デスクワークで冷房のあるオフィス内にいると、代謝が下がってしまうことがあり、排便トラブルを起こす原因にもなります。私もその1人です。
排便は健康のバロメーターと言われています。
便秘や下痢などの排便トラブルがない、理想的な排便とはどんなものなのでしょうか。
排便のメカニズム
食べ物は、胃・十二指腸で分解されて、小腸へ流れます。
必要な栄養素の大部分が小腸で吸収され、その残りの液体は大腸へ入り、上行結腸(右半結腸)で水分が吸収され、下行結腸(左半結腸)で、徐々に固形化されます。
食べ物が胃に入ると、大腸へ指令が出て、腸のぜん動運動が活発になります。
そして、食べ物が直腸へ移動すると、便意を催し、排便につながる仕組みです。
理想の排便とは
いわゆる「快便」とは、たとえ毎日排便がなくても、自然とすっきり、ツルンと排便することです。
基本的には排便の回数や排便量と快便に深い関係はなく、お腹の張りや痛み、残便感などがなくて排便に対する悩みがない状態を快便だと言えます。
しかし、便のコンディションは、心身の健康を表しており、自身の健康管理のために、排便の状態を知ることは必要です。
便の硬さについて
便の硬さを知る指標として、便の形状と硬さを7段階に分類したブリストルスケールが国際的に使用されています。
出所:看護roo!
排便の量は水分によって変化しますが、理想的な便は、ブリストルスケール3~5となります。
水分量が6割以下だと、排便時に力んで肛門痛や痔を発症する可能性があるため便秘と判断され、水分量が9割以上だと下痢と判断出来ます。
便の色について
理想の便の色は黄土色から茶色で、この場合は善玉菌が活発だと言えます。
善玉菌が多いと、大腸内は弱酸性となり、その結果、胆汁の分泌が抑制され、便は黄色っぽくなります。
逆に、悪玉菌が活発になると、大腸内は弱アルカリ性となり、色が黒ずんでしまいます。
腸内環境を整えることが大切ですね。
【排便時の色調の異常】
・白色…胆汁の分泌が少ないため、脂肪のとりすぎによる消化不良の可能性があります。
・黒色…胃腸から出血している場合がありますので、早期に受診してください。(鉄剤の内服などによるものは問題ありません)
・赤色…肛門に近い部位で出血している可能性があります。
痔もしくは腸の疾患が隠れている場合があります。受診をお勧めします。
量のチェック
食事の内容にもよりますが、1回あたりの理想的な排便量は100~200gといわれており、長さは10cm以上で「すっきりした」と感じればOKです。
1回あたりの排便で、およそ排便量がバナナ1本分か、それ以上であれば、理想的な量と言えるでしょう。
においのチェック
便のにおいは、腸内細菌のバランスによって変化します。
「便臭はあるが、きつい悪臭ではないにおい」が理想的と言われています。
便秘とは?
便秘とは、「1日1回便が出ない=便秘である」と思われがちですが、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では、以下のように定義しています。
本ガイドラインでは,便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出されない状態」と定義している
出所:慢性便秘症診療ガイドライン2017
数日に1回の排便であっても、量が少なかったり、苦痛を伴ったりせずに、スムーズに便が出るのであれば、便秘ではないと言われています。
「排便の十分な量」とは、上述のとおり、食事内容によって変化はしますが100~200g/回が目安です。
また、「苦痛を伴う」については、排便時に硬便による肛門痛や痔による痛みを指します。
理想的な排便に近づけるためには
理想的な排便を行うには、生活習慣の改善が基本となります。
規則正しい生活を心がけることが大切です。
規則正しい生活を送ると、自律神経も整うため、理想的なタイミングでの排便にもつながるとされています。
規則正しい生活については、以下の2点を気をつけるようにしましょう。
・1日3食、朝食を欠食せずきちんと摂取する
・水分をしっかり取る(1日1.5Lを目安に)
※水分管理が必要な方は、医師の指示に従ってください。
食物繊維を含む食品の摂取
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で設定されている、食物繊維の摂取目標は以下のとおりです。
18~64歳男性…21g/日以上
18~64歳女性…18g/日以上
また、食物繊維は水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の2種類あります。
水溶性食物繊維は腸内の善玉菌を増やして、便を柔らかくする作用があり、にんじんやキャベツ、果物、海藻に含まれています。
便の量を増やして腸管を刺激し、腸の運動を活発化させ、便通を整える働きをしてくれるのが不溶性食物繊維です。
根菜類やきのこ、繊維の硬いたけのこ、豆類に多く含まれています。
便の状態は健康のバロメーターとされています!
まずは、自分の排便の状態を知ることから始め、理想的な便の排出ができるように、生活習慣を整えていきましょう。
<参考>
・日本内科学会雑誌「慢性便秘症診療ガイドライン2017」
・独立行政法人地域医療機能推進機構四日市羽津医療センター「健康は快便から!梅枝博士のうんち講座」
・厚生労働省e-ヘルスネット「便秘と食習慣」