【基礎編②】産業保健師ってどんな人? ~産業保健師の就業人数と対象者~

今回は、シリーズでお伝えしている「産業保健師ってどんな人」の基礎編②です。
前回の基礎編①では「働く人に伝えたい医療現場で感じた健康管理の大切さ」というテーマから、産業保健師のことを紹介しました。

皆さんは、看護師も保健師もどちらも国家資格であると存じでしょうか?
看護師と保健師の国家試験は同年に受検できるのですが、保健師は必ず看護師の国家試験を受け、合格する必要があります。
保健師の国家試験だけ受かって、看護師の国家試験に落ちてしまった場合、看護師にも保健師にもなることができません。
これは意外と知らない方が多く、皆さんにお伝えすると驚かれるので、ちょっと小話としてご紹介しました。

つまり保健師は看護師も保健師の資格も両方持っているということになりますので、看護師の業務に従事することが可能です。
私自身も産業保健師になる前に、大学病院で看護師として勤務していました。
保健師のベースには看護師があるということをお伝えしましたが、では「看護師と保健師はどう違うの?」という部分を、看護師、行政保健師、産業保健師と比較しながら、簡単にイメージできるようにお伝えします。

看護師と行政保健師と産業保健師との就業人数の違い

「看護師」と聞けば多くの方が、職業をイメージしやすいのではないでしょうか?
働いている看護師の人数は160万人を超えているので、身近な存在かと思います。
それにくらべて「保健師」はいかがでしょうか?
皆さん保健師さんに会ったことはありますか?
現在就業している保健師は約6万人になり、保健師の約60%が都道府県や保健所、市区町村で働いています。
残りの保健師が病院や健診センターで働いており、企業内で働く保健師は全体のわずか4%とかなり少ないです。
ですので、産業保健師を知らない人が多いこともうなずけます。
私も実際にこの業界に入る前には産業保健師に会ったことがありませんでした。

看護師と行政保健師と産業保健師の違い

看護師も、いろいろな場所で働いていますが、今回はイメージしやすくするために、病院で働く看護師の場合で考えてみましょう。
病院勤務の看護師の場合、対象者のほとんどが患者や患者家族となります。
患者の年齢層はかなり幅広く、お子さんから高齢者までが対象となります。
特徴としては、多くの方が体調不良や日常生活に支障をきたしており「治療のために」病院に来ている点です。

行政保健師はその地域に住んでいる方がメインの対象者になります。
その地域に住んでいる方が対象者のため、年齢層はかなり幅広く、お子さんから高齢者までが対象となり、看護師よりも対象範囲は、より広くなるといえます。

では、産業保健師はどうでしょうか?
産業保健師の対象者は、会社に勤める社員全員です。
年齢層は20代~60代が多いです。

このように看護師、行政保健師とは対象者の年齢層、対象範囲が異なります。
また産業保健師の対象者の大きな特徴は、対象者は「仕事をしている」という点です。
これは、先ほどの看護師の対象者のように「治療意欲のある人」と比較してみると違いがわかりやすいと思います。

ここで、皆さんに、よくある事例を出してみます。
もし、あなたが、Aさん、Bさんの2名に、健康診断の結果を確認したところ、医療機関の受診を促す必要があるとします。
Aさん「身体のどこかに不調や痛み等の自覚症状があり、それを改善したい、治療したいと思っている」という方。
Bさんは「仕事に来ているのだから、私は元気です。自覚症状は何もない。どこも痛くも痒くもないので、病院に行く必要も、今の生活習慣を変える必要性を感じていない」という方。

あなたならAさん、Bさんにそれぞれどんな声掛けをしますか?
AさんBさんは同じアプローチ方法で上手くいくのでしょうか?

「そんなふうに聞かれても、わからない」と思った方も多いかもしれませんね。
Bさんのような自分自身の健康に対して関心が低い方に、どのようにアプローチをすると効果的かを考えるもの産業保健師の楽しいところです。
私も日々たくさんの方と面談して、その力を鍛えています。
また対象者の特徴も企業によって様々です。その企業の業種や平均年齢、働き方によって、抱えている健康問題が異なるのが大きな特徴です。
この特徴を健康診断のデータや面談内容から分析して、その集団にあった適切な対策を考え・実行し、少しずつ改善していくのを見るのが、私が産業保健師をやっていて面白いなと感じ、さらにやりがいを感じる部分です。
この辺りについては、今後詳しく解説します。

まとめ

今回は産業保健師について、看護師や行政保健師との、就業人数や対象者の違いについて説明してきました。
少しでも「産業保健師ってどんな人なのか?」と知っていただき、興味を持ってもらえれば幸いです。
次回も産業保健師についてわかりやすくお伝えしていきます。

産業保健師に興味を持った方はこちらも合わせてご覧ください。
【働く方向け】

【人事担当者向け】

【保健師資格保有者・産業保健師への転職を考えている方向け】
・ ドクタートラストが運営する産業保健師サイト
・ 産業保健師のインタビュー記事

<参考>
公益社団法人日本看護協会「看護統計資料」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

清 あいり株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

看護師として大学病院に勤務後、産業保健師にキャリアチェンジ。大手民間企業で、健診事後措置の面談指導や特定保健指導、メンタルヘルス対策、復職支援など幅広く産業保健業務に携わる。社員向けの健康教育では「気づき」や「やる気」を引き出す関わり方で高い評価を得る。ドクタートラストでは、これまでの経験を活かし、企業向けの健康教育セミナーや、情報発信を積極的に行っている。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、健康経営アドバイザー
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

この著者の最新の記事

関連記事

解説動画つき記事

  1. 衛生委員会等のオンライン開催についての通達が示されました

    【動画あり】もっと深く知りたい方必見!衛生委員会等のオンライン開催について詳しく説明します

一目置かれる健康知識

ページ上部へ戻る