としてはもちろん、職場としても、引き続き「新しい生活様式」に則った対策をしていきましょう。