なぜ起こる?どう防ぐ?長引く&つらい新型コロナ後遺症

2020年が始まって間もなく、新型コロナウイルス感染症が流行し始め、私たちの環境や生活は大きく変化しました。
医療や健康、社会の在り方などさまざまな場面において新しい視点を持つようになったのではないかと感じます。
国内で新型コロナウイルス感染症に罹患者数は、2023年5月9日時点で約3,400万人にのぼります。(5類移行までの全数把握の感染者数)
現在新型コロナウイルスによる行動制限などはなくなり、以前の日常に戻ってはいますが、感染者は毎日確認されています。
そして、症状回復後にさまざまな症状が長期にわたって持続する「新型コロナの後遺症」に苦しめられる方々もいることがわかっています。いまだ原因不明な点も多く、全貌は解明されていませんが、今回は新型コロナウイルスの後遺症について解説します。

① 新型コロナウイルスの後遺症とは?

コロナウイルスは風邪の病原体として人類に広く蔓延している4種類、動物から感染するSARSとMERSが知られていました。
そして2019年に私たちが一般的に新型コロナウイルスと呼んでいる「COVID-19」が発見され、全世界で感染拡大しました。
無症状から重症まで非常に個人差がありますが、ほとんどの場合、時間経過とともに症状が改善します。
しかし、新型コロナウイルスの発症から通常3か月以内に出現し、少なくとも2か月以上続く、他の病気の症状としては説明がつかない症状のことをコロナ後遺症と判断されます。
身体的症状だけでなく精神的な症状にも影響する方がいるため、日常生活や健康状態に多大な影響を与える可能性があります。
症状は多岐にわたり個人差も大きいですが、以下のような症状を示す方が多いといわれています。

・ 呼吸器:呼吸困難感や息切れ、咳など
・ 神経:頭痛、めまい、記憶力や集中力の低下など
・ 心臓:動悸や不整脈、心臓の痛みなど
・ 消化器:腹痛、下痢、吐き気など
・ 免疫:慢性的な炎症や自己免疫疾患発症のリスク上昇など
・ その他:倦怠感、抜け毛、睡眠障害、味覚や嗅覚鈍麻、ホルモン分泌異常、月経異常など

また、2022年12月27日に公開された、大阪公立大学の研究グループのアンケート調査によると、アンケートに回答した新型コロナウイルス感染者のうち、半数以上に少なくとも1つ以上の後遺症が残っていると明らかになりました。

無症状・軽症:倦怠感、抜け毛、集中力や記憶力の異常、睡眠障害が多く残る
中等症~重症:倦怠感、呼吸困難感、味覚障害、抜け毛、集中力や記憶力の異常、睡眠障害、関節痛、頭痛が多く残る

重症度によっても若干症状に差が出るようです。
そして症状は数か月、ひどい方は年単位で続くとの報告もあります。

② 後遺症の原因は?

新型コロナウイルスが発見されてまだ数年しか経っていないため、全貌は明らかにされていません。
今さまざまな機関が研究や調査をしている段階です。

●現時点で後遺症の原因と考えられているもの

・ コルチゾール量の半減」身体の状態を一定に保ちストレス反応に関わるホルモンが減少するため
・ インターフェロンγ値の上昇:ウイルスに感染するとインターフェロンγと呼ばれる炎症性タンパク質が分泌される。通常は症状が治まり回復すると分泌が止まるが、後遺症が続いている患者は高値が続くため
・ 血栓の形成:新型コロナウイルスのスパイクタンパク質が微小血栓の形成を誘発。人体に備わった血栓を溶かすしくみでは壊れにくい特徴を持つ。その微小血栓が毛細血管を塞いでしまうと、血液の流れに影響が生じさまざまな不調を引き起こすため
・ 臓器炎症による機能障害:新型コロナウイルスに感染した部位を免疫が攻撃。臓器そのものが損傷し、その修復に時間がかかるため
・ ウイルスの残存:免疫によって排除されるはずのウイルスが体内に残存するため、後遺症が続く

③ 後遺症の対策

コロナ後遺症は「健康的な生活スタイルを持っている人では軽減される傾向にある」と米ハーバード公衆衛生大学院の調査で明らかになりました。

●後遺症リスクを軽減させることができる要因

・ 適正な体重
・ 禁煙
・ 運動の習慣化
・ 十分な睡眠
・ バランスのとれた食事
・ 適度なアルコール摂取
・ 過度なストレスをかけない

●炎症を促進させる食品(控えたほうが良いもの)

・ 精製された炭水化物(パンや麺類)
・ 清涼飲料水
・ 揚げ物
・ 加工肉
・ トランス脂肪酸(マーガリンやショートニング) など

●積極的に取りたい食品(ビタミンC・D、亜鉛が豊富に含まれている食品が効果的)

・ 野菜全般
・ キノコ類
・ 魚
・ 果物 など

リスクを軽減させる要因は、コロナ後遺症軽減のためだけでなく、他の多くの疾患に対しても有効なため、過去にたくさん解説されています。
日ごろから生活習慣改善に取り組めば、コロナ後遺症を軽減することが期待でき、また他の疾患の予防にもつながります。

過去の記事もぜひ参考にし、生活習慣改善に取り組んでください。

また、新型コロナウイルスの後遺症の程度は人それぞれのため、日常生活を送れないなどの酷い症状が続いている方は受診をおすすめします。
治療が必要な場合や薬などで症状を緩和できる可能性があるからです。
コロナ後遺症外来を掲げている医療機関がいくつかあるので、自身の居住地近辺で検索してみてください。

<参考>
・ 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)」
・ Waki Imotoほか「A cross-sectional, multicenter survey of the prevalence and risk factors for Long COVID」(『Scientific Reports』2022年12月)
・ S. Moriokaほか「Epidemiology of post-COVID conditions beyond 1 year: a cross-sectional study」(『Public Health』2023年3月)
・ Jessica L Harding「ndividuals with Diabetes are Up to Four Times More Likely to Develop Long COVID-19」
・ Jon Kleinほか「Distinguishing features of long COVID identified through immune profiling」(『nature』2023年10月)
・ Benjamin Aほか「Spontaneous, persistent, T cell–dependent IFN-γ release in patients who progress to Long Covid」(『Science Advance』2024年2月)
・ Harvard T.H. Chan School of Public Health「Following healthy lifestyle may reduce risk of long COVID」

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保健師 大島かよ

投稿者プロフィール

病棟・クリニックでの患者さんとの関わりの中で、「もっと早く治療開始できていれば」、「病気になる前に何かできないか?」と考えるように。その思いから次第に予防に興味を持ち、「働く世代」に対するアプローチがしたい!と、産業保健の世界へ飛び込みました。
現在産業保健師として数社訪問、健保で特定保健指導を担うフリーランスの保健師です。
自分の経験なども盛り込みながら、産業保健に関連する情報を発信していきます。
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