攻めのメンタルヘルス対策~ワーク・エンゲイジメントという考え方~

「ワーク・エンゲイジメント」という考え方をご存知でしょうか?
日本国内では、島津明人教授(北里大学 一般教育部人間科学教育センター)を中心に研究され、一般向けに書籍も出されています。
今現在の日本のメンタルヘルス対策は「メンタル不調者を出さない」「メンタル不調者を悪化させない」ことが主軸に置かれています。
しかし、実際のところ、産業保健スタッフや人事担当者はメンタル不調に陥っている社員の対応に追われがちで、大多数の「今は元気に働いている」層へのケアに対しては、手薄になりがちなのが現状です。
健康投資という概念が広まりつつある今、ただメンタル不調を防ぐだけでなく、社員全員がより「自律的・意欲的」に働けるようなしくみづくりが注目を浴び始めています。

ワーク・エンゲイジメントとは

ワーク・エンゲイジメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態 を指します。
活力、熱意、没頭という特徴があり、 特定の対象・出来事・個人・行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向 けられた持続的かつ全般的な感情と認知であると定義されています。
つまり、仕事が好きで楽しいと感じ、「夢中で」仕事に取り組んでいる社員ということになります。
上記の項目を見るだけでも、「こういう社員が欲しい」という企業経営者の方のお声が聞こえてきそうです。

ワーカーホリックとの違い

1つ注意が必要なのは、いわゆる「ワーカーホリック(仕事中毒)」とはまったく質が異なるということです。
ワーカーホリックの人が仕事に励む原因にあるのは、解雇や金銭面、評価などに対する「不安」です。
そのため、仕事が増え、労働時間が増すと、うつ病をはじめとする精神疾患を発症するリスクも高まります。
しかし、ワーク・エンゲイジメントの背景にあるのは、仕事に対する「情熱」です。

メンタル対策の一歩先

すでにメンタル不調を抱えている社員や、その一歩手前の社員に対するサポートは、もちろん非常に重要です。
しかし、企業として理想的な状態というのは、社員が本来持っている能力を「自分から」発揮し、成果を上げている状態ではないでしょうか。

メンタル対策=やらなければいけないもの・利益には直結しないもの・精神疾患による自殺など最悪の事態を防ぐもの

こういった観念を持っているうちは、経営層も含めて、メンタルヘルスケアに本腰を入れて取り組むことは難しいと思います。
ワークエンゲージメントは、従来の守りのメンタルヘルスに対して、攻めのメンタルヘルスと言われています。
それは、単にメンタル不調を防ぐだけでなく、社員の能力を最大限に発揮し、最終的には企業の利益にも繋がる経営資源だからです。

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中村 眞弓株式会社ドクタートラスト 保健師

投稿者プロフィール

企業での健康相談や産業保健の経験を生かし、「じっくり聴く・しっかり考える」保健師を目指しています。社員の皆様・人事の皆様と一緒になって企業の健康を支えていけるよう頑張ります。
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