2020年も実施「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」

2020年も実施「STOP!熱中症クールワークキャンペーン」

少しずつ暑くなり始めるこれからの季節、心配なのが熱中症ですね。
対策に取り組む企業も増えてきたと思いますが、職場での熱中症で亡くなる人は少なくありません。
特に、記録的な猛暑となった2018年は、熱中症による死者数が28人、4日以上仕事を休んだ人が1,178人と、過去10年間で最も多くなりました。
この深刻な現状をふまえて、厚生労働省では労働災害防止団体や関係省庁などと連携し、2020年も5月1日から「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します。
本日はキャンペーンの具体的な内容、皆さんに取り組んでいただきたいことをご紹介します。

そもそも熱中症とは

熱中症とは、高温多湿な環境下で体内の水分と塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破たんしたりしてしまうことで発症する障害のことを指します。
症状は重症度によって異なります。

重症度症状
Ⅰ度
めまい・失神(立ちくらみ)
筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)
大量の発汗
Ⅱ度
頭痛・気分の不快
吐き気・嘔吐
倦怠感・虚脱感(ぐったりする)
Ⅲ度
意識障害・痙攣・手足の運動障害(呼びかけへの反応がおかしい、まっすぐ歩けない、引きつけなど)
高体温(体に触れると熱い)

熱中症予防のための指標のひとつに、暑さ指数(WBGT値)というものがあります。
単位は「℃」ですが、単なる気温とは異なり、人体と外気との熱のやり取りに特に影響の大きい下記の3つの要素を取り入れた指標になります。

① 湿度
② 日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境
③ 気温

この暑さ指数には、作業の強度によって基準値があります。
皆さんの業務がどの程度の作業強度かを確認し、その強度での基準値を上回った場合には、作業をストップさせる、強度の低い作業に変えるなど、基準値に合わせた対応が必要になります。

参考:厚生労働省「熱中症を防ごう!(PDF)」

2020年の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」

2020年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」では、事業場における暑さ指数を把握してそれに応じた適切な対策をとること、緊急時の対応体制の整備をすることを重点的に実施することになりました。
これは2019年までの厚生労働省の調査で、熱中症の死亡事例の中に、暑さ指数を実測せずに適切な対策をおこなっていなかった事例や、救急搬送が遅れた事例が含まれていたからです。
期間は2020年5月1日~9月30日までで、4月は準備期間、7月は重点取組期間です。
厚生労働省や労働災害防止協会では、熱中症予防にかかわる周知・啓発資料の作成や特設サイトの開設、事業場への指導、教育を行うことを予定しています。
より多くの情報を得られることが期待できますね。

熱中症対策として取り組むべきこと

では皆さまは具体的にどのようなことに取り組めばよいのか、重点的に実施していただきたい主なポイントは5つです。

① 暑さ指数の測定と測定値に応じた対応

熱中症のリスクを知るために重要となるのが暑さ指数です。
JIS規格に適合した暑さ指数計で測定し、担当者を決めて定期的に確認しましょう。
基準値を上回った場合の対応(作業の中止・作業内容を強度の低いものへ変更・休憩時間を増やす・万が一に備えて単独作業を控えるなど)をキャンペーン準備期間である4月のうちに取り決めておきます。
また暑さ対策による作業の遅れを見越して、普段以上に作業工程に余裕を持たせることも大切です。

② 暑さをやわらげる(暑さ指数を下げる)環境づくり

高温多湿、また直射日光や輻射熱が当たることを避けるための環境整備をおこない、暑さ指数を下げましょう。
作業場に簡易的な屋根、扇風機や冷房設備、ミストシャワーなどを事前に設置することや、冷たい水や経口補水液、氷、冷たいおしぼり、塩飴などの物品をすぐそばに備えること、作業場の近くに冷房や日陰のある涼しい休憩場所を確保することが必要です。
また作業時の服装によっては、算出された暑さ指数に補正値を加える必要があり、たとえば二層になっている布製服は+3℃、蒸気不浸透性のつなぎ服は+11℃とみなします。
それだけ作業者への負担が大きいということになりますので、作業服も通気性の良いものや、冷却機能付きのものを準備しましょう。
スーツに関しても環境省が推進している「クールビズ」を会社としてみとめることが大切です。

