最も多く取り組まれている産業保健活動2位はメンタル対策、1位は?~「令和5年労働安全衛生調査」からわかったこと~

こんにちは。前回の記事では「社内での産業医・産業保健師の認知度を上げるコツ」というテーマで解説しました。
まだ読んでいない方、興味のある方は、こちらからご覧ください。

皆さんは、他の企業が、どんな産業保健の取り組みをしているのかご存じでしょうか?
他社の状況について参考となるのが、2024年7月25日に厚生労働省から公表された「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」(以下、本調査)の結果です。
本調査は「事業所が行っている安全衛生管理、労働災害防止活動およびそこで働く労働者の仕事や職業生活における不安やストレス等の実態について把握し、今後の労働安全衛生行政を推進するための基礎資料を得ることを目的」として実施されています。
以下では、本調査結果をもとに、産業保健の取り組み実態を見ていきます。

産業保健に関する項目

本調査結果の「産業保健に関する項目」によると、産業保健の取り組みを行っている事業所の割合は87.1%となっています。
このうち、産業保健の取り組みでは「健康診断結果に基づく保健指導」が74.7%と最も多く、次いで「メンタルヘルス対策」が74.2%でした。

<産業保健の取り組みの有無とその内容(複数回答)>
・ 健康診断結果に基づく保健指導:74.7%
・ メンタルヘルス対策:74.2%
・ 健康診断の結果、治療・服薬・就業上の配慮等の措置が必要なものに対する指導、支援、相談:61.0%
・ 高年齢労働者の身体的機能の低下等を踏まえた就業上の配慮:34.8%
・ 私傷病(がん、精神障害等)を抱える労働者の治療と仕事の両立支援:29.9%
・ 女性の健康課題(更年期障害、月経関連の症状・疾病等に対する配慮、支援):29.2%
・ 睡眠、喫煙、飲酒等に関する健康的な生活に向けた教育や相談:25.2%
・ 化学物質等の有害物を取り扱う者に対する健康診断等の健康管理:10.5%
・ テレワークを行う労働者に対する健康相談体制や適正な作業環境の整備等:7.0%
・ その他:0.5%
・ 産業保健の取り組みを行っていない:12.5%

まずは自社の取り組み状況と比較してみよう!~特に50人未満の事業所は必見~

前述のとおり、本調査結果では、産業保健の取り組み内容としては「健康診断結果に基づく保健指導」が最も多い結果でした。
「健康診断結果に基づく保健指導」とは、一般的には産業医選任義務のある事業所の場合、健康診断結果にもとづく就業判定、産業医面談での精密検査の受診勧奨、食事や運動の指導などが挙げられます。
本調査結果では、特に産業医選任義務のある50人以上の事業所で8割を超え、300人以上の事業所では9割を超える結果となっているなど、事業所の規模に比例して実施割合が高い傾向にありました。
また2番目に多い取り組み「メンタルヘルス対策」も50人以上の企業で9割を超える結果となっているのに対して、30~49人の事業所は78.8%、10人~29人の事業所では68.5%でした。

労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画「第14次労働災害防止計画」(2023年4月から2028年3月までの5か年計画)では「メンタルヘルス対策に取り組む事業場の割合を80%以上」と目標が定められています。
50人未満の事業所においてメンタルヘルス対策に取り組んでいない理由については「該当する労働者がいない」「取り組み方法がわからない」「専門スタッフがいない」などがあるようです。
こうした産業医選任義務のない事業所でメンタルヘルス対策をしていく上でお勧めなのは、厚生労働省運営「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」の活用です。
「こころの耳」には、メンタルヘルスに役立つ情報やコンテンツが多く収載されています。
特に「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」というページは、事業所の規模や業種で検索することもできます。
ぜひ一度チェックしてみてください。

さらに50人以上いる事業所でも確認していただきたいのが、職場における心の健康づくりとして「労働者の心の健康の保持増進のための指針」や「職場復職支援プログラム」です。
もし、準以下のページを参考に衛生委員会や産業医などの協力を得つつ準備を進めていきましょう。

・ 厚生労働省「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」
・ こころの耳「職場復帰支援eラーニングで学ぶ『15分でわかる職場復帰支援』」
・ こころの耳「パンフレット・リーフレット」

まとめ

今回は、厚生労働省公表「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」の結果をもとに、産業保健の取り組み状況を解説しました。
産業保健の専門職として、少しでも皆様のお力になれれば幸いです。
次回の記事もお楽しみに!

<参考>
厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 」


衛生委員会の運営でお困り、お悩みをお持ちの方は以下も合わせてご覧ください

・ ドクタートラスト「産業保健活動の悩み1位「○○○○化」の打開策は?~ドクタートラストが企業の担当者にアンケート~」
・ 産業保健新聞「衛生委員会を活性化させるポイントは『○○○○○』が言える雰囲気」

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・ドクタートラスト「産業保健師サイト」
・ドクタートラスト「産業保健師インタビュー」

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清 あいり株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

看護師として大学病院に勤務後、産業保健師にキャリアチェンジ。大手民間企業で、健診事後措置の面談指導や特定保健指導、メンタルヘルス対策、復職支援など幅広く産業保健業務に携わる。社員向けの健康教育では「気づき」や「やる気」を引き出す関わり方で高い評価を得る。ドクタートラストでは、これまでの経験を活かし、企業向けの健康教育セミナーや、情報発信を積極的に行っている。
【保有資格】保健師、看護師、第一種衛生管理者、健康経営アドバイザー
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
【ドクタートラストへの取材、記事協力依頼、リリース送付などはこちらからお願いします】

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