座位時間と健康リスク
座位の運動強度は、寝転んでいる状態とほとんど変わらない…ということを皆さんはご存知ですか?
2011年のシドニー大学van der Ploegが、日本は世界20か国の中で座位時間が一番長いという研究結果を公表しました。
世界でもトップクラスの座位時間を誇る日本人ですが、1日の座位時間が長いほど死亡率、肥満、メタボリックシンドローム、心血管疾患、がんなどを高めるとされています。
また、メンタルヘルスやワーク・エンゲイジメントに影響するという報告もあり、長時間の座位は日本の産業保健分野では、多くの健康課題に関連していることがわかります。
座位時間を中断しても効果はあるのか
米国の45歳以上の男女を約4年間追跡した調査研究によると、1日の総座位時間が長くても、座位の継続時間が10分以上と10分未満では、死亡率が約3分の2に低下すると報告されています。
座位の時間が長くても、途中で席を立ち、動くことで死亡率の低下に効果があるということが言えます。
(引用:Daiz,KM et al,Ann Intern Med 2017)
ちょっとしたことで効果あり!活動量をあげるコツ
忙しくて運動する時間が…という方も多いでしょう。
まずは「座位行動」を減らす意識をしていきましょう!
<仕事中>
・ コピーを自ら取りに行く
・ 使用するトイレまで遠回り
・ 遠い自動販売機まで行き、飲み物を購入
・ 移動時は、階段を使用する
(1~2階は階段利用し、途中からエレベーターなど無理のない範囲内で)
<休憩時間>
・ 食事に出かける
・ 会社近くを散歩
・ ストレッチの実施
<作業環境を変える>
・ スタンディングデスクや昇降式デスクの活用で、立って作業をする
(自ずとと一歩が踏みだせるため、エネルギー消費量は大きいです)
・ 立ち会議の実践
・ 社内の取り組みとして、決まった時間に座位時間が中断できるようイベントを企画
(例:3分間立ち上がり自由に活動する、ラジオ体操の実施など)
上記の情報を得た医療職として…
保健師として運動を行うことを促していましたが、「活動レベルで職場に取り入れる」「小さなことから取り組むことが必要」と気づき、専門職としてはすぐに取り組まないと!と思いました。
産業保健師として、働く方々の健康を促すためには、作業管理は産業保健分野の大切な業務です。
このようなデータ・情報を積極的に収集し、知見を広げ、社員へ情報を発信し、社員が健康に働ける職場環境をつくる必要があると改めて感じました。
<参考>
・ 国立研究開発法人 国立がん研究センター「職業性座位時間と死亡との関係」
・ 本田貴紀 「座位行動が肥満および党・脂質代謝指標に与える影響に関するコホートと研究」
・ 石井香織「座位行動と生産性・ワークエンゲイジメント」