③ 労働者の健康管理

熱中症は早期に発見し、休憩や治療をおこなうことが大切です。
熱中症の症状がある場合は早めに申し出て、涼しい場所で休憩をとるように、労働者全員に周知しておきましょう。
また労働者の睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取や風邪、下痢などの体調不良によっても熱中症のリスクは高まりますので、日常の健康管理にも注意を呼びかけるほか、作業前や作業中の体調確認をおこなう必要があります。
そのほか、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患なども熱中症の発症リスクを上げるおそれがあるため、治療中の方、また健康診断で疾患の疑いのあった方は、主治医や産業医と相談のうえで業務に従事すると安心です。
疾患のない元気な方でも、暑さに慣れていない状態だと熱中症のリスクは高くなります。
最初から1日中暑い中での作業をするのではなく、1週間以上かけて、暑さに曝される時間を少しずつ長くしていくことで、計画的に「暑熱順化」をおこないましょう。

④ 緊急時の体制づくり

熱中症による死亡事故をなくすため、万が一に備えた体制づくりも重要です。
まずは「気が付いたらひとりで倒れていて手遅れだった」ということがないように、担当者を決めて巡回することや、単独での作業を避けることが大切です。
次にあらかじめ近くの病院の所在地や連絡先を把握し、関係者に周知しておきましょう。
熱中症発生時に救急車を呼ぶのか、自分たちで病院へ搬送するのか、休憩させて回復を待つのかは状態によって異なります。
緊急時のフローを決めておき、作業場や休憩場所に掲示しておく必要もあるでしょう。
そして、こうした体制づくりに欠かせないのが衛生委員会です。
衛生管理者、産業医、現場の声を取り入れて、熱中症を防ぐための体制を作りましょう。
50名未満の事業場では、産業医の選任義務はありませんが、体制づくりのために保健師など医療の専門家の意見を取り入れることがおすすめです。

⑤ 労働者への教育

熱中症対策にどんなに会社が取り組んでいたとしても、労働者に知識や理解が不足しており、自分自身で対策に取り組んでもらえなければ不充分です。
自分の体調は自分にしかわかりませんし、現場で対策に取り組むのは労働者自身です。
また早期発見と適切な処置をおこなうためには、そばにいる労働者同士の協力が欠かせません。
「一度教育したから大丈夫」ではありません。
一年経つと、危機意識や正しい知識を忘れてしまう人もいますし、労働者の入れ替わりもあるものです。
確実に対策に取り組んでもらうためにも、本格的に暑くなる前に、毎年欠かさず教育をおこないましょう。

「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」に参加し、熱中症対策に取り組むことで、死傷者0人を目指してみませんか。

参照:厚生労働省「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)」

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北原梨英株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

大学を卒業後、保健師として活動するほか、健康経営エキスパートアドバイザーとしてさまざまな企業様の健康経営を支援してきました。現在はセミナーのご依頼が最も多く、得意とする女性の健康増進と活躍推進をはじめ、多くのテーマでお話をしております。「従業員に長く健康に働き続けてほしい」「健康経営に取り組みたい」「健康経営優良法人の認定を目指したい」などお悩みがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。どのようなご状況の企業様にも親身に寄り添って、今すぐできることからご提案し、一緒に取り組んでいくことをお約束いたします。
【保有資格】保健師、健康経営エキスパートアドバイザー、看護師、第一種衛生管理者、人間ドック健診情報管理指導士
【ドクタートラストの保健師サービスへのお問い合わせはこちら】
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