「パンケーキ症候群」という病態をご存じでしょうか?
なんだかかわいらしい名前で、「パンケーキをとにかく食べたくなること?」と考えてしまいそうになりますが、別名を「経口ダニアナフィラキシー」ともいい、アレルギーの一種です。
「パンケーキなんてめったに食べないし、関係ないや」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、この疾患名は、欧米でパンケーキを食べたときに発症した人が多かったことに由来しています。
日本では粉もの(お好み焼きやたこ焼き)を食べた際に多く報告されているようです。
小麦粉アレルギーとはまったく異なるもので、これまで食物アレルギーがなかった人でも発症する可能性があります。
この記事では、夏に注意すべきパンケーキ症候群こと、経口ダニアナフィラキシーについて解説します。
パンケーキ症候群(経口ダニアナフィラキシー)とは
アナフィラキシー症候群とは、全身に起こるアレルギー症状のことを指します。
このうち、経口ダニアナフィラキシーとは、読んで字のごとく、口からダニを摂取することで、アレルギー症状が出ることです。
パンケーキ(ホットケーキ)ミックスやお好み焼き粉、たこ焼き粉、チヂミ粉など、小麦粉に調味料が混ざった粉類を開封済みの状態で常温放置すると、ダニが侵入することがあります。
ダニが繁殖したミックス粉を使用した食べものを口にすると、30分ほどでアレルギーの症状が出る、というものです。
湿疹や腹痛、下痢や嘔吐、息苦しさが主な症状ですが、重篤な場合は命にかかわることもあります。
アトピー性皮膚炎や、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、ハウスダストアレルギーの既往歴がある人は、特に発症しやすいとされています。
夏の時期は特に注意が必要
一般的には、少量のダニが混入した食べ物を口にしても、発症することはないとされています。(もちろん、心理的には量に関係なくきついものがあります)
しかし、日本の夏の高温多湿の環境は、ダニが増殖しやすい環境です。
大量のダニを口にしてしまうことで発症するため、特に夏場は注意が必要となります。
ただし、温度・湿度が高くなりやすいキッチンは、夏でなくともダニが増殖しやすい環境になっている可能性はあるため、通年で対策を取ったほうが安心です。
対策は?
ダニは非常に小さく(0.5ミリ程度)、また白っぽい色をしているため、粉の中に混入・増殖していても気付くことは難しく、チャック付きの袋に入れたり、クリップ・輪ゴムなどで止めていても、小さな隙間から入り込むことがあります。
そのため、しっかり封をするだけでは、完全に防止することはできません。
賞味期限は、あくまで未開封の状態での期限ですので、開封したものはその日に使い切ることが理想です。
難しい場合は可能な限り密閉し、冷蔵庫で保管すると、混入・増殖を防ぎやすくなります。
ダニは短期間で急激に増殖することは少ないため、開封したものは1ヵ月以内に使い切ることが望ましいとされています。(使用サイクルが短い飲食店では、家庭とくらべパンケーキ症候群は起こりにくいとされています)
なお、調理過程で加熱すればダニは死滅しますが、死骸にアレルギーの原因物質が残るため、加熱は有効な対処法ではありません。
「開封したものはなるべく使い切る」「使い切れなかった場合は、密閉して冷蔵保存し、早めに使う」ということが、有効な対策となります。
万が一、パンケーキ症候群が疑われる症状が出た場合に、息苦しさや激しい腹痛・嘔吐などを感じた場合は、早急に病院を受診したり、重篤な場合は救急車を呼ぶようにしましょう。