今年も健康診断が始まり、すでに受診を終えた方もいるかと思います。みなさんはどの数値が気になりますか?また、どの数値が基準値から外れているのかを認識しているでしょうか?
人それぞれ気になる数値は違いますが、今回は脂質(主にコレステロール)に焦点をあててお話しします。
欧米化した食事やファストフードなどにより、血圧や血糖、脂質などに悪影響を及ぼしているといわれています。乱れた食生活をしてしまっている方は「あぶら」をとる機会が多いですが、「あぶら」には良いあぶらと、悪い(摂取を控えたほうがいい)あぶらがあることを知っているでしょうか。
今回は、脂質について、また良いあぶら、悪いあぶらについて詳しく解説していきます。
脂質とは?
脂質とは炭水化物やタンパク質とならんで私たちの身体に欠かすことのできない三大栄養素の一つであり、中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロールなどの総称です。脂質が不足すると、体温を保ったり活動する力が弱まったりするため、体力の消耗が激しくなります。
また、細胞膜や血管が弱くなる、免疫力が低下するなどが起きますが、現代の食生活では極端に脂質を避けない限り欠乏することはありません。
■中性脂肪
エネルギー源として内臓や皮下に蓄えられる。クッションや断熱材の役割を果たす。
■コレステロール
全身の細胞膜やステロイドホルモン(男性ホルモンや女性ホルモン、副腎皮質ホルモンなど)、胆汁酸(脂質の消化や吸収を助ける物質)などの材料となる。コレステロールは水に溶けないため、血液中を流れるときはタンパク質と結合したリポタンパク質の状態で存在。そのリポたんぱく質が結合したコレステロールをLDLコレステロール、HDLコレステロールと呼ぶ。
・LDLコレステロール:コレステロールを全身へ運ぶ役割をもつ。
・HDLコレステロール:体内に増えすぎたコレステロールを回収し、血管壁に溜まったコレステロールを取り除いて肝臓へ戻す働きをもつ。
脂質異常が続くとどうなる?
脂質の数値が基準値より高く(HDLコレステロールは低く)なると脂質異常症と診断されます。基準値を超えるとすぐに治療ということはほぼありませんが、放置しておくと動脈硬化が進みます。さらに進行すると、突然死に繋がる病気の発症のリスクが高まります。基準値から大幅に外れた数値の場合は、薬物治療が開始となることが多いです。
また、下記の数値を超えている場合は、生活習慣改善が必要です。
脂質異常症診断基準(空腹時採血)
- 中性脂肪:150mg/dl以上
- LDLコレステロール:140㎎/dl以上
- HDLコレステロール:40㎎/dl未満
脂質が高くなる原因
・糖質や脂質を過剰摂取する:体内のコレステロールの70~80%は、糖質や脂質などを材料にして合成されるため、糖質や脂質の多い食生活は脂質の上昇につながる
・肥満:肝臓やお腹周りに蓄積された中性脂肪が多いとLDLコレステロールを合成する働きが促進される
・閉経後の女性:女性ホルモンはコレステロールを原料にしているが、閉経後、女性ホルモンがつくられなくなるため、LDLコレステロールが血液中に余って数値が上昇する
・体質、遺伝
・飽和脂肪酸のとりすぎ
・トランス脂肪酸の摂取
・喫煙 など
動脈硬化が引き起こす疾患
・脳梗塞
・心筋梗塞
・大動脈瘤
・大動脈解離 など
今日からできる!食生活改善
あぶらにはさまざまな種類があり、とることで良い効果を享受できるものと控えたほうが良いものがあります。脂質の数値を改善するためには下記3つがポイントになるので、ぜひ今日から脂質改善に取り組みましょう。
食物繊維をとる
食物繊維は消化酵素で分解されないため、小腸で消化されずそのまま大腸に到達する成分です。便秘や腸内環境の改善、血糖上昇を緩やかにします。さらに、コレステロールを吸着して体外に排出する効果ももっているので、野菜や海藻、キノコ類は積極的にとりましょう。
野菜は1日350g必要といわれています。目安は生野菜なら両手で3杯分、ゆで野菜なら片手で3杯分です。スープやみそ汁に野菜を入れると食べやすくしっかり量もとることができておすすめです。また、コレステロールを下げるのに特に効果が高いのは水溶性食物繊維です。
・水溶性食物繊維が豊富な食品
昆布、ワカメ、里芋、ゴボウ、ニンジン、オクラ、大葉、オーツ麦、柑橘系など
飽和脂肪酸を減らし、不飽和脂肪酸を増やす
飽和脂肪酸は、熱に強く常温で固まりやすい性質をもつあぶらのことです。肉類の脂身や鶏肉の皮、ラード、バター、生クリームなどがあげられます。身体に必要な栄養素で、エネルギーの生成や脳出血の予防などの効果もありますが、とりすぎると脂質の上昇につながります。
不飽和脂肪酸は、常温では液体のあぶらでLDLコレステロールを下げる効果があるといわれています。不飽和脂肪酸の中でもオメガ3(EPA・DPAなど)とオメガ9(オレイン酸)が摂取したいあぶらになります。
オメガ3は魚に多く含まれています。週2回以上魚を食べると心臓病の発症を減少できるといわれているので、肉類の摂取が多い方はマグロやサバ、イワシ、サンマ、ブリなどの青魚を食べる機会を増やしましょう。
また、エゴマ油やアマニ油といわれるあぶらもオメガ3が豊富です。これらのあぶらは加熱に弱いため、炒め物などには不適ですが、スプーンで味噌汁やサラダ、ヨーグルトにかけると上手に摂取することができます。製品にもよりますが、1日小さじ1杯程度で十分なので、おすすめです。
オメガ9はオリーブオイルやアボカド、アーモンド、カシューナッツ、青魚にも含まれているので、上手にとり入れましょう。
トランス脂肪酸の摂取を極力減らす
トランス脂肪酸とは、植物油に水素を添加した人工的なあぶらのことです。食品表示には下記のような言葉でお菓子や加工食品など幅広く使用されています。
・マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、植物油脂、加工油脂
トランス脂肪酸はとりすぎると、LDLコレステロールが上昇するだけでなく、アレルギー性の喘息や鼻炎、アトピー皮膚炎の増悪、不妊や流産、認知症を助長するといわれています。
日本人は日本食を食べることが多いので、トランス脂肪酸摂取量は少ないといわれていますが、コンビニ弁当やファストフード、お菓子などを摂取する機会が多い方は、摂取する機会が多くなっている可能性があります。トランス脂肪酸はLDLコレステロールを上昇させる大きな原因です。
食品表示を見ると思ったよりも多くの食品に使われているのだと驚かれると思います。トランス脂肪酸完全に避けることは難しいので、下記の食品を摂取する機会が多い方は減らすようにしましょう。これらはトランス脂肪酸だけでなく、糖質も高いため肥満や糖尿病などの原因にもなります。
・総菜パン、菓子パン、ドーナツ、(スーパーやコンビニ、外食の)揚げ物、カップ麺、お菓子全般